Gypsy Sport AW17:ランウェイでデモ行進

これまでもパン・ジェンダーを体現してきたGypsy Sportのショー。今季は、バケツ・ドラムの音が響くなか、テントが並ぶランウェイを政治活動家たちが闊歩するという内容だった。Gypsy Sportファミリーに混じり、女性や移民の権利のために声を上げてきたプロテスターたちの姿があった。

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15 February 2017, 2:41pm

来場客がそれぞれの席につき、照明が暗転すると、Gypsy Sportのデザイナー、リオ・ウリベ(Rio Uribe)がマイクを手に取り、今シーズンのコレクション制作の経緯を語り出した。一年前、ウリベはBALENCIAGAのインターンとしてパリで働き、通勤で難民キャンプの傍を通り過ぎる日々を送っていた。パリでの滞在期間が終わりに近づいていたある夜、フランス全土で30余年にわたり開催されているストリート・ミュージック・フェスティバルのフェット・ドゥ・ラ・ミュージック(Fete de la Musique:音楽の祭日)が開催され、ウリベはこれに感銘を受けた。

「ストリートに暮らしている人たちがドラムを叩き、音楽を奏でていた。それは、ただ上手に演奏できる人たちを讃えるなどというものではなく、それ以上の、なにか祝福のようなものだと感じたんだ」

ウリベは、その後間もなくして、ウォール街と戦争ビジネスをテーマにした服を作るというアイデアを胸にアメリカに帰国した。しかし、ニューヨークに暮らす中で、ウォール街と戦争ビジネスそのものをテーマとするアイデアは捨て、それらに反対して戦うキッズに焦点を当てることにした。そして、大統領選後のアメリカに噴出したデモ行進やプロテストに参加した人々を、Gypsy Sportファミリーへと引き入れた。

「反トランプの集会に行ったんだ。僕のチームは全員が参加した」とショーの後にウリベは語った。「ニューヨークの行進にも参加したし、トランプの入国禁止令に反対するプロテストに参加するため、空港にも駆けつけた。ウィメンズ・マーチも、大規模なものから町レベルでの比較的小規模なものまで、たくさん参加した。今、世の中には、この世界が狂っていて、そこに変化を生まなければならないと強く信じて活動するキッズがたくさんいる。彼らの存在を世界に示したいし、彼らを代表する存在に僕たちはなりたいんだ」

バケツ・ドラム奏者もショーに起用され、ジェンダーレスを体現するGypsy Sportモデルたちが歩くランウェイに、精神浄化的効果のあるサウンドを添えていた。脱構築のピンストライプ・ジャケットを除き、今シーズンのGypsy Sportは迷彩柄の多用やサイケデリックな絞り染Tシャツ、ゆったりとしたベルベット使い、そして安全ピンのみを使って作られたDIYベストなど、パンクとヒッピーのモチーフをふんだんに盛り込み、それらをレイヤードで見せていた。大統領選前にウリベが想定していたウォール街のテーマ要素は、前述の脱構築ピンストライプ・ジャケットと、片脚に迷彩柄を大胆にあしらったピンストライプのクロップド・パンツにのみ見られた。モデルたちの口にはベリー色のリップがだらしなく塗られ、ヘアスタイルは膝まで伸びたブレイドから、とてつもなく高く盛られた夜会巻きまで、様々だった。

なかでも最もストリート暮らしに実用的と思われるアイテムは、メタリックのヒート・ブランケットや、ランウェイ傍のテントと同素材のナイロン・フライシートを用いて作られた服だろう。しかし、ここまであからさまにストリート暮らしをする人々が表現されると、落ち着かない気持ちになる者、中には不快に思う者も現れるリスクが伴う。だからこそ、ウリベはショーの前にマイクを取り、メッセージを会場に説明したのだ。そのメッセージは、慈悲の心を持つことの重要性を切実に訴えていた。「誰かがチャンスを与えたがらないからという理由だけで、ゲイやイスラム教徒、障がい者、精神のバランスを崩している人、薬物中毒者、逃亡者といった人々がストリート暮らしを強いられてしまう——そんな世界にはなってほしくない」とウリベは言っていた。「これからランウェイに登場するルック——テントの形や、他にも僕たちが作り出したすべてのスタイルを見て、みなさんには改めて、ストリート暮らしを余儀なくされている人たちについて考えていただきたいのです。彼らにお金をあげろとは言いません。しかし、微笑みを向けるだけで、それが彼らを救う手立てのひとつになるんだということを、どうか忘れないでほしいのです」

Credits


Text Hannah Ongley
Photography Serichai Traipoom
Translation Shinsuke Kuriyama at WORDSBERG Inc.