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主張:Matty Bovan、Molly Goddard、Simone Rocha、Versus Versace、Gareth Pugh、そしてHapern

Michael HalpernやMatty Bovanがコレクションを通して主張を大きく打ち出し、快活なユースの息吹がロンドンに蘇った。

by Anders Christian Madsen
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24 February 2017, 6:40am

Matty Bovan fall/winter 17

「今も昔も、ロンドンのデザイナーたちは商業性を差し置いてでも、メッセージを、さらには主張を表現する作品を作り出してきた。主張がロンドンのデザイナーたちにとって問題となったことはない」——そう考えたいのはやまやまだが、そうとも言い切れないのが近年のロンドン・ファッション界だった。ロンドン・ファッションウィークにも不可避な進化が余儀なくされ、デザイナーたちは大人の視点へと移行して、出資者を得て——とキャリア存続のために必要なステップを踏んでいたら、ロンドン・ファッション界はすっかり骨を抜かれてしまったのだ。イースト・ロンドンにクラブ・キッドのシーンが戻ってきた2006年から約10年後となる2015年、今日を代表するデザイナーたちがセントラル・セント・マーチンズから卒業し、ロンドンという街に再び芽吹いたファッションが何を意味しているかを私たちに思い起こさせてくれた。「10年くらい経って振り返ったら、今起こっていることをもっと理解できるのかもしれない。真っ只中にいる今は、何が起こっているのか僕にもわからない」とマティ・ボヴァン(Matty Bovan)は、Fashion Eastのクロージングを飾った彼の2017年秋冬コレクションのショー後に語ってくれた。「幸いなことに、僕の友達は誰もが皆、素晴らしいものを作り出している。それが嬉しい」 マティが友人としてここで指している一人がチャールズ・ジェフリー(Charles Jeffrey)だ。Fashion Eastのメンズウェア用プラットフォームMANでスター的存在となっているチャールズには、ジョーン・コリンズ(Joan Collins)が喜びそうなフルフェイスのメイクアップへの愛や、ジョン・ガリアーノ、ジャン=ポール・ゴルチエ、ヴィヴィアン・ウエストウッドなど80年代90年代ファッションの偉大なるエキシビショニストたちへの憧れを隠さないあり方など、マティとの共通点が多くある。マティとチャールズというロンドン・ファッション界の新たな王子様ふたりは、それら偉大なるデザイナーたちの感覚的刺激に満ちたデザインを現代ファッション・ファンたちの眼前に蘇らせ、約10年のサイクルでまるで衛星のようにロンドンへと巡ってくるクリエイティブ・エネルギーを再生してみせている。

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Matty Bovan autumn/winter 17

「『エイリアン(Alien)』や『ブレード・ランナー(Blade Runner)』を観ていたら、劇中に登場する悪役というのは企業や会社なんだと気付いたんだ。ヘビーで大げさな名前がつけられていてね」と、レフ板と"Bovan Corporation"というロゴが付けられた大きなイエローのパフォーマンス・ジャケットを着たボヴァンはショーのバックステージで語った。このグラフィックは、民族的で手織り感のある原点的な素材感で「トライバル・フューチャリズム」の世界観が溢れた今季コレクション全体に見られた。「大量生産のシャイニーな生地を古い素材と組み合わせるというのが楽しかった。邪悪な企業の影をそこに浮き上がらせることができたから」と彼は、彼が意図せずとも打ち出してしまった新たな反体制の姿勢を振り返って言った。「僕は政治的なデザイナーじゃないけれど、でも今世界で起こっていることに影響を受けざるを得ないわけでね。すべてがハードで暗くて、すべてが急速に変化していく世の中では、誰も影響を受けずにはいられない。とても怖いことだよ。だから、このコレクションでは、激しく、そして強い女性像を描きたかった。攻撃的になりすぎずにパンチを繰り出せるだけのエネルギーが必要なんだ」とボヴァンは言った。「僕がイメージしていたのは、ディストピア(暗黒卿)風の中世をSF的に描いた未来だった」 ボヴァンの荒削りなSF感には、エレクトリックな民族性ともいうべきものがあった。悲観と楽観が共存する現代版『アルマゲドン』といったところか。偉大なクリエイティビティはこれまでも常に闇の存在を受け入れてきた。だから、ボヴァンが今回テート・モダンのTurbine Hallで発表した壮観のショーには、精巧なセットが必要だった。ロンドンの新世代デザイナーとして、これは避けて通れない課題なのだ。そして、セットは土曜のロンドン・ファッションウィークで繰り返し見られた要素となった。

Molly Goddard autumn/winter 17

ボヴァンのモデルたちは、張り子の高層ビルが立ち並ぶ世界滅亡の世界に歩いた。一方でMolly Goddardのショーでは、デザイナーのモリー・ゴダードの代名詞ともいえるチュールいっぱいのドレスに身を包んだモデルたちがふたつの大きなテーブルを囲み、ガーリーさを極めた世界観に存在していた。セットは、「老いも若きも家族が集まって晩餐を」というモリーのアイデアをベースにして作られた。「歳を重ねるごとに変化する洋服の着方について考えていたんです」とモリーは言った。これは、ティーンから、隠居生活に入った高齢者までをモデルに起用していたSimone Rochaにも通ずる世界観だった。「あらゆるタイプの女性に向けた服というがいねんをを反映したショーを作りたかった。私のアイデンティティはその概念をベースとして成り立っている。それを感じ取ってもらえたら嬉しい」とSimone Rochaのデザイナー、シモーネ・ロシャはランカスター・ハウスで開催したショーの後、私たちに説明してくれた。彼女のコレクションは、花の刺繍があしらわれて明るく軽い雰囲気の大きな(フェイク)ファー・ストールや、ビクトリア朝風ドレス、そして増え続けるSimone Rochaファンが夢中になりそうなスケール・アップされたシェイプなどに、ある種の古き良き世界のグラマーが表現されていた。シモーネのファッションへのアプローチには主張が感じられ、この主張は現代社会に生きる人々に響くものがある。モリーのそれも同様だ。バレエにインスピレーションを得たという今季コレクションで、モリーはトレードマークともいえるチュチュやチュール・ガウンに新たなプロポーションを生み出した。「大きく、もっと大きくと考えるのが好きなんです」とモリーはバックステージで教えてくれた。「例えば、あのブルーのドレス」と彼女はチュール作品のひとつについて話し始めた。「あれは当初、あの半分ほどのサイズになる予定だったんです。でも生地の幅が通常の1.5メートルではなく3メートルだと気づいて、皆んなは制作過程で失敗を冒してしまうんじゃないかと心配そうでしたが、私は『心配しないで!大きく作ればいいんだから!』と言ったんです。大きければ大きいほど良いんです」 「大きければ大きいほど良い」——これは、土曜にロンドンで開催されたショーに一貫して見られた傾向だった。文字通りにしろ、比喩としてにしろ、だ。

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Simone Rocha autumn/winter 17

ドナテッラ・ヴェルサーチはオリンピアでショーを行なった。オリンピアは、若き日のドリス・ヴァン・ノッテンやアン・ドゥムルメステールら"アントワープの6人"が1987年に初めてコレクションを発表した場所。バスに作品を積んで運河を渡り、設営した特設会場でコレクションを発表した彼らは、そのベルギー前衛ファッションで当時イギリスのバイヤーたちの度肝を抜き、彼らの主張はファッションを永遠に変えた。その激震地となったオリンピアで、女帝ドナテッラは、Versusレーベルの服を着るユースに彼女のスピリットを伝えようと考えた。「ファッションには希望と団結のメッセージを伝えるパワーがある。特に新世代に対して強く訴えかける力がある。Versusは、情熱と楽観、そして平等を激しくも主張することを主義とするレーベル」と、ショーの後にプレスへと送られたメール形式のショーノートでドナテッラは説明していた。ショーはジジ・ハディッドがオープニングを飾り、クロージングはジジの妹ベラ・ハディッドが務めた(この日、ドナテッラはショー後にプレスをバックステージへと招くことはなかった。おそらく、Givenchyを去り、今年3月にVersaceのクリエイティブ・ディレクター就任が噂されているリカルド・ティッシに関する質問を避けたい意図があったのだろう)。Gareth Pughのショーでも、同様に力強い主張が感じられた。10年前、ロンドンに新進気鋭のデザイナーたちが登場し、ファッション界に激震が走った——それは、ロンドンが最後に見たスリリングなファッション・シーンだった。その急先鋒ともいえる存在だったガレス・ピュー(Gareth Pugh)は、今シーズン、自身が愛してやまない40年代テーラリングの世界をオール・ブラックで表現し、ドナテッラ同様に力強い主張を打ち出した。会場には、トランプ支持者たちが「Build that wall.(壁を)」と熱狂的に叫ぶ音源に、マドンナが『Erotica(You Thrill Me)』で「You put me in a trance.(あなたが私をトランス状態に陥らせる)」と歌った声を重ねたサウンドトラックが流れた。マニフェストと呼ぶべきショーノートには、「政治危機の瀬戸際にある世界を描いた」と書いてあった。

Versus Versace autumn/winter 17

Gareth Pugh autumn/winter 17

ニューヨークに生まれ、セントラル・セント・マーチンズに学んで、昨年、ダイビング・ホースの世界に生きる女性たちのコスチュームをベースとして制作した卒業コレクションが絶賛を浴びたマイケル・ハルパーン(Michael Halpern)。今季コレクションで、彼はその独自の世界観と技術に大きな主張を見せていた。単独での発表は初となる今回のショーは、伝説的スタイリストのパティ・ウィルソン(Patti Wilson)、ヘア界の王サム・マクナイト(Sam McKnight)、メイク界のスターであるリンジー・アレキサンダー(Lyndsey Alexander)が脇を固めるなど、デビュー・コレクション発表のデザイナーとしては破格の規模となった。卒業コレクションでは、スパンコールを多用して、Studio 54のディーヴァたちがワイルドな夜を過ごした後の世界を描いたハルパーンだが、今回のコレクションではその世界観をさらに追求した。見事に構築されたビスチェやジャンプスーツ、フレアパンツなどには、クチュールの域に達しているものもあった。そこには、真夜中のダイナーに煌々と灯るけばけばしい明かりや夜明けの静かな街角に差す朝陽に輝く、スパンコールに身を包んだ女性たちの姿があった。マティ・ボヴァンのコレクション同様、ハルパーンの作品は全く新しく、そして爽快だった。そこには、「再生するロンドン・ファッション・シーンで、新進気鋭のデザイナーたちこそがその先頭に立っているのだ」という強い主張が感じられた。J.W. Andersonのショーでは、プライマル・スクリームの「Some Velvet Morning」にケイト・モスの囁きを重ねたサウンドトラックが流された。デザイナーのアンダーソンも10年前のロンドンに現れたデザイナーだ。過渡期であろう今という時代を象徴するかのように、ケイトはこう囁いていた。「Flowers are the things we grow. Secrets are the things we know. Learn from us very much. Look at us but do not touch.(私たちが育てるのは花。私たちは秘密を知っている。私たちから学びなさい。私たちをよく見なさい。でも私たちに触れることは許されない)」と——この日、ケイトの囁きは、一日中私の頭に響き続けた。

Image via Instagram

Credits


Text Anders Christian Madsen
Photography Mitchell Sams
Translation Shinsuke Kuriyama at WORDSBERG Inc.

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