ジャパニーズファッションの未来をつくる7人のショップ店員

原宿のスタイリッシュなショップ店員たちを紹介しつつ、日本独自のスタイルに彼らが及ぼす影響を探る。

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07 September 2016, 9:35am

@naopisgram

多くの社会人にとって、小売業は"憧れの職業リスト"の上位に食い込む職種ではない。消費者と接し、日々試着室で起こる恐怖体験に対処することを社会経験として「必要」と考えはしても、やはりショップ店員は「楽しい」仕事ではなく、あくまでも「耐える」仕事というのが世界的な認識だろう。しかし、そんな認識もここ原宿にはあてはまらない。原宿では、一部のショップ店員たちが実にグラマラスな立場を謳歌しているようだ。私たち(イギリス人)が抱くショップ店員のイメージは「二日酔いの不機嫌そうな表情で出勤してくる」といったものだろう。一方、原宿のショップ店員たちは、最低賃金で働いているにもかかわらず実に幸せそうな表情で洋服をハンガーにかけてまわっている。とても同じ仕事に就いているとは思えない。「ショップスタッフ」と呼ばれる彼らは、ブランドの親善大使であり、ブランドのモデルであり、ブランドを象徴する顔としてコミュニティまで築いている。雇い主であるブランドのためにどんなことでもこなす彼らは、誰もがとにかくよく働く街・東京を象徴する存在だ。日本のヒップスターたちは、モデルやブロガー、DJなどというものだけで名を馳せようなどとは思っていない。日本では、きちんと昼の仕事を持っていてこそヒップスターの称号が得られるのだ。

原宿でショップスタッフとなるのは生半可なことではない。職務履歴書を持ってバスに乗り、働きたいショップへ行けば良いなどという甘い考えでは挑めない仕事なのだ。大きな影響力を持つショップFaline Tokyoのオーナーであるベイビーマリー(Babymary)にとって「ショップスタッフがTシャツのたたみ方を知っているなんて当たり前」のことなのだそうだ。彼女が定める採用の条件を見ると、Faline Tokyoで採用されるのは、オーディション番組『X-Factor』で最終選考に残るほどの難関のように思える。「原宿でショップスタッフになるということは、ショップのスターになるということ」と彼女は言う。「ベストなショップスタッフは、店員というよりアイコン。モデルやDJ、ソーシャルメディアでの影響力を持ってなきゃいけない。だから彼らにはただの店員よりも多くを要求します。ある意味で、魔法が使えないとダメ」 その魔法はさまざまな形で発揮されるが「ユニークなイメージ」が根本になければならない。これこそ、日本屈指のストリートスタイル・メディアFruitsDropTokyoなどをショップスタッフが占拠している所以だ。

ショップスタッフが著名人になるという流れは、今に始まったことではない。東京のデパートにルーツを持ち、90年代には原宿でストリートスタイルブームを作り出したのも、ショップスタッフだった。当時は「カリスマ店員」と呼ばれたトレンドセッターたち。彼女たちに憧れて来店する若い女性客にお姉さん肌で接し、ファッションのアドバイスを施しながら次から次へと商品を買わせた。

現在、一部のスタッフがカルト的人気を誇っているのは、Instagramの力によるところが大きい。ショップスタッフの世界において、ソーシャルメディアでのプロモーションこそがその人気を作り出す中枢的役割を担っているのだ。スタッフが自社ブランドの商品を個人のアカウントでプロモーションし、逆にブランドもショップスタッフをInstagramにアップして相乗効果を生むという構造だ。フォロワーたちは、ショップスタッフのアドバイスを信用する。ミニマルな世界観のパンクスタイルで人気のNever Mind the XUのショップスタッフ、ペク(Baek Yoona)は「スタッフのフォロワー数が増えれば、ショップの人気も上がる」と話す。

とはいえ、そんな関係から金銭的な利益を得るのはやはりショップであり、小売をアシストする役割であるショップ店員が高報酬を得られることなどない。原宿も例外ではない。とすると、影響力を持ち、Instagramで人気を獲得する以外、彼らにはどんな得があるというだろう? ペク曰く「いろんな得がある」らしい。「原宿のショップスタッフはコミュニティを形成していて、カメラマンとかメイクアップアーティストとか、他のファッション関係業界とのつながりを持っているひとも多い」。 Faline Tokyoで働く、それは他ブランドのデザイナーやスタイリスト、ミュージシャンらと出会うチャンスが多いことを意味する。ベイビーマリー曰く「ジェレミー・スコットもリアーナもショップに来た」し、「パーティに呼んでもらえることもあって、キム・ジョーンズやリカルド・ティッシと一緒になったときもあった」など、Faline Tokyoのスタッフには業界関係者ですら潜入が難しい、華やかな世界との接点を持っている。そのレベルのショップスタッフになってしまえば、知り合いの輪はどんどんと広がり、それに乗じて存在感は増していく。「そのポジションをいかに高めていけるか、どれだけ自分自身をプッシュしていけるかにかかってくる」とマリーは言う。

そんな原宿ファッションシーンの内部へと入り込めたスタッフのごく一部には、さらなる成功を手にするものもいる。ぺこりゅうちぇる——間違いなく現在の日本においてもっとも有名なカップルだろう——は、ティーンに大人気のショップSuper Wegoのショップでお互いにスタッフとして出会い、現在までに2人合わせて100万人強のInstagramフォロワーを抱えるに至っている。ヨーロッパではまだ知られていないものの、ぺこはきゃりーぱみゅぱみゅに次ぐ「日本の顔」として知られており、その独自のスタイルはファンたちから「ぺこ系」と呼ばれるなど、まさに飛ぶ鳥落とす勢いだ。その人気に後押しされ、彼女は自身のブランドを持ち、原宿の有名なBubblesでPeco Clubというラインを発表している。一方のりゅうちぇるは、トレードマークのジェンダレス系スタイルで人気を博しており、最近のテレビでその存在感を拡大している。

しかし今、原宿のショップスタッフには変化が起こり始めている。甘くキラキラしているだけではないのだ。現在もっとも輝いているスタッフたちは"Harajuku Kawaii"のその先を行っている。東京ショップスタッフ事情の未来は明るい。ここでは、i-Dが選んだベスト・ショップスタッフを数人紹介する。

H. Naoki  CHANCE CHANCEスタッフ
Instagramでは「なおぴす」の名で知られているNaoki。親近感のある男の子っぽいルックスは『ロミオ+ジュリエット』時代のデカプリオを彷彿とさる(ブリーチの髪もラスベリー色の唇もお似合い)。姉の影響でファッションに興味を持つようになり、地元神奈川県のとあるショップでスタッフを経験したところから彼のキャリアは始まった。現在23歳、モデル業もこなすなおぴすは、韓国ブランドCHANCE CHANCEがラフォーレ原宿に展開しているショップでスタッフとして働く一方、雑誌『Nylon Japan』のウェブサイトでブロガーとしても活躍している。 @naopisgram

ペク(Baek Yoona) Never Mind the XUスタッフ
ミニマル・パンクのブランドNever Mind the XUでショップスタッフとして働く17歳の高校生ペクは、黒一色で包んだ小柄な体に、ボブを合わせたスタイルがトレードマーク。昨年、ショップスタッフ兼モデルとして働いて欲しいとXUから直々にスカウトを受けた彼女。InstagramでXUの魅力を発信し、原宿の"カワイイ"スタイルとダークなXUスタイルを見事に融合させている。 @12by15

絵里南(ErinaAoi Coffee Standスタッフ
原宿の注目新進スタッフは、ファッションのショップだけに現れるとは限らない。現在21歳の絵里南は、ラフォーレ原宿のなかにあるコーヒーショップのスタッフ。「とにかく原宿に関わりたかった」という彼女は、インターネットで人気を拡大しており、ストリートスタイルのブログでその存在感が注目を集めている。Aoi Coffee Standで働くかたわら、ミュージックビデオに起用されたり、DJとしての活動を開始、そして最近では、チェルシー・ハンドラーがNetflixで展開しているトーク番組で日本のストリートファッションがテーマとして取り上げられた際には「原宿の顔」のひとりとして紹介されている。@elleanor1222

KENKEN  Faline Tokyoスタッフ
「会った瞬間に『この子だ』と思った」とベイビーマリーは、Faline TokyoきってのカリスマスタッフKENKENとの出会いを語る。名古屋での新店舗ローンチに際し開催したパーティで彼を発見したというマリーは、最近になって彼に東京でのショップ勤務を命じた。KENKENは現在、ショップスタッフとして働くかたわら、同じくFaline Tokyoのインターンとして働くよしあきとともにDJデュオを組み、活動の場を広げている。@kenkenlayos

ゆうたろう サントニブンノイチスタッフ
新しい形の古着屋サントニブンノイチで働くゆうたろう。ストリートスタイルのブログで多く取り上げられたことで広く注目を集めることとなり、きゃりーぱみゅぱみゅの事務所ASOBISYSTEMの目に留まった。今や雑誌やテレビで引っ張りだことなっている。 @aaaoe__

EnoErino MakiyaMYOBストアマネージャー
犯罪者と見間違われても仕方がないその容姿が強烈な印象を与えるEnoは、ラフォーレ原宿のMYOBでマネージャーを務めるかたわら、感情に訴えるアートワークをブランドのアイテムデザインに提供している素晴らしいアーティストでもある。Enoのスタイルはムーディだが、彼女が覗かせる笑みには美しい輝きがある——その輝きは、美しい歯によるところも大きいのかもしれない。彼女の歯は、未来的なセレブ歯科ワイズデンタルキュアTOKYOで手入れされている。ワイズのアートディレクションも、Enoが手掛けている。 @eno_tokyo

MATCHA  Fake Tokyoスタッフ
日中は渋谷のラグジュアリーセレクトショップFake Tokyoでショップスタッフとして働き、夜は国際的DJとして活躍、クラブキッズとしてナイトシーンを謳歌しているMATCHA(抹茶ばかりを飲んでいるわけではないらしい)。彼のトレードマークともいえるごちゃまぜファッションスタイルは、東京最高峰のストリートスタイル・ブログでよく見かけるスタイルだ。 @supercupmatcha

Credits


Text Ashley Clarke
Translation Shinsuke Kuriyama at WORDSBERG Inc.