サウジアラビアの音楽、スケボー、そして「女性の権利」

「女性に平等の人権を」と訴える署名運動を世界に巻き起こしたサウジアラビアの女性蔑視の法律。今、サウジアラビアでは、女性アーティストたちが様々な手段を用いて声をあげている。

by Hannah Ongley
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16 January 2017, 7:26am

血縁もしくは婚姻関係にある男性親族の許可がなければ女性は旅行すらできない——そんなサウジアラビアの法律に関し、国際的人権NGO<ヒューマン・ライツ・ウォッチ>がレポートを発表したことを受け、昨年秋から同国の"男性後見人法"撤廃を求めるオンライン署名運動が世界で展開されている。すでに数千人がこれに賛同して署名を行ない、この結果はサウジ政府に提出されている。時を同じくして、Twitterでも「#IAmMyOwnGuardian(私の後見人は私自身)」というハッシュタグで世界中の女性が支援を表明し、「サウジ女性に平等の人権を」という訴えは世界で一大ムーブメントとなっている。旅行にかぎらず、婚姻の自由をはじめとする多くの基本的人権が現在のサウジアラビアでは女性に与えられていない。アル=カシム(Al-Qassim)などの超保守的宗教では、女性が車に乗ることすら「治安妨害」として認められていない。

署名運動などに続く手段として、サウジの政治活動家たちはジェンダーにまつわる不平等な人権を撤廃しようと、よりクエイリティブな手法を模索している。アーティストでありミュージシャンでもあるマジェド・アルエサ(Majed Al-Esa)による最新曲のミュージック・ビデオは、YouTubeにアップされてからほんの1週間で200万ビューを獲得し、その内容も手伝ってサウジ政府に大きな衝撃を与えている。曲名「Hwages」は、「不安」がもっとも近い日本語になるだろうか。ビデオでは、カラフルなスニーカーを履いた女性たちが伝統的な黒いニカブの下に派手な花柄のドレスを着て、バスケットボールやボーリングを楽しみ、車やスクーターを運転し、遊園地を訪れるなど、現在もなお「男性の許可なしには違法」とされる行為を次々にやってのけている。

この曲の歌詞も、映像に負けず劣らずラディカルだ。『International Business Times』によると、この曲の歌詞には「男たちから逃れることを神が私たち女性に許してくれれば」「男たちが私たちの精神を蝕む」「気が狂いそう」などという言葉が並んでいる。また、「House of Men(男の国)」と書かれたパネルが配された演壇にドナルド・トランプの似顔絵が現れるなど、サウジアラビア女性でなくとも当事者として共感できるメッセージも散りばめられている。

女性を弾圧する法律に対し、サウジアラビア女性がアートを用いて挑んだのは、これが初めてではない。昨年にはオーストラリアをベースとして活動をつづけるサウジ女性ストリート・アーティスト、ミズ・サファア(Ms Saffaa)が『I Am My Own Guardian』と題した壁画シリーズを制作し、世界中で話題となった。この『I Am My Own Guardian』は、チェック柄のクーフィーヤをまとった女性を描いたポートレイト作品で、サウジのストリートのあちこちに描かれた後、TシャツやiPhoneケースとして一般販売され、世界に点在する同志たちが支援の気持ちを表明すべくそれらを購入した。ニューヨークのアーティスト、モリー・クラブアップル(Molly Crabapple)も、購入によって支援を表明したひとりだ。ミズ・サファアは、昨年11月に『The Guardian』紙のインタビューに応じ、そこで「サウジの女性たちを犠牲者として描くことが"幼児化"を助長している」と西洋諸国を名指しで批判し、視点をただすよう訴えた。「サウジ女性が声をあげられないなどと捉えるのはやめてほしい。私たちはずっと声を上げている」と彼女は話している。「西洋諸国は、私たちの声にきちんと耳を傾けてこなかっただけ」と。そう、「Hwages」の女性たちもまた独自のやり方で声をあげているのだ。

Credits


Text Hannah Ongley
Image via YouTube
Translation Shinsuke Kuriyama at WORDSBERG Inc.

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