『スリープウォーク・ウィズ・ミー』&『ジョージア』一日限りの特集上映会

7月30日(日)渋谷ユーロライブにて「アメリカ映画が描く“真摯な痛み”」をテーマに、日本初公開の『スリープウォーク・ウィズ・ミー』と、約20年ぶりの上映となる『ジョージア』が二本立てで上映される。

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jul 26 2017, 4:30am

今秋、『アメリカン・スリープオーバー』をはじめとした日本未公開のインディペンデント映画の上映活動を行うグッチーズ・フリースクールを中心に集まった自主上映6団体による特集イベント「ほぼ丸ごと未公開!傑作だらけの合同上映会」が開催される予定である。

そのスピンオフ企画として、来たる7月30日(日)渋谷ユーロライブにて「アメリカ映画が描く"真摯な痛み"」をテーマに、『スリープウォーク・ウィズ・ミー』(ジャパンプレミア)と『ジョージア』(約20年ぶりの日本上映)が特集上映される。

スタンダップ・コメディアンであるマイク・バービグリアの監督デビュー作『スリープウォーク・ウィズ・ミー』は、脚本・主演も務める彼自身の夢遊病/睡眠障害の実体験を基にした半自伝的コメディ。2012年サンダンス映画祭でNEXT部門観客賞を受賞し、ジェームズ・L・ブルックスやジャド・アパトーも絶賛した本作で、バービグリアは売れないコメディアン役を演じている。客を笑わせられないストレスから彼が夢の中の行動を現実でも行ってしまうレム睡眠行動障害に陥ってしまう姿がユーモアを交えて描かれるが、次第に彼はその病気の体験を自らネタにすることで笑いを取っていく。つまり、ここには悲惨な出来事も自分が抱えている痛みも笑いに変えるコメディアンたる彼の確かな信念を見て取ることができるのだ(それは日本公開が待たれる監督2作目『Don't Think Twice』にも継承されている)。

また、メタフィクション的な演出も採用したスタンダップ・コメディアンらしいストーリーテリングが試みられており、それは『アニー・ホール』の手法を深化させたものであると言えるだろう。そう、今日の米インディペンデント映画界を代表するマーク・デュプラスが言うように、彼は「新たなウディ・アレン」なのだ。

そして、日本ではまだあまり知られていないが、彼の存在を加えることで、米コメディ界がより豊かな広がりを持って見えてくることも興味深い。たとえば、ジャド・アパトーは自身の監督最新作『エイミー、エイミー、エイミー! こじらせシングルライフの抜け出し方』でブリー・ラーソンの夫役にバービグリアを迎えたわけだが、その脚本と主演を務めたスタンダップ・コメディ仲間のエイミー・シューマーは本作にカメオ出演しているのだ。アパトーが製作総指揮を務めるNetflixオリジナル・ドラマ『LOVE ラブ』の主演ジリアン・ジェイコブスが、バービグリアの監督第2作『Don't Think Twice』でも主演していることもまた単なる偶然とは言えないだろう。あるいは、バービグリアはレナ・ダナムによる人気ドラマ『GIRLS/ガールズ』のシーズン1に出演しているのだが、『Don't Think Twice』では彼女が本人役で出演しているのである(『スリープウォーク・ウィズ・ミー』には同ドラマのレイ役アレックス・カルポスキーがコメディアン役で出演)。

本作はエイミー・シューマー、レナ・ダナムのほか、『ラブ・トライアングル』のリン・シェルトンや『イカとクジラ』のノア・バームバックなどにも謝辞が捧げられているが、このようにマンブルコア系のインディからメジャーまでをつなぐ重要な存在としてバービグリアを見ることもできるのだ。なお、ニューヨークでのライブの模様を収録した『マイク・バービグリアのジョークの神様、ありがとう!』(Netflixで配信中)は、彼の笑いに対する高い意識や倫理観を知る助けにもなるので、合わせて見ることをお薦めしたい。

一方、新しい字幕で日本のスクリーンに再び蘇る『ジョージア』は、『ヘイトフル・エイト』で第88回アカデミー助演女優賞にノミネートされたジェニファー・ジェイソン・リー(以下、JJL)が1995年に主演した音楽映画。初めて製作も担当した本作で彼女は、才能に恵まれカントリー歌手として成功を収めた姉ジョージア(メア・ウィニンガム)に対して屈折したコンプレックスを抱く妹セイディを切実なリアリティを持って演じているが、この役が生涯で最も思い入れがあることを認めている。「極めて個人的な作品」だと語る本作は、彼女の実母バーバラ・ターナーが脚本を手がけ、実際の姉妹関係が反映されているのである。また、彼女自身が大ファンであるLAのパンク・バンド「X」のベース/ボーカルであるジョン・ドーが出演し、劇中でセイディのバンドを率いている点も見逃せない(JJLのファッションがタトゥー風ボディ・ペインティングであることも含めてセイディが「X」のエクシーン・セルヴェンカへのオマージュとなっていることを本イベントの主催である岡俊彦氏は指摘している)。

酒や薬に溺れながらも夢にすがり、傷つきながらも歌い続けるセイディの物語をJJL自身の歌声を交えて本作は巧みに語っていく。ルー・リード「There She Goes Again」やエルヴィス・コステロ「Almost Blue」などのカヴァーが披露されるが、中でも8分以上に渡ってヴァン・モリソン「Take Me Back」を感動的に歌い上げる場面は必見だ。そして、「さらば苦しい時代よ」とスティーブン・フォスター「HARD TIME」を歌いながらJJLが魅せるラストの表情は、人生に不器用で諦めの悪い人間なりの気概と矜持があり、美しさを湛えている。

どちらも自らの信じる道を生きる覚悟を謳った、人生に対して厳しくも誠実な映画である。自分の夢は他の誰のものでもない。たとえ他人から認められなかろうが、否定されようが、自分が幸せを感じられることをやれている限りそんなことは"構わないんだ"という哲学は、映画館を出た後にもきっと心に残るに違いない。

新たに映画と出会う歓びは格別だ。それは、ただ受身に周囲の評価や情報ばかりを気にしている者には味わうことはできない。能動的かつ無差別に映画を観る者にしか訪れない幸福である。今後のソフト化、劇場公開の予定もない1日限りのまたとない貴重な上映会に、ぜひ駆けつけてほしい。

「ほぼ丸ごと未公開 傑作だらけの合同上映会」開催記念プレイベント
日時:2017年7月30日(日)
会場:ユーロライブ(渋谷)
料金:2本立て1000円(入れ替えなし・当日券のみ・整理番号制)

タイムテーブル
12:50~ チケット販売開始
13:05~ 開場
13:30~『スリープウォーク・ウィズ・ミー』上映
14:51~ 休憩
15:10~『ジョージア』上映

Credits


Text Takuya Tsunekawa