まだトランスフォビックなの?

かつて進歩主義のアイコンと称えられた、フェミニズムの草分けジャーメイン・グリアが、自らの“真の女性”発言について、改めてその立場を明らかにした。

by Hannah Ongley
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19 May 2016, 5:25am

1970年に著書『去勢された女(The Female Eunuch)』を発表したジャーメイン・グリア(Germaine Greer)は、70-80年代にかけて世界に広がった第二次フェミニズムにおいて、最も重要な人物と考えられてきた。彼女は現在も、"女性であること"や"フェミニニティ"という概念を再考するための重要な教訓を世界に向けて示している。しかし、残念なことに彼女にはそのような教訓を世界に発信する資格などなさそうだ。

グリアはここ数年の間、「何が女性を女性たらしめる要素なのか」をめぐり、時代錯誤も甚だしい姿勢を打ち出し続け、多くの批判を浴びている。昨年には、「トランスフォビア(トランスジェンダー嫌悪)なんて概念は存在しない」と声高に宣言し、数ヶ月後にはBBCのインタビューでその発言を繰り返した。「一部のひとがそういう手術をすべきではないと言っているのではなく、そのような手術をしたからといって彼らが女性になれるというわけではないと言っているんです」と性別適合手術について語った。そしてこのインタビューで彼女は、ケイトリン・ジェナー(Caitlyn Jenner)を名指しして、「彼/彼女の家族は彼を除いて全員が女性。彼女たちが世界から浴びている脚光を自分も浴びたかった、そしてそれを実現した。そういうことよ」と言い放っている。残念極まりないことだ。グリアには、Twitter上の反応を見て、自らの過ちに気づいてもらいたい。

The Guardian』誌によると、オーストラリアでQ&Aのセッションに出演したグリアは、参加していた若い女性(かつてはグリアのファンだったという)から、次のような筆問を受けている。「『正真正銘の女性』などという定義が存在すると考えるのはなぜでしょうか? それは、私もあなたも陥らないようにしようと抵抗していた本質主義ではないでしょうか?」と。この質問をしたのは、ジャーナリストのステフ・ディソウザ(Steph D'Souza)だった。

「それは難しい問題ね」とグリアは始めた。過去の発言を償うのではないかと思わせるような口調だったという。「『女とは何か?』を考え始めたとき、『X染色体がふたつ持つのが女性、XとYの染色体が組み合わせられたのが男性』という従来の捉え方で考えていました。そう考えるのが楽だった。でも今、私が情報にそれほど精通していないからというのもあるんだろうけれど、それは間違いだったと認めざるをえないわ」とグリアは口を開いた。

しかしそこで、彼女は、「男性として40年間を生きてきて、子供と妻もいるひとが、妻の無償のサービス−−現代の女性には想像しにくいでしょうけど、昔の女性は男性に仕えたものなの−−献身的なサービスをさんざん謳歌した挙句、実は自分はずっと女性だった、というのはフェアじゃない」と発言したようだ。これに対し、司会のトニー・ジョーンズが、「ようやく塞がりかけた墓穴をまた掘り起こして」とジョークを飛ばして場を和ませようとすると、グリアは「私はずっとこの穴から出ていないわ」と答えたのだという。彼女はその後も、"男性から女性へと性別適合をするトランスジェンダーが、ジェンダーの単純な二分化を拒絶して生きることは許される"と話し、その条件を"女性として認識されることを求めなければ"と言い足した。「妻との間に子供が4人いる50歳のトラック運転手が『実は僕は女性なんだ』なんて言い出したらどうかしら? 間違っていると私は思う」と言い放った。

グリアの"意見"に、多くの人々が激怒している。理由は明白だ。彼女の発言は、「老害(笑)」と嘲笑って済ませられるほど簡単なものではない。"トランス狩り"ともいうべき惨事が実際に発生している現代において、彼女の発言は直接的にトランスジェンダー女性たちの身の危険に関わる問題なのだ。若いセレブリティのフェミニズム観を記事に盛り込むという手法はもう古いが、フェミニズム界の重鎮が掲げる信条とのコントラストを浮き彫りにすることで、進歩主義的な価値観も変化し続けていることを示すのには役立っているのかもしれない。何はともあれ、ジャーメイン・グリアの発言に対するネット上の反応は傑作ぞろいだ。

I can't believe Germaine Greer thinks it's unfair for lesbians to get married. (レズビアンの結婚を"フェアじゃない"って言ってるジャーメイン・グリアって何なの?)

Credits


Text Hannah Ongley
Translation Shinsuke Kuriyama at WORDSBERG Inc.

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