Photography Alina Negoita

ロンドンに捧げた美しき頌歌:Martine Rose SS19

マーティン・ローズは、ファッションをストリートに立ち戻らせる。

by Felix Petty; translated by Aya Takatsu
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jun 15 2018, 8:40am

Photography Alina Negoita

ロンドンのメンズウェアシーンからマーティン・ローズがいなくなってしまったら? 彼女の正直さと目的意識が必要だ。そして、革新と個性への渇望も。彼女のアイデア、表面的には使い古された考えにしか見えないものの中に新たな可能性を見出す彼女の能力が必要なのだ。つまり、ロンドンのメンズウェアには彼女の共同体意識がなくてはならないのである。

2019年春夏コレクションにあたって彼女が私たちを集めたのは、ケンティッシュ・タウンの袋小路だった。ファッションをロンドンにある本物のストリートに持ち込んだのだ。「この通りのコミュニティを知っているんです」と、ショーのあとでマーティンは話した。「この通りには、素晴らしい共同体意識があります。そして、そこの人たちがとてもそれに積極的なのもわかっていました。それがこのショーのポイントでもあります。共同体という感覚です」。というわけで、彼女は周辺の地域でストリートキャスティングをした男の子たちを起用し、若きロンドンの男性を讃えたのである。

マーティンの驚くべきところは、作品づくりに自らの経歴を用いるその手法だ。もちろん、過去のジャングルとレイヴ時代におけるワクワク感とサブカルチャーの爆発を掘り下げ続けている──ここでやったように──のだが、毎回新鮮さがあり、何らかの新しい話題のタネをもたらしてくれる。

彼女の非凡さには美しさがある。自らの望みどおりにシーズンの方向を変えてしまう強さ。そのファッションをまとめてトッテナムに持って行ったかと思えば、昨夜はそれをケンティッシュ・タウンの袋小路に運びこんだ。マーティンほど勇敢な者はほとんどいない。

あの土曜日の夜は蒸し暑く、ショーだらけの長い1日に誰もが疲れ切っていた。しかしマーティンの世界に一歩足を踏み入れると、そこにいたのは笑い遊ぶたくさんの子どもたち。窓から体を乗り出し、一目見ようとストリートをのぞく人たちで道はいっぱいだった。ファッションはインクルーシヴ(包括的)で楽しいものでなければいけないということを、気持ちよく気づかせてくれた。

モデルが登場すると、マーティンの表現力が最大限に発揮された。レイヴのマーティン、ジャングルのマーティン、薄暗いクラブで汗だくの夜のマーティン、ラム&コークとドラムンベースのマーティン。ダブルデニム、バギーなセーター、超スキニーなジーンズ。ヒョウ柄とライクラ。Evisuを彷彿とさせるスプレーペイントされたジーンズ。ブラウンの革に、バーネックレス。

「これはロンドンへのラブレターです」と彼女は話す。「今、ロンドンには少しの愛が必要なんです。ロンドンが愛に満たされたら、ロンドンは皆を集める。ここでこのショーをすることの意味も、そこにあるのです。これは、そうしたものに象徴される私の人生の一時期、たくさんの音楽がどうやってみんなの心をひとつにするかということについてのものなのです」

ちょっとだけ、今はなき懐かしいものを思い出してもいいだろうか。私が若すぎて経験できなかったこととか。Martine Roseのショーによって心に呼び起こされるのはそういう感情だ。それはパワフルで、ほかの何にも類さない。

一年前の2018年春夏コレクションでマーティンが取り組んだ分野──旅や旅行、発見やアウトドアふうといったテーマ──に、多くのデザイナーが攻め入ろうとしている今シーズン。マーティンは自身の原点である歴史、個性、そして性格に立ち戻ることによって、彼女がロンドンファッション・ウィークで最高の存在であることを私たちに思い出させてくれた。

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This article originally appeared on i-D UK.