電気グルーヴ interview:「10代でうちらに憧れてたら心配」

今年で結成から30年。電気グルーヴのウルトラの瀧(ピエール瀧)と石野卓球が、記念アルバム『30』や鼠先輩の顔の小ささ、今の10代について饒舌に語る。「俺たちみたいな年上の人の意見を参考にしないほうがいいよ、ってことかな。反発すると角が立つから、ああそうですかって上手に」

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11 January 2019, 8:15am

90年代、00年代、10年代と、日本の音楽シーンで唯一無二の存在感を放ってきた電気グルーヴ。長きにわたる活動のなか、石野卓球は精力的なソロワークで世界各地のテクノシーンにその名を轟かせ、ウルトラの瀧(2019年限定で電気グルーヴの活動においてはピエール瀧からこの呼び名に)は数々の映画やドラマに出演、日本アカデミー賞やブルーリボン賞を受賞する日本映画界に欠かせない役者になった。個々のステージはいくら広がっても、彼らの軸足は常に電気グルーヴにあった。そして今年、ついに30周年を迎えた。

1月23日リリースの結成30周年アルバム『30』には、周年ソング『電気グルーヴ30周年の唄』をはじめ、ヒット曲をリメイクした『Shangri-La feat. Inga Humpe』、『富士山(Techno Disco Fujisan)』『Flashback Disco(is Back!)』など全12曲を収録。また付属するライナーノーツはファンにはお馴染みの「出張版 電気グルーヴのメロン牧場 ──花嫁は死神」バージョンで、楽曲制作に関する諸々の話が楽しめる。

アルバム発売前のふたりに、現在の心境やこれからの展望、10代への想いなどを聞いた。

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全部喋っちゃったんですよ

──30周年という節目のアルバムだと思うのですが、どういう心境で作られたのでしょうか。
卓球:そうですね、僕としては今までを総括するような感じで……。
瀧:今までの? キャリアを?
卓球:……そういう感じで喋ろうかと思ったけど続かなかった(笑)。
──今回のアルバムには『富士山』とか、『FLASHDANCE』とか……あっ!
卓球:フラッシュダンス!
──す、すみません! ど緊張して!
卓球:♪What a feeling〜。
瀧:オーディションのシーンだね。
卓球:パシャッて水をかぶってね。
──大変失礼しました、『Flashback Disco』です。昨年の夏に「ミュージックステーション」に出演された際、「瀧さんは電気のメンバーだったんだ!」っていうツイートがたくさんありましたよね。あのとき、瀧さんのことを電気グルーヴだと知らない人もたくさんいるんだなと思ったんです。
卓球:だってあのとき、まだメンバーじゃなかったもんね、瀧。
瀧:そうなんです。最近昇格して。
卓球:昇格家千登勢!
──(笑)。それで、瀧さんのことを俳優だと思っている人が……。
卓球:いや、女優。
──女優。
卓球:ぶっかけ女優。
──(笑)。
瀧:ごめんなさい、もうふざけません。
卓球:黙ります。
──というわけで、改めてこのアルバムで電気グルーヴのことを知る人も多いんじゃないかなと思ったんです。
卓球:でもねえ。
瀧:全部喋っちゃったんですよねえ。
──ああ……、今回ライナーノーツが相当充実してますもんね。なんといってもメロン牧場チームですから。
卓球:そうなんですよ。それ以外のことを話すと、とっ散らかっちゃうじゃないですか。いっそ朗読しましょうか?
──それは購入された方のお楽しみということで。ちなみに、i-D Japanは読んでいらっしゃいますか?
瀧:取材先に置いてあったら読みますよ。僕たち昔、連載をやってたんですよ。
──一度休刊して、2016年に復刊したんですよ。間が一回切れてるんです。
卓球:キレる10代ね。
──読んでる層も若めなんですよ。
卓球:わかめちゃん?
──わかめちゃんです。
卓球:ですだって(笑)。
──これが最新号ですね(フィメールゲイズ号を見せる)。
卓球:へえ。インタビューを受ける人って毎回女性なんですか?
──いえ、いつもはユニセックスです。
卓球:というとIZAMみたいな感じ?
瀧:IZAMわからないでしょ。
卓球:知らない? SHAZNAの「すみれ September Love」ですよ。
──わかりますわかります。
卓球:もとは一風堂っていうバンドの曲でね。一風doだから過去形は一風didね。
──この号は「フィメールゲイズ」という特集で、女性のクリエイターを集めて作ったんです。
卓球:印刷所の方々も?
──すみません、印刷所までは流石に。『Shangri-La』もリメイクバージョンで収録されていますね。
卓球:なんで『Shangri-La』を入れたかわかります?
──今あえてのリメイクですもんね。何か深い理由が……。
卓球:売れた曲だから(笑)。これ、山本晋也監督の「なんで俺が監督って呼ばれてるか知ってるか?」ね。正解は「喧嘩が強いから」だって。
瀧:関係ねえじゃん(笑)。
──(笑)。
瀧:『Shangri-La』はライブではアレンジして演奏していて、年々アップデートはしてるんです。そのアップデートされた素の曲、清書したやつを入れた感じですね。
──このバージョンから聴く若い層もいるかもしれませんね。
卓球:若い子、聴けるかな。だってもう聴こえないでしょ、耳。草食系だから。
瀧:精子も少なくなってるって言うもんね。
──生物学的に弱くなってきていると。
卓球:憂国ですよ。
瀧:本当は草食系のほうが耳聞こえるはずなんだけどね(笑)。
──そうですね、逃げなくちゃいけませんから。
卓球:サンコンさん肉食だけど耳いいよね。一個二個男根!
──おお!(笑)
卓球:ペニスの商人!
──おおお!(笑)
瀧:ねえ、のってたら終わらないからね。
──すみません。この周年の曲が「前髪垂らした」から始まるのは……。
卓球:だって男って前髪なくなるから。女の人って前髪なくならないけど。
瀧:前髪は失われていくものだから。
卓球:そうそう、あとちゃんと渋谷(慶一郎)くんに言わなきゃと思ってさ。
──ああ、ライナーノーツに書いてありましたね。前髪といえば渋谷さんだから前髪大臣に任命しようと思っていると。
卓球:それでネットで渋谷くんに言ったんだよね、「前髪大臣に任命する」って。そしたら「任期を教えてほしい」っていうから、「前髪切るまでだよ」って。
瀧:前髪あるうちはやってほしいよね。
──そして『Flash Back Disco(is Back!)』もリメイクされて。
卓球:バックバックでバックインバックみたいな感じですね。
──今回は「is Back!」が付いていますね。
卓球:西伊豆ですけどね。
瀧:堂ヶ島のほうです。
卓球:うちら静岡出身なんで。あ、ねえ、そういえば昔、エンガチョのことクラッチっていわなかった?
瀧:エッペンじゃなかった?
卓球:エッペン? おまえそれドイツ語だよ! エップの複数形のエッペンだよ。すみません、瀧んち公用語がドイツ語なんで。
瀧:そうなんです。
──『ファミリーヒストリー』にそんなくだりありませんでしたよ?
卓球:それ日本語版見たんでしょ?
瀧:ドイツ語版もあるんですよ。
卓球:同作品が言語違いで作られてるから。あれと一緒。ミヒャエル・ハネケの『ファニーゲーム』。
──(笑)。『WIRE WIRED, WIRELESS』『海猫夏 Caty Summer Harbour』『いちご娘(ひとりっ子でない)』のインストゥルメンタルもかっこいいですね。
卓球:僕はパンストゥルメンタルって言ってますけどね。
瀧:ピシッと履きたいね。
卓球:大事なのは着圧だよね。どこからタイツでどこからストッキングか知ってます? 22デニールだっけ?
瀧:知らないよ(笑)。
卓球:同じなんですよね。素材は一緒なんですよ。厚さで違うっていう。

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年をとればとるほど、幼くなっていく

──懐かしい曲も収録されているんですが、通して聴くとリメイクという気がしませんでした。
卓球:要は作曲に30年かけたようなもので、ニューアルバムと変わらないんですよね。
瀧:昔あった曲をコンパイルしたわけじゃなくて、今のライブでやっている状態の曲を入れてますから。
──『Shangri-La』も、卓球さんは昔の声のままですけど、瀧さんはボーカルを重ねていて。
卓球:曲によっては加齢がプラスになることもあるんです。『N.O.』とか、歌詞は変わらなくても声が味になったりするんですよ。でも『Shangri-La』はそういう曲ではない。反対に、瀧は当時のキーは今より高いから、今の声で下を足したんです。そうしたらうまくまとまって。
──それによって声にボリュームが出ていて、かっこよかったです。ちなみに、年をとるっていうことってどう考えていらっしゃるんですか?
卓球:ご覧のとおりなので(笑)。年をとればとるほど、ベンジャミン・バトンですよ。
──若くなっていくんですか?
卓球:若いというより、幼くなっていくんですね。
──でも、発想もアウトプットもいつも新しいなと感じます。
卓球:見た目は老けていってるんですけど、言動やその内容はどんどん幼くなっていくんですね。だから他愛もないこと言っても、「きっと意味があるんじゃないか? 裏があるんじゃないか?」って思われがちで。でも実際何もないんですよ(笑)。
瀧:声の変化とかは結構ありますよ。
卓球:あと経験を積んできたぶん、寄り道をせずにゴールに行けるようにはなりました。制作に関して、こんな可能性もあるんじゃないかって色々探るのも、もう面倒くさくなってくるじゃないですか。そういう実験はソロでやれますから。余命いくばくもないので、うちらも。
瀧:ほんとそうですよ。
卓球:あと20年とかないじゃないですか。10年とかしかないから、楽しくやっていきたいなって。
瀧:そうねえ。
卓球:だから新たにメンバー募集して。
──えっ!
卓球:するだけですよ。増やすつもりはないです。
──ほっとしました。30周年に気負いがないというのも電気グルーヴらしいですね。
瀧:20周年のときは、もう少し昔のメンバーと絡んだり、今までの道のりを振り返ったりもしましたけどね。今回はそういう感じでもないんで。
──映画『DENKI GROOVE THE MOVIE? -石野卓球とピエール瀧-』もありましたもんね。
卓球:あれのおかげで、けっこう理解されたところはありましたよ。うちらってなかなか掴みどころがないから。
瀧:そう。あと、お客さんに「あのときのあれがいい」っていうのがあるんですよね。
卓球:90年代によくテレビに出てたから、あのときがいちばんいいって言われることがあるんですよ。そのあと聴いてねえくせに。
──(笑)。今後も周年は続けていかれるんですよね。
卓球:5区切りですね。33周年とかやってもいいんですけど、なかなかみんなついてきてくれない。時代がまだ電気グルーヴに追いついてないっていうか。
──でも、常にずうっと先をいっている感じがありますよ。
卓球:そう思うでしょ? でもすごい遅いのかもしれませんよ?
瀧:周回遅れ(笑)。
卓球:俺も遅かったからね。一等でゴールしたと思って拍手されるっていう。しかも肥満児じゃないからもっとひどい。
瀧:遅い理由が見当たんないっていう。
卓球:そういうとき、どうするか知ってる? やる気がないように走るんだよ。♪そいつがおーれのやりかったーですよ。♪ひじかったー、ですよ。歳三!
──(笑)、ありがとうございます。
卓球:良かったです。昨日寝ずに考えたんで。ねずみ男です。
瀧:鼠先輩ね。
卓球:鼠先輩すごい顔ちっちゃいんだよね。前に会ったじゃん。
瀧:会った会った。
卓球:顔ちっちゃいなーって。
──(笑)、30周年を迎えて、今後の展望はありますか?
瀧:先を見て何かするわけでもないので、たどり着いたらそこだった、って感じなんですよね。それで30年来たので、この先35周年も40周年も、やってることあんま変わんねえなって感じでいいんじゃないかなって。そういきたいですね。
卓球:35周年のときは亡き瀧くんを偲んで。多分そのころは、新メンバーの二代目ピエール瀧とやってると思うんですけどね。女性の。
瀧:二代目ピエール瀧、女性(笑)。かっこいいな。
卓球:おまえと全くおんなじことやらせるから。

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大人の話は話半分で聞くノウハウを

──i-D読者は10-20代も多いんですが、今の若者に対して言いたいこと、思うことはありますか?
卓球:う〜ん、息子とか娘より下ってこともありえますよね。もしくは孫? という名の宝物? じゃあ聞きたいのは「なんでこんなに可愛いのかよ」ってことですね。
──(笑)。瀧さんはお子さんが10代ですよね。
瀧:うん、見てると全然違う感じはあるね。ネットの使い方とか。友達とのコミュニティもあるし、処理してる情報量も多い。だから自分たちのころと同じようには語れないよね。
卓球:言葉も違うしね。
瀧:だから10代の子をあまり下に見ていないっていうか。
──ああ、なるほど。
瀧:それに、フェスとかクラブとかでヤーッって楽しむのは、同じフィールドでやれるじゃん。きっと同じ回路を使ってるだろうからさ。
卓球:ホッカイロね。
瀧:そういうところで「お父さんたちより年上だけど、こんなのやってるんだ。楽しそうだな」って思ってもらえればいいんじゃないかな。
卓球:だって10代の子にしてみたら年齢的に校長先生くらいじゃない? こんな校長がいたら世も末ですよ。広末ですよ、マジで恋する5秒前!
瀧:「校歌いくぜ!」ってDJブースに入っていくっていう(笑)。
卓球:あとは俺たちみたいな年上の人の意見を参考にしないほうがいいよ、ってことかな。話半分で聞くノウハウを身につけたほうがいいっていうか。で、反発すると角が立つから、ああそうですかって上手に。
──おふたりは10代のころ、憧れの大人っていました?
卓球:そういうのがなかったんでこうなっちゃったんですよね(笑)。
瀧:リスペクトはありましたけど、あの位置になりたいっていうものはなかったなあ。
卓球:それに、誰かになりたいって言ってる連中をバカにしてたんで。うちらのころだとローリング・ストーンズみたいになりたい、みたいバンドがすごく多かったんですよ。でも「〜みたいに」って言った時点でオリジナリティはないじゃないですか。そういうのに反発して、こういう異物が生まれたんです。
──「憧れてます!」って言われることは多くないですか?
卓球:いやあ、若い子にはわからないでしょう。ある程度責任を負うようになった人たちが、この責任のなさに憧れるんじゃないですかね。若い子は逆に、もっと責任を負いたいって思ってるんじゃないかな。
瀧:「ポジションを死守して、我慢したり捨てたりしてきたのに評価されない。でもあの人たちは何も捨ててなさそうでいいなあ」って思うのは大人だよね。若い子が「憧れてます!」と言ったところで、そういう子たちの表明って一時的なものだから。
卓球:10代でうちらに憧れてたらちょっと心配になるよね。危ない危ないって。

Credit


Text Neo Iida
Photography Yoko Kusano