Offset wears Louis Vuitton by Virgil Abloh. Chanel glasses. Photography Manuel Obadia.

「数字はウソをつかない」:ミーゴスのオフセットが語る、ソロアルバムの全貌

フロウについて、フォーカスしている点について、そしてアルバム名を誰にもいわない理由について。

by Christelle Oyiri; translated by Ai Nakayama
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19 February 2019, 10:41am

Offset wears Louis Vuitton by Virgil Abloh. Chanel glasses. Photography Manuel Obadia.

パリのお洒落なホテルのレストランに勢いよく入ってきたオフセットは、オールホワイトでキメていて、まばゆいばかりだった。Migosのメンバー3人のうち、まだソロアルバムをリリースしていないのは彼だけ。その待望のソロアルバムは今月リリース予定だが、いまだタイトルは発表されていない。「タイトルも内容も一気に全部知ってほしいから。だって、先にタイトルだけ発表しちゃったら、アルバムが与えるインパクトに関わるだろ」

オフセットが、初のソロアルバムをここまで厳格に管理しようとしているのは、この数カ月、彼の一挙手一投足が関心の対象となってきたからだろう。彼のパーソナルな生活について口を挟みたがる世間のために、彼は自身を犠牲にし続けてきた。Migosというパズルを完成させる最後のピースがオフセットだ。Migosについてはもはや説明不要だろう。「東方の三博士以来の最高のトリオ」「THE BEATLESを超えるグループ」、そんな最上級の賛辞も、アトランタ出身の3人のスーパースターたちにとっては日常茶飯事だ。

物議を醸す3人のフロウや「Hannah Montana」「Versace」の爆発的ヒットを理由に、Migosはかつて一発屋と見なされていた。その認識を一変させたのは、2017年頭に発表されたトラック「Culture」だ。当初聴き分けにくかったクエヴォ、テイクオフ、オフセットの声が、時を経て個性をまとうようになった。オフセットは、Migosの進化についてこう証言する。「たしかに俺らは、徐々にキャラ立ちしてきてると思う。でもこのソロアルバムの目的は、自分のフロウを磨くとか、自分自身のスタイルを確立させるためだけじゃなくて、俺のストーリーを語るため。だって、みんな俺のこと全然知らないから」

Offset Manuel Obadia
Offset wears Louis Vuitton par Virgil Abloh. Photography Manuel Obadia

──まずは簡単に、MIGOSの結成から教えてください。

クエヴォとテイクオフと俺は親戚なんだ。それまでラップしたこともなかった。俺のはじめてのラップ詞を書いてくれたのはクエヴォ。もともとは、ガチでラップをしてたわけじゃない。クエヴォも俺も、サッカーに夢中で。でも数年経って、ソニー・デジタル(808 Mafiaの有名プロデューサー)に出会った。彼が俺らをいろんなレーベルに紹介してくれたんだ。彼はそのときもうレーベルと契約してたから。でもとんとん拍子に進んだわけじゃない。大手レーベルには軒並み断られた。そういうレーベルにとって、俺たちはちょっと時代を先取りしすぎてたんだ。

──Migosと契約できるチャンスを逃すなんて、そのレーベルはほんとバカなことをしましたね。Migosがアトランタのシーンに登場したのは、アトランタがラップの新しい中心地となりつつあった時期でした。

(マネージャー兼Quality Control創業者の)コーチ・Kは、「アトランタはブラック・ハリウッドだ」っていつもいってる。俺たちがアトランタのシーンにデビューしたのも、グッチ・メイン、フューチャー、K・キャンプ、ピーウィー・ロングウェイとかがすでにいた時期だった。あの頃はマジでヤバかった。

ピーウィーがスタジオをもってたから、いっしょにレコーディングしたよ。みんなそこに集まってた。今ガンナと組んでいろいろやってるリル・ベイビーとか。あいつがまだラッパーになる前だね。アトランタラップにおけるピーウィーの功績はデカい。俺たちに、Quality Controlのもうひとりの創業者、P(ピエール・トーマス)を紹介してくれたのも彼だ。それでQuality Controlと契約して、彼らのおかげで俺たちのキャリアが始まった。

──でもそれも、Migosのフロウの魅力があったからでは?

うん、俺はみんなを率いていきたいと思ってる。みんなが俺らのフロウにめちゃくちゃ夢中になってくれててマジ最高。俺らの真似するラッパーが現れると、それに批判的なやつらは多かったけど、俺ら自身はむしろうれしかったね。自分のスタイルを真似されるのをすごい嫌がるラッパーもいるけど、俺はそういうタイプじゃない。いつかラップを始めるときには、俺らのフロウを使ってくれ、って感じ。大事なのは、自分のスタイルの出どころをちゃんと自覚すること。

──Migosの3人は、それぞれまったく違うスタイルを持っています。クエヴォはメロディックかつ感情的なラップ、テイクオフは尋常じゃないユーモアセンスが特徴だと思いますが、あなたが自分のスタイルを説明するとしたら?

速くて攻撃的ってとこかな。ほぼ歌わず、ライムやフロウを重要視する。基本的にダークでかなりナーバス。注意を傾けているのはビートだけ、って感じもするかも。でも俺は、とにかくラップっていう行為を前面に出したいって考えてる。たとえば俺のアルバムでは、オートチューンはあんまり使ってない。自分の長所ではないし。

──ソロアルバムのタイトルはまだ発表されていませんが、宣伝しないんですか?

もちろん、ソロアルバムは出す。でもタイトルは教えない。みんな、絶え間ない情報の波に溺れてる。それが今の時代。自分から何もしなくても、大量のコンテンツが手に入る。とにかくノンストップで流れ込んでくる。自分のアルバムはリリースしたいときにリリースしたい。それにタイトルには、もうすでに大量の情報が乗ってるから。発売前からあれこれ推測してほしくない。それが願望であれ意見であれ同じ。もう全部オッケーだと確信したいから、俺のタイミングで発表する。

Offset Manuel Obadia
Offset wears Louis Vuitton by Virgil Abloh. Photography Manuel Obadia

──かつてあなたは「大事なのは数字」と発言しています。作品そのものよりも、売上ばかりにフォーカスしている今のラップ業界を残念には思いませんか?

いや、まったく。数字はウソをつかないから。それにラップは競技だ。数字のおかげで、自分の位置付けを現実的に把握できる。数字を意識したら、夢見心地じゃいられない。話題になるのはリリース初週の売上ばかりだけど、俺が意識してるのはそうじゃない。たとえばポスト・マローンのアルバムは、発売当初は全然売れなかった。でも18カ月もチャートの首位にいた。つまり、彼の音楽はみんなの記憶のなかに刻まれてるってこと。そういう息の長い作品を目指してるんだ。

──かつてMigosは「Versace」や「Hannah Montana」を超えるヒットは生み出さない、と思われていました。でもその4年後、アルバム『Culture』であなたたちはシーンのトップへとのぼりつめます。

2014年から2016年の期間に、犯罪沙汰でいろいろとゴタゴタしたんだけど、そういうどん底の時期があった。2015年に俺たちが「Bitch Dab」をリリースしたら、みんながダブをやりだした(ダブを生みだしたのは俺たちじゃないけど)。でも俺たちは特にその恩恵にあずかれなかった。つらい時期だったけど、俺たちは自分たちなりに時間をかけて着実に進んできた。だからこそ今の俺たちがある。

──ドリップ(drip)やダブなど、Migosはいろんなギミックを流行らせた張本人ですが、あなたが定義する「ドリップ」とは?

アトランタの言葉で、めちゃくちゃヤバいスタイルをもってる、って意味。〈デザイナーブランドの服をたくさん持ってる〉って意味に誤解してるひともたくさんいるみたいだけど、「ドリップ」に高い服は必要ない。適切なアイテム、適切な姿勢、鋼のような確固たる自信、それだけ。俺のスタイルを説明するとしたら、〈お洒落〉かつ〈フューチャリスト〉。好きなのはChrome Hearts、Off-White、Louis Vuitton。ヴァージル・アブローはLouis Vuitton史上初となる黒人のクリエイティブディレクターに就任して、すでに歴史に名を刻んだと思う。尊敬してる。

──子どものころ、いろんなMVに出演したっていうのは本当ですか?

ほんと。ホイットニー・ヒューストンの「Whatchulookinat」とか、TLCのMVにも出た。最高の体験をしたよ。あんまり覚えてないんだけど。9歳とかそれくらいで、ホイットニー・ヒューストンがどれほどスゴイのかわかってなかった。彼女の冥福を祈るよ。俺はずっとショービズの世界にいるってわけ。

──ラップの世界を目指す若者たちにアドバイスをするとしたら?

いちばん大切なのは、とにかくつくり続けること。才能があればそりゃいい。でも何よりモノをいうのは、どれだけつくったか。次に大切なのは、周りに埋もれないこと。Migosみたいに、最初はうまくいってない気がしても、オリジナリティをもちつづけ、外部からのプレッシャーに負けないこと。

Offset Manuel Obadia
Offset wears Louis Vuitton by Virgil Abloh. Photography Manuel Obadia

Credit


Photography Manuel Obadia-Wills
Stylist Will Johnson
Stylist Assistant Ouss Thiam

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Cet article a été publié sur i-D FR.