マーク・ジェイコブスが蘇らせる90年代グランジの名作

スメルズ・ライク・ティーン・スピリットよ再び!

by Roisin Lanigan; translated by Ai Nakayama
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20 November 2018, 7:02am

Photography Juergen Teller 

誕生から20年以上の時を経て、グランジが帰ってきた。というよりも、90年代全体へのノスタルジーにZ世代が熱狂していると言ったほうが正しいだろう。Instagramにはロサンゼルスでパパラッチされた、トム・ウェイツTシャツ姿のウィノナ・ライダーの写真が頻出するし、Netflixの『サブリナ:ダーク・アドベンチャー』の衣装は、かつてのコートニー・ラヴを彷彿とさせるシックな〈キンダーホア(Kinderwhore: パンク、グランジ、ロリータを足して割ったようなファッション)〉スタイルだ。そしてMarc Jacobsが、2019年リゾートコレクションの〈REDUX GRUNGE〉でその流れに乗った。

遡ること1993年の春、マーク・ジェイコブスは、当時クリエイティブディレクターを務めていたPerry Ellisのコレクションで、グランジを高らかに宣言した。今回、REDUX GRUNGEとしてよみがえったのは、あまりにも有名なそのコレクションから選び抜かれた26ルック。25年前、グランジはハイファッション界では受け入れられず、マークのデザインしたこのPerry Ellisのコレクションは酷評された。80年代の過剰で豪奢なファッションを引きずっていた当時の業界には即さなかったのだ。そしてマークは解雇された。しかし25年経った今改めて振り返ってみれば、マンガをフィーチャーしたTシャツ、スリップドレス、ビーニーをケイト・モスとナオミ・キャンベルがまとう同コレクションは、時代を大きく先取っていたとしか思えないし、むしろ、あの時代をこれほど見事に表現していたコレクションはない。

Marc Jacobs Grunge Redux Juergen Teller

「皮肉っぽくてあまのじゃく。オリジナルコレクションのそのスピリットが全ての始まりです。そこから発展させていっただけです」とマークは『ELLE』のインタビューに語っている。「ニューヨークのセントマークス・プレイスでヴィンテージのフランネルシャツを2ドルで買って、それをシルクでつくり直したんです。平凡なモノ、庶民的なモノをベースに、それをハイファッション・クオリティへと高める。それは当時としても珍しいことではなかったし、別に、私たちが初めて行なったわけではありません。ですが皆、私のコレクションを不快に思い、『とにかくダメ。こんなのつくるべきじゃない』と譲らなかった。でも現代のファッション界ではもう当たり前ですよね」

Marc Jacobsのチームは、REDUX GRUNGEのために徹底的なリサーチを行なった。eBayでオリジナルアイテムを探したり、当時生産を担当していた工場にもコンタクトをとった。その努力が、ノスタルジーと現代性を絶妙に両立するコレクションへと結実した。当時のマーク・ジェイコブスが意図していたところを、完璧に実現している。多様なモノの混淆だ。「ファッションとは何か、ファッションは誰のものか、ファッションの現場とはどこか。そんな疑問が、私の頭のなかをぐるぐると駆け回っています。インターネットのおかげで、ファッションはもう手に負えない規模になってしまった」と先述のインタビューでマークは吐露した。「大事なのは、現在の世界で何が起こっているか、常にそれに敏感でいること。そして自らの品位を保とうと努力することです」

REDUX GRUNGEは、マークの疑問全てを解決してはくれないかもしれない。しかし、ファッションの現在、つまりストリートウェア全盛で、豪奢が潰えた今の空気に敏感であることは間違いない。「Balenciagaなんかは、ファッションセンターで若者が15ドルで買えるようなアイテムをリメイクして、2000ドルで売ってますからね」

「まさに『裸の王様』の理論です。ですが、ファッションっていうのはそういうものでしょう?」

This article originally appeared on i-D UK.