6 Inches To Heaven, 2020

ストリップクラブのファンタジーを捉える写真家エイドリアン・ラケル interview

エイドリアンが、地元で長年愛されるクラブを記録した豪華絢爛なシリーズ〈ONYX〉の舞台裏を語る。

by Ryan White
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19 August 2021, 1:00am

6 Inches To Heaven, 2020

究極の大人の娯楽を体験させてくれるトリップクラブ、〈Club Onyx〉。およそ1200平方メートルに及ぶ広大な店内で堪能できるのは、「ヒューストンが誇る」ダンサー、上質なリキュール、充実したメニューの数々。クラブのInstagramには、平日限定のドリンクや、夜明けのフロアを埋め尽くすドル紙幣の写真があふれている……。

エイドリアン・ラケルの写真は、これらに気づいてはいるものの、そこに焦点を当ててはいない。その代わりに、彼女が昨年取り組み、先月ニューヨークのFotografiskaで初公開されたプロジェクト〈ONYX〉がフォーカスするのは、初めて私たちの目前に明かされる、ストリップクラブの内側だ。フォトグラファーのクイル・レモンズは、エイドリアンのInstagramの展示発表の投稿にこうコメントした。「僕は準備万端! 僕たちをOnyxに連れてって」

エイドリアンは、この数ヶ月だけでも、トラヴィス・スコット、セレーナ・ゴメス、インディア・ムーアなど、そうそうたるビッグネームの雑誌カバーや、華やかなキャンペーンの撮影を担当している。その意味では、今回のプロジェクトは、彼女の普段の作品と一線を画しているといえるだろう。しかし、彼女が過去に手がけてきた見事なエディトリアルやセレブの撮影の、ささやかながらエレガントな細部へのこだわりは、この〈ONYX〉シリーズにも表れている。

「私の作品にとって、女性であることを祝福し、女性たちに自分は美しい、今の自分は最高、と感じてもらうことがすべて」と彼女は語る。「私の写真はファンタジーが根底にある。セクシーで、魅惑的で、ときに懐かしくドリーミー。それが作品に特別なオーラを与えているのだと思う。私が撮る女性たちは自信、艶やかさ、自己愛にあふれている」

 「〈ONYX〉を通して、女性の視点からダンサーたちを記録したかった。こういう場所ではなかなか珍しいことだと思う」と彼女は続ける。「この空間にあるのは道楽、権力、ミソジニー、お金ばかりじゃない。こういうクラブで働く女性たちはずっと軽んじられ、過小評価されてきた。でも私は、ここのステージに立つ女性たちこそがアーティストで、良い意味で注目を浴びるべきだと信じてる」

a woman with bright blue hair, fake lashes and glossy lips looks over her shoulder to camera
Blue Dream, 2020

オハイオ州クリーブランドで生まれたエイドリアンは、17歳のときにヒューストンに移住。現在はニューヨーク在住で、2018年、ヒューストンに戻って叔母の誕生日にこのクラブを訪れたとき、本プロジェクトのアイデアが浮かんだ。このクラブを訪れるのは初めてではなかったが、このときダンサーを見る新たな〈目〉が開いたという。「彼女たちが艶めかしく店内を駆け回り、男性たちやダンサー仲間と交流する姿に圧倒された」とエイドリアンは回想する。「私がフォトグラファーとして成功したら、絶対ここに戻ってきてパフォーマンスをする女性を撮ろう、って自分に誓ったの」

 ダンサーたちをとらえたおぼろげで光を抑えた写真は、ストリップクラブのありがちなイメージを凌駕する。ソランジュがヒューストンに捧げたラブレター『When I Get Home』のように、曖昧さのなかにきらびやかな雰囲気を醸し出す作品だ。Onyxのような場所はソランジュの楽曲にも登場しており、ポップカルチャーにおいては、女性視点のストリップクラブのイメージは、徐々にメインストリートに進出しつつある。例えば、FKAツイッグスのショートフィルム『We Are the Womxn』の舞台は、アトランタの歴史あるクラブ〈Blue Flame〉だ。フォトグラファー、ハジャール・ベンジーダの高い評価を受けたポートレートも、アトランタのクラブ〈Magic City〉で撮影された。さらにメインストリームの作品では、ジェニファー・ロペスとカーディ・Bが出演したローリーン・スカファリア監督の大ヒット作『ハスラーズ』(2019)がある。

これらの視点はもちろん重要だが、エイドリアンはストリップのイメージを現実から離れすぎないようにすることも大切だ、と指摘する。「Onyxは現実を生きる女性たちがいる、現実のクラブ」と彼女は強調する。

「音楽や映画で描かれがちなイメージや理想ほど、幻想的でも魅惑的でもない。何もかもが常に完璧とは限らない。毎晩、天井からお金が降ってくるわけでもなければ、エンターテイナーだからといっていつもお客を楽しませたいわけでもない。閑散としている夜もあれば、大繁盛で満席のこともある。このプロジェクトは、メディアで描写されがちなフィクションのイメージから離れ、現実を示すためのもの」

a woman with short hair and big hoop earrings looking at herself in a mirrored wall, under blue light
In Her Element, 2020
 

〈ONYX〉の撮影を始める前、エイドリアンはある静かな晩にクラブを訪れ、普段とは異なる雰囲気をじっくり味わったという。「クラブを案内してもらい、バックステージやDJブースに座って、ダンサーを観察し、クラブのエネルギーを感じてみた。このシリーズに登場するほとんどの女性たちにも自己紹介できた」「そこで出会ったのが、Onyxの女主人のタイソン。彼女はバックステージのあらゆることを管理し、監督してる。彼女は私がそこで女の子たちを撮影するのを、ほぼすべてオーケーしてくれた。最初は緊張したけれど、みんなが歓迎してくれているとわかって、すぐに安心できた。そこからは何もかもが順調に進んだ。撮影は毎晩8時から朝の4時まで。Onyxの何気ない、大切な瞬間を体験できた」このようなゆったりとした夜に、彼女は被写体の女性たちと一対一で対話した。「ロッカールームからステージまで、あらゆる場所についていった」

 彼女がこのシリーズから1枚選ぶとしたら、それはシリーズのバナー画像にもなっている〈Where Dreams Lie〉だ。「これはシリーズを通して登場しているキャリのポートレート」と彼女は説明する。「Onyxというクラブのエネルギーと魅力をよく表しているから、とても気に入ってる。ピンクに輝く〈Celebrities Room〉のネオンも、ポールをゆっくり滑り降りるキャリのポーズもね。まさにファンタジーそのもの、という感じ」幻想に満ちあふれたストリップクラブという場所を表すために〈Where Dreams Lie(夢が広がる場所)〉と名付けられた本作は、音楽、フラッシュ、金、権力、美しい女性たちを幻想として映し出す。

「ある意味、クラブとは夢やファンタジーが立ち現れ、支払う金額によってはそれが叶うかもしれない場所。でも、ここは夢が現実に帰る場所でもある」

‘ONYX’ is at Fotografiska New York 22 April - September 2021.

a woman with long hair on a pole, illuminated by a pink light that says 'CELEBRITIES ROOM'
Where Dreams Lie, 2020
a shot of a woman's nearly nude body from above, collecting dollar bills from the floor
Rain Dance, 2020
two bejewelled stiletto heals standing on a carpet of dollar bills
Final Fantasy, 2020
a black-and-white image of a a woman in underwear and large hoop earrings, sitting with her legs apart
Morena, 2020 ©
a woman wearing pink underwear and long pink nails holds onto a pole
Summer, 2020
a close up of a womans body sliding down a pole, under red lighting
Coming Down, 2020
a close up of a wad of dollar bills held by a person with red nail polish and fishnet tights
Cash Out, 2020

Credits


All images © Adrienne Raquel

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Culture