Photography Kouhei Iizuka

M A S U後藤愼平とPERIMETRON佐々木集が語る、少年性と創造性

M A S Uの初ファッションショーのディレクションを手がけたPERIMETRON、millennium paradeのメンバーである佐々木集と、デザイナーの後藤愼平がショーに込められたコンセプトから現在形のクリエイティビティについてまで語り合った。

by Tatsuya Yamaguchi
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08 April 2021, 5:30am

Photography Kouhei Iizuka

今回のショーは、いつだって立ち返ることのできる御守りのようなもの」と言って笑ったのは、7シーズン目でブランド初となるショーを終えたM A S U(エムエーエスユー)のデザイナー、後藤愼平だ。

「codes」と冠した2021AWコレクションは、彼が愛してやまないヴィンテージウェアをはじめ服飾史に潜む記号や物語、男らしさにまつわる固定観念を改めて疑問視し、浮き彫りになったいくつもの“コード”を、まるで少年がゲームに講じるように軽やかに組み合わせていくM A S Uのデザイン哲学を確かなものにしようとするシーズンとなった。

ショーの会場は六本木のレストランシアター「金魚」。男性、女性、ニューハーフの演者による立体構造の舞台装置を駆使した華美なショーでも知られるナイトスポットである。ゲストは高天井のステージと路地のようにわん曲したランウェイを観た。箱が持つ華やかな装飾性を作為的に取り除かれた、小劇場型のしつらえだった。

今回のショーディレクションを手がけたのは、クリエイティブレーベルPERIMETRONの佐々木集だ。ショーテーマは「Dear A Man Like You Were(I Was),」。まだ有象無象の決まりごとにとらわれていない純粋なマインドを、後藤のクリエーションから汲み取ったのだ。

i-Dは、ショーの冒頭で上映されたショートフィルムを独占公開するとともに、ブランドのファーストランウェイからしばらくの時間が経って再会を果たしたふたりに話を聞いた。

それぞれのフィールドで活動されるおふたりが手を組んだブランド初のショーでした。

後藤:たくさんの方に力があって実現できるのだと実感しましたね。今は、ショーの形式かは分かりませんが、集くんたちとパリに行きたいと強く思っています

佐々木:世界に行く時にチームで向かっていく姿勢が日本人として大切だなと思います。millennium paradeが“百鬼夜行”しているのも、団体がどこかに現れてパフォーマンスを行う移動式サーカスのような状態。バンドが単体でフェスに出ても実は持っている力の3割しか出せないと思うんですよ。総合芸術として出ていく必要があるんじゃないかと。

後藤:すごくわかる。ファッションデザイナーとしてパリに行きたいと思う一方で、海外のバイヤーが能動的に来日するくらいの強さを持たないといけないとも思っていますね。

佐々木:俺らみたいなチームやM A S Uのようなブランドが糸で繋がっていくと「日本が面白い」っていう感覚が芽生えていくんじゃないかと思うんです。海外から見るとアノニマスな集団でも、個々にフォーカスするとアイデンティティが強烈だという状況がめちゃくちゃ面白い。つまりスモールコレクティブが沢山ある状態。PERIMETRONもそうした同じ思想を持つ人と一緒にやりたいと思って始動したんですよ。

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初めに、フィジカルでのショー開催に慎重になる時節に、M A S Uがショーを決めた理由と佐々木さんにディレクションを依頼した経緯をお聞かせください。

後藤:セールス的に伸びてきた時に言葉にしがたいフラストレーションがあったんです。「男性像は?」と聞かれることが増えたこともそのひとつ。その回答をアウトプットする方法の選択肢がショーだったんです。海外に行けずにみんなが内側を向いているタイミングを利用して日本で僕たちなりの“熱狂”を作った後、海外に進出したかった。思い立ってヘアメイクのTAKAIさんに話をしたら「集とやっちゃいなよ」と言われたんです。ダメもとでもお願いした決定的な理由はPERIMETRONというクリエイティブチームが今、日本で“熱狂”を作ってきている人たちだから。もしかしたら人々が受け入れ難いものを認めさせるすごいエネルギーを持っている。彼らがどうやって人に届けているかに純粋に興味があったんです。

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佐々木さんはいわゆるファッションショーをディレクションすること自体は初めてですね。ショーディレクションはどのように構築されていったのですか?

佐々木:とにかく自分がファッションショーを知らなすぎたので、その枠組みを理解した上で表現を考えないとM A S Uにとっても良くないし、俺らもおままごとだと思われるのが癪だった。あくまでフレームの中で勝負したかったので、そのシュミレーションをしていたのが昨年末。そこから紆余曲折あり、いいアイデアが出ては消え……を繰り返しかなり悩みました。振り切って単純化して考えようとした時、ふと愼平ちゃんの顔が浮かんできたんです。そこで一緒に飯に行き、「なんで服を作り始めたのか」を尋ねると、おばあちゃん家のタンスにあった派手な服をあてがったりして遊んでいたと。すぐに「それを表現した方がいい」と思いましたね。形は違えど自分もそういう遊びをしていたし単純にエピソードに共感できたから。自分がクリエイティブなことが好きなルーツは“少年性”にあるんです。PERIMETRONのメンバーが共通して持っているものを、M A S Uのデザインをしている彼も持っていた。それで一番外側のフレームは“child's play”にしようと決めたんです。男性性の再定義と、子どもの遊びのつながりを考えると、10代に移行するまでの性差が曖昧な時期に、大人に導き出される答えによって“性別”が分けられていくような感覚がある。これも、M A S Uが表現したいことと合致するように思えたんです。

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メンズウェアの型を活かしながらも、メンズウェアではあまり用いられないが親近感のあるマテリアルを組み合わせてアップデートするのがM A S Uのデザインアプローチにあると思います。ショーをやるにあたってコレクション制作での変化はありましたか?

後藤:おっしゃる通りで、見たことあるけど見たことない。懐かしいけど新しい。コレクションを通して、誰かの血にすでに流れている“何か”に訴えかけることをやってきたという自負があります。ただ、今回はショーアップする必要が少なからずあって、今までのデザインのままだと弱いとは思っていました。実は最初ドレスを作ろうかと考えたんです。が、それは僕じゃないとすぐに気づいた。今までのテンションを残しながらどこまで強くできるかというゲームをしていた感覚ですね。僕が一貫して大事にしていきたいことは、物事をフラットな目線で見ること。男らしさもそのひとつですし、仮にM A S Uの服が何十年後かにどこかのビンテージショップのラックに掛かっている時に自分がそれをワクワクしながらピックアップするか。数十年後に誰かの手に渡り得るようなデザインかどうか。そういう基準が、立ち返る場所になっている。カッコつけて言うと“時間”をデザインする気持ちでやっているんです。

デザイナーを志すきっかけだという、ビンテージウェアに魅了された最初の経験とも深く関わっていそうですね。

佐々木:たしかにそれを聞くと、"Dear A Man Like You were(I was)"というのは、ショーを観る人々に向けてだけではなく、幼少期の頃よりも青年期に突入していた愼平ちゃん自身に対しての姿勢とも取れますね。

後藤:集くんは、僕よりも僕のことを見抜いてくれる。全部、汲み取ってくれますね(笑)。

佐々木:本当に潜ったからね。奥さんよりも愼平ちゃんのこと考えていたかもしれない(笑)。

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最後に伺いたいことがあります。先の読めない時節で、表現をすること、クリエイションしていくことに対してお二人のお考えやアティチュードをお聞かせください。 

後藤:比喩的ですが、大きい川の流れがあるとして、目まぐるしく変わっていく世の中で溺れてしまう人がいると思うんです。ファッションの文脈で言うと、去年までは良しとされていたのに次の年にはダサくなっているというのも“流れ”だと思うんです。僕はその川から脇道に逸れた、せせらぐ川のような存在でいたい。新しいことではなく、洋服を通して寄り添える存在になれたらいい。その川が大きくなれたらそれも良いですしね。

佐々木:以前よりネガティブな表現を抑えようとか、誰かしらが暗くなるような表現を排除したものを作ろうかなと考えたりはします。苦闘しながら生きている人がいる今の時代の中で、皮肉ったような表現を入れたところで単純に人を傷つける、悩みを増やすような結果になる。今はそういうことを封じたものづくりをしている段階です。それ以外でコロナ以前以後で変わったという認識はないんですが、時代性を読むんじゃなくて、読み切れないんだったら思いのままに行動しようっていうのが今のタームなのかなと思っています。ただ、いたって地に足はついている気がする。アグレッシブだけど、どうやって楽しもうかなってくらいの感覚ですね。

後藤:今の状況を本当にポジティブに捉えているんだね。クリエーションはバブリーな時よりも本質的な方向にいっているんじゃないかと思っています。この時代に生まれたものが、後に残る可能性はとても高いとさえ思う。M A S Uも、その一つになれるように頑張りたいですね。

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