All photography Lotte Van Raalte

女性の身体の理想をくつがえす写真家ロッテ・ヴァン・ラールテ「挑発的ではなく、パワフルな写真を」

13歳から94歳まで女性46人を撮影していくなかで、アムステルダムの写真家ロッテ・ヴァン・ラールテは傷跡、ほくろ、しわ、しみがどれも女性の身体の美しさをつくりあげる要素だと気づいた。

by Rolien Zonneveld; translated by Nozomi Otaki
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11 March 2020, 10:11am

All photography Lotte Van Raalte

アムステルダム出身の30歳の写真家、ロッテ・ヴァン・ラールテは、撮影中、プロデューサーの顔に浮かぶそばかすの美しさに魅了された瞬間をはっきり覚えている。彼女はそれをもっと近くで写真に収めたい、という衝動に駆られた。当時の彼女は知るよしもなかったが、この瞬間こそが、1年以上にわたって女性の身体と肌をあらゆる面から捉える、彼女の大規模なプロジェクトの始まりとなる。

本プロジェクトを通して、彼女は身体のすじ、傷跡、ほくろ、しわ、しみがすべて女性の身体の美しさをつくりあげる要素であることに気づいた。彼女が16ヶ月で撮影した被写体は、初対面のひとびとや友人、家族を含めた13歳から94歳までの46人の女性たち。2020年1月半ばにはアムステルダムで個展を開き、これらの印象深い作品を展示するとともに、初の写真集『BODY』を発売した。

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i-Dは数年前からロッテの活動を追ってきた。鮮やかでカラフルな作品で知られる彼女は、Arket、Stella McCartney、adidasなどのキャンペーンを手がけながらキャリアを築いてきた。カメラをまっすぐ見つめるモデルを撮るのではなく、彼女は被写体のふとした瞬間の何気ない仕草やありのままの姿を捉える。たとえば、太陽の光に目を細め、鼻にシワを寄せるモデルや、歯の隙間を見せながらカメラに向かって笑みを浮かべる姿だ。

フォトグラファーとしての道を歩み始めたとき、ロッテは自分自身が求める美しさが、必ずしもモデル事務所の提案と合致するわけではないことに気づいた。そこで彼女は素人を被写体に、時にはキャスティングディレクターの友人の手を借りながら、自らのファッションフォトを一新するような、型破りなルックを生み出す審美眼を養っていった。

ロッテは見事な構図の写真や美しいポートレイトを自身のInstagramに投稿し、作品を通して出会った多様性を讃えるようになった。そして2019年、彼女は予想外のハプニングに見舞われる。複数のユーザーから〈わいせつなコンテンツ〉として通報されたことで、彼女のアカウントが運営側によってシャドウバンされたのだ。

しかし、彼女が投稿した〈わいせつな〉コンテンツとは、ウエストの曲線や背中のほくろ、中年女性の日に焼けた谷間のクローズアップ写真に過ぎない。

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「この出来事がきっかけでInstagramに不満を持ちました。これは明らかに女性の身体への非難ですし、Instagramのポリシーに一貫性があるようにも思えません。たとえばPornhubのページには下着姿の女性たちが並んでいるのに、このサイトは私みたいな規制は受けません。私が撮る女性の身体の写真は、それとはまったく違ってセクシュアルな意味合いは一切ない。それなのに通報されたんです」

これらの写真を1冊の本にまとめ、ギャラリースペースに展示することで、彼女はネット上の監視から作品を守ることができた。

『BODY』は、長らく一面的な理想美に支配されてきた業界に異を唱えるだけでない。それ以上に重要なのは、本作を目にする私たちに、女性の身体にまつわる考えを見直すきっかけを与えていることだ。私たちは実際の身体、その色やかたち、曲線や質感に、どう反応するのか? 身体が老化するという現実、私たちはいつも自分の身体を前向きに捉えられるわけではないという現実に、どう向き合うのか?

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「女性たちを撮影するなかで、彼女たちが恥ずかしさから解放されていくことに気づきました。みんな自分の身体に満足できるようになるんです」とロッテは説明する。「私は生々しい質感がありながら、それでいて美しい写真を撮りたかった。挑発的ではなく、パワフルな写真を」

「このプロジェクトがコラボレーションであることも重要なんです。女性たちがどんなふうに撮られたいのか、しっかり耳を傾けたかった。撮影のあと、この撮影によって自分の身体の見方が変わった、と数え切れないほどのメッセージをもらいました」

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写真集によってこのプロジェクトは幕を閉じるのか? これが彼女のキャリアにおける集大成になるのだろうか?

彼女はこう答えた。「この世界に身体はまだたくさんあります。私自身の身体が私についてこられなくなるまで、このプロジェクトは続けますよ」

『BODY』の購入はこちらから。

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This article originally appeared on i-D UK.

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