コロナ禍の「デジタル・クラブ」体験記

ロックダウン中の街で、オンラインパーティーを開催するイベントが人びとの一体感を生み出している。

by James Greig; translated by Nozomi Otaki
|
20 May 2020, 3:00am

via @clubquarantine

取るに足らないことに思えるかもしれないが、私がコロナ禍以前の平和な時代でいちばん恋しいのは、クラブでの体験だ。

熱、汗、密着、見知らぬ客からペットボトルの水をもらい、喜んで彼らの唾液を飲み下す……。今となっては考えられないことだ。ロックダウンが始まってはや1ヶ月、クラブから早めに帰った夜を思い出しては、「なんてもったいないことを」とひたすら後悔している。

この悲しみは私だけのものではない。クラブは単なる娯楽ではなく、多くの人びと、とりわけクィアコミュニティにとって、大切な息抜きでもある。ありがたいことに、多くのDJやプロモーターが、今の制限された世界で、どうにかしてクラブ体験を再現しようと努力してくれている。

3月末、私はこのトレンドの絶対的なリーダー〈Club Quarantine〉のオンラインパーティーをチェックした。トロントを拠点とするこのグループを立ち上げたのは、同市に住む4人のクィア。コメディアン/プロデューサーのブラッド・アレン(Brad Allen)、デジタルクリエイターのミンガス・ニュー(Mingus New)、DJ/ミュージシャンのケイシーMQ(Casey MQ)、レコーディングアーティストのアンドレス・シエラ(Andrés Sierra)だ。彼らのパーティーは、ロックダウン中で暇を持て余した世界中のクィアに快楽主義の名残を提供している。

すでにチャーリーXCXティナーシェキム・ペトラスなども参加し、Club Quarantineは世界現象になったといっても過言ではないだろう。のちにストレートのコミュニティにも受け継がれたマッチングアプリや出会い系アプリを先駆けたり、SNSで強力な存在感を誇るなど、LGBT+コミュニティは常にインターネットカルチャーの発展を牽引してきた。

それを踏まえれば、クィアの人びとがコロナ禍におけるナイトライフをリードしているのは当然だろう。しかし、オンラインパーティーは確かに名案かもしれないが、本当に楽しいのだろうか?

Club Quarantineは、企業のミーティングや在宅勤務のために開発されたビデオチャットアプリ、Zoomでライブ配信をしている。よりお手軽なHousepartyと違い、Zoomのインターフェース自体は事務的でよそよそしく、退廃的で無秩序なナイトライフには適さないように思える。

ログインすると、まずスクリーン上部の小さな四角いウィンドウに自分の顔が、そしてグリッドをクリックすると参加者全員が画面に表示される。メインスクリーンにはランダムに選ばれたDJや参加者が入れ替わり立ち替わり現れる。突然他人に顔を見られると自分がさらけ出されているような気もしなくもないが、実際はそこまで悪くない。

私自身は、画面に映ると思うだけでエネルギーが高まった。それがYouTubeでストリーミングやBoiler Room(※英国を拠点とするライブストリーミングチャンネル)のDJプレイを観ることとの主な違いだろう。ひとりで踊っていても、配信を流しているときほど間抜けな感じはしない。

それはオンラインのオーディエンスの注目を集めたいというナルシスト的な欲望を刺激されるからかもしれないし、みんなと同じ音楽で踊ることで、ほんのわずかでも一体感が感じられるからかもしれない。

「初めてQueer House Party(※Club Quarantineと似たオンラインパーティー)に参加するときは、きっとすごく不自然な感じで、ひとりでリビングでテレビを観るのと同じなんだろうと思っていました。でも、実際に参加してみると、すごく面白くて楽しい夜でした」と語るのは、トランスの若者のための慈善団体〈Gendered Intelligence〉で働くカーラ・イングリッシュだ。

彼女はこのようなオンラインパーティーが始まった当初から夢中になったという。「すごくびっくりしました」と彼女は回想する。「友人のルームメイトもこのパーティーに〈出席〉してたんですが、彼も数週間ぶりに誰かと会うことにいちばん近い体験をした、まるで本当にクラブにいるみたいだ、と言っていました。実際のパーティーと全く同じとはいきませんが、いろんな意味で現実のパーティーよりもいいと思います。酔っ払いにイライラさせられることもないし、近くでタバコを吸われることもないので」

クィアのクラブにとってもっとも重要なのは、その場が与えてくれる一体感や、自分と似たような人びとと交流するチャンスだ。ではオンラインではどうなのか、と思うかもしれないが、実際はかなりうまくいっている。参加者同士なら自由にメッセージを送れるし、グループチャットもある。そこは「ここを見つけられて良かった」「ずっと寂しかった」といったメッセージや、トランスの権利を肯定する言葉に溢れていて、私自身もここにログインする前に陥っていた冷笑的な態度を捨て去ろう、と思わされた。

誰かとイチャついてもいいし、理論上は誰かと出会って恋に落ちることも可能だ。それがクラブ遊びの醍醐味である〈何が起こるかわからない〉雰囲気を生み出している。

とはいえ、私が送ったメッセージは「ウェーイ!」とか「この曲ヤバい!」とか「このDJの名前わかる人いる?」というようなものばかりだ。確かに、ここは世界の感染率を示す経済紙のグラフについて詳細に分析するフォーラムではないかもしれないが、そもそもクラブにそれほど深い議論は必要ない。

他の有名クィアクラブと同様、Club Quarantineの参加者も個性豊かで、クラブを利用する目的は人それぞれだ。ゴールドラメのホットパンツなど派手な衣装でトップレスで踊るひともいれば、何をするでもなくデスクチェアに座ってくるくる回っているひともいる。白い粉を吸うひとも、紅茶をすするひともいた。

私はこういうプラットフォームではデジタルフラッシング(※ネット上で性器を露出する行為)は避けては通れないと予想していたが、意外にも性器をさらけ出すひとはいなかった。

友人といっしょの参加者もいて、オンラインではない、現実世界での楽しみを満喫する様子に、孤独を紛らわせられるよりただただ羨ましくなった。オンラインパーティーでの問題点は、実際にその場にいる誰かといっしょに参加するほうがずっと楽しそうに見えるということだ。

もちろん、それではソーシャル・ディスタンシングにおける孤独の根本的な解決にはならない。ただ、私はこのようなパーティーが毎晩開催されているという事実に慰められた。

パンデミックという状況下ではなくても、金欠で外出できない土曜日などには最高のイベントだ。さらに、身体が不自由な人びとも参加できる点もすばらしい。パンデミックが終息したあとも、Club QuarantineやQueer House Partyなどのグループには、ぜひこのような取り組みを続けてほしい。

Club Quarantineの成功に続き、著名なクィアのプロモーターたちもZoomでのイベント開催を検討している。サウスロンドンのクィアイベント〈Suga Rush〉の共同ファウンダーであるハンナ・ウィリアムズも、現在同イベントのオンライン版を企画中だ。「この企画を始めようと思った理由はふたつあります」と彼女は説明する。

「まずは、私たちが昔から利用している会場〈The Chateau〉のアーティストと従業員のために救済基金を募ること。今は失業者や雇用が不安定な人びとにとって大変な時期なので。次に、今こそちょっとバカげた、キュートで楽しい催しが必要だと思ったから。Twitterをスクロールして数時間前の恐ろしいニュース記事を読むより、どうせなら面白いことをしたほうがいいでしょう。それに、みんながまたドレスアップしたり、セクシーな格好をする口実を欲しがってると思うんです」

経験豊富なプロモーターにとっても、オンラインでクラブナイトを企画するのは全く新しい試みだ。「小さなクィアクラブには、みんながお互いに無頓着でただそこにいる、という独特の雰囲気があります」とハンナは語る。

「それがクラブでの相互理解を生み出しているんです。(オンラインイベントでは)そんな雰囲気を再現できなんじゃないか、という不安はありますし、きっとそういう空気を恋しがることになると思います。自分はバカみたいに見えるんじゃないか、とか、誰も参加してくれなかったらどうしよう、と不安になるし、ちゃんと音楽がかからなかったり、ラップトップが動かなくなってしまうのも怖い。でも、それも全部学びのステップですよね」

〈Gendered Intelligence〉のカーラも、オンラインで従来のクラブ体験を完全に再現するのは難しい、と吐露する。「汗、耳をつんざくようなリバーブ、煙の中で知らないひとと交わす何気ない会話や帰り道のファラフェルが恋しくなることもあるでしょう」

「イベントが終われば、私たちはリビングに取り残される。それでこう思うんです。『確かにこれは便利だけど、夜中のバスでのドラマはどこ?』って」

オンラインでのクラブ体験はスクリーンショットで見るとかなり不審で寂しげかもしれないが、その場で感じられるエネルギーは、静止画には映らない。どのウィンドウに映る参加者も活気に満ちている。それに、本物から得られる満足感とは程遠い、と文句を言ったところで何になるのだろう。むしろ、本当にその反対を期待していたひとなんているのだろうか。

Housepartyが本物のハウスパーティほど面白くないように、Zoomでのクィアクラブナイトも実際のクラブほど楽しいとはいえない。しかし、これは今の私たちができる最大限の試みであり、そうした試みはいつだって評価されるべきなのだ。

This article originally appeared on i-D UK.

Tagged:
LGBT+
Nightlife
Clubbing
Coronavirus
queer nightlife
clubbing isn't dead
club quarantine