ひとつの宇宙:lacoste ルイーズ・トロッター interview

LACOSTEのブランド史上初の女性クリエイティブ・ディレクターに就任した、ルイーズ・トロッター。パリコレで発表したファーストコレクションのことなど、NYで開催された「LACOSTE×KIETH HARING」のローンチパーティに出席していた彼女にインタビューを実施。

by Kaeko Shabana
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09 April 2019, 10:00am

昨年、LACOSTEのクリエイティブ・ディレクターに就任したイギリス人デザイナー、ルイーズ・トロッター。2019年3月に開催された、ウィメンズの2019AWパリ・ファッションウィークでファーストコレクションを発表した。コンテンポラリーに生まれ変わった新生LACOSTEは、ルイーズの“洗練”という魔法にかかり、今後が期待されるファッションハウスとして、パリコレのフロントラインに躍り出た。今回、LACOSTE にファッションの光りをもたらした彼女に、ファーストコレクションについて、そして今後のLACOSTE について話しを訊いた。

先日、東京で行われた日本のローンチが記憶に新しい、「LACOSTE×KIETH HARING」のグローバルローンチ・パーティがNYでも開催された。パリから祝福に駆けつけたルイーズに会ったのは、ブルックリンのThe William Vale Hotel。LACOSTEのブラックのブレザーに、マキシ丈のプリーツスカート、そしてLACOSTEの頭文字「L」の幾何学模様がプリントされたハイネックトップを身にまとっていた。現在、彼女は日本人の夫と、3人の子どもの家族5人でパリを拠点に生活している。CALVIN KLEIN、TOMMY HILFIGER、 JIGSAW、JOSEPHでヘッド・デザイナー、クリエイティブ・ディレクターを務めていたという経歴のほか、彼女自身のことはまだまだヴェールに包まれている。

イギリスの北部で生まれ育ったルイーズは、幼いころから服作りに興味をもっていた。そのきっかけとなったのが、彼女の祖母だった。裁縫師だった祖母に奨められて、子どものころから人形の服を作っていたという。「週末はいつも祖母の家で過ごしていたんですが、ある日、カーテンを切って服を作っていいと言ってくれました。トップを作ろうと思い、カーテンを真四角に切って、首を通すところを丸く切り、ケープのように頭から被りました。この瞬間に、将来は服をつくる人になりたい! とインスパイアされたのを鮮明に覚えています。とても決定的な瞬間でした」と、デザイナーを志したきっかけを語ってくれた。しかし、彼女の故郷では“デザイナー”という職業が一般的なものではなかったため、周囲の人たちはなかなか理解を示してくれなかった。「数学が得意だったから、両親は私が会計士になることを望んでいた。でも、服を作りたくて、まずはアートを学び、そしてファッションデザインを学ぶことにしました。」こうしてルイーズは、ノーザンブリア大学でマーケティングとデザインを学び、ファッションの道へ進んだ。

幼少期に、そこまで彼女を魅了した服作り。ルイーズに、ファッションが楽しいと、心から思わせるその魅力とはいったい何だろうか? 「洋服を通して、何かに変身できるということ」とゆっくり、そして明確に彼女は答える。「若いころは、音楽に刺激を受けていました。音楽と人びとの服装の関係性は、実に興味深い。イギリスには強いユース・カルチャーが存在し、音楽は切っても切り離せないもの。音楽を通してユース・カルチャーの一部になれば、あるギャングやグループの一員になる。だから、ファッションの楽しさは、服で何かに変身できるということ、そしてその何かに属することができることです」


彼女のスタイルを3ワードで表すと、「ミニマル(minimal)、大人っぽさ(adultness)、気楽さ(ease)」。ファーストコレクションもまさにその通りだった。なかでも、彼女は“気楽さ”を大切にしているという。その理由は、人はくつろいでいるとき、最も魅力的だから。「コレクションにテーマを設けることはしません。私は、洋服の着こなしや、人生にインスパイアされるんです。ファーストコレクションは、LACOSTEの価値を復活させたかった。そして、ブランドの創設者である、ルネ・ラコステの研究です。」ルネへのオマージュはありきたりだから、ファーストコレクションでは彼を“研究”したという。「ルネが今日、生きていたら、どんな服を着るだろう? というところから発展させて、コレクションは今日の彼のワードローブをデザインしました」


1920年代のフランスを代表するテニスプレイヤーだった彼は、若くして結核を患い、25歳で選手生命に幕を閉じた。そして、自身のプレイスタイルが由来となった愛称“クロコダイル”をロゴに起用してスポーツブランドをスタートした。「とにかくアーカイブを解釈することに努めました。コレクションを通してハイネックを使用しているのは、ルネが生涯ずっとハイネックを着ていたからです。彼は病気を患っていたため、いつも首を覆っていました。レイヤリングを多用しているのは、気候変動に合わせてレイヤードするのが今の人たちの着こなしだからです」と、フードや襟が取り外すことができるなど、時代に沿った実用性もデザインに含まれていると語る。


コレクションを見て印象的だったのが、脱構築されたクロコダイルのロゴ。ビッグサイズのクロコダイルの刺繍から、長い糸が垂れているデザインだ。「LACOSTEはエレガントなブランドであり、ストリートなブランドでもあります。ルネ自身もエレガントな男性で、エレガントな人生を送りました。初期のクロコダイルはすべて手刺繍で、アーカイブを見たときに、このアルチザンの要素を復活させたいと思ったんです。このロゴの価値を再認識させたかった。アート作品のように、貴重なものだと」と話す。

彼女に会って最初に目についたのも、テーブルの上に置かれた“ワニ”のレザーのアイテム。「このクロコダイルは何ですか?」と尋ねると、「今回のコレクションのファーストルックで持っていたバッグよ」と、ルイーズは答えた。彼女はブランドの象徴であるクロコダイルを、ポップなイメージから、より芸術性が高いものへと昇華させたのだ。


86年における、ブランド史上初の女性デザイナーであるルイーズ。最後に、歴史あるフランスのファッションハウスでの今後の展望について聞いてみた。「LACOSTEという、ひとつの宇宙(one universe)を作り上げたい。このブランドはさまざまな世代の、さまざまな人たちが対象となっています。とても包含的なブランドで、特定の人に向けたエクスクルーシブなブランドではありません。ブルジョワの要素もあれば、ストリートの要素もある。そしてもちろん、スポーツも。それをひとつに融合させたい。メンズ、ウィメンズ、キッズ、スポーツのすべてが存在する、ひとつの宇宙です。そうすれば、それぞれ異なっていても、みんなLACOSTEの一部になれますよね」と話してくれた。


インタビュー後、ブルックリンのレッドフックにあるアートセンター、Pioneer Worksで「LACOSTE×KIETH HARING」のローンチパーティが開催された。会場には、ラッパーのA$AP Nastや俳優のAshton Sanders、モデルのDaphne Groeneveldなど、多くの著名人が揃った。そして、Va$htie KolaによるDJ、NYC Hit Squadと、パリから駆けつけたSalif Lasourceによるダンスパフォーマンスで会場を盛り上げ、「LACOSTE×KIETH HARING」コレクションのローンチを祝福した。

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NYC Hit Squad
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Ashton Sanders & Va$htie Kola

「LACOSTE×KIETH HARING」コレクションのお披露目のほか、イベントの主役となったのが、キース・ヘリングの幻の作品「Boys Club Mural(1987)」のインスタレーションだ。この作品は1987年に、当時NYCのLESのピット・ストリートにあった青少年コミュニティ施設、The Boy’s Club of New Yorkのコンクリート壁一面にキースが描いたもの。しかし、2007年に施設の取り壊しが決定した際に壁画は撤去され、パブリックから姿を消した。今春、12年ぶりに、LACOSTEとキース・ヘリング財団の協力のもと、本イベントを機に2019年5月12日(日)まで、Pioneer Worksで公開されている。もしNYに行く機会があれば、キース・ヘリングのオプティミスティクでパワフルなこの作品を見に、Pioneer Worksに足を運んでほしい。

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「Boys Club Mural(1987)」at Pioneer Works, Brooklyn




「LACOSTE × KEITH HARING」
販売期間:2019年3月28日(木)〜4月中旬
販売店舗:LACOSTE銀座店など全国の直営店舗(一部を除く)と
公式オンラインストア
※期間限定でKEITH HARING Special Update@LACOSTE Shibuya実施中。


LACOSTE
www.lacoste.jp



Credits


Photographs Courtesy of Louise Trotter (collection photos & René Lacoste portrait) & Suzanne Knoller (photo of the look 1 detail)
New York Event Photos Courtesy of Lacoste, Neal Rasmus and Max Lakner /BFA.com
Interview & Text Kaeko Shabana

SPONSORED BY Lacoste