Alaina Waller and Erik Pascarelli, via Instagram

ビューティ系ASMRの新たなトレンド「プロセス・ポルノ」とは? #processporn

「大事なのは結果じゃなくて、その体験でした」

by Shannon Peter; translated by Ai Nakayama
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04 mars 2019, 8:38am

Alaina Waller and Erik Pascarelli, via Instagram

昨今流行りのASMR現象において、ビューティ業界はなかなかの存在感を放っている。ニキビ潰し口紅クラッシャーヘアブラシの毛部分をひっかく音。ささやき声が快感をもたらす、メイクのチュートリアル動画。不快なのにやみつきになってしまう、頭のフケの除去動画……。ビューティ系の商品や行為は、感覚に訴える魅力があり、その結果、この奇妙に気持ちいいASMRの世界で幅を利かせている。ニキビ潰し動画が大好きな私は、最近、新たな快感を与えてくれるSNS投稿を発見した。髪染めフォトだ。

市販の髪染めキットのパッケージ写真じゃない。カラフルでぬるぬるしたカラー剤に浸かった髪の写真だ。最近、Instagramでよく公開されている。たとえばこちら。

〈#processporn (プロセス・ポルノ)〉とも呼ばれるこの写真は、カラーの施術をする美容師たちが、自分の施術のプロセスをシェアする方法として広まっている。LAを拠点とする美容師アレイナ・ウォーラーは、およそ2年前から髪染めプロセスの写真をシェアしはじめ、今やビジュアルムードの表現が彼女の髪染めフォトの第一義になっている。彼女が撮るのは、ラファエル前派を想起させるブリーチや、大胆不敵なパワーを有する蛍光ピンクのカラーリング写真。「これらの写真は、お客さまがカラーリングの瞬間にまとう空気を、より的確に表現していると思うんです」とアレイナ。「このときの色には、反抗的で不機嫌なムードがある。それはしっかりカラー剤が入り込んで、髪を乾かしてスタイリングしたあとにはみられません。髪が濡れていたら、質感もかなり違います」

Bleach Londonのカラーリスト、エリック・パスカレッリにとって、アートのバックグラウンドとヘアの仕事を結びつける役割を果たすのが#processpornの写真だ。「僕の描く絵で重要なのは、最終的な完成品じゃなくて、作品の過程。だからそれを髪に取り入れることは、すごく自然だった」と彼は説明する。「完成したルックがいちばん大事なのは当然。でも写真を撮るときには、出来上がった髪型じゃなくて、奇妙なシンクの写真やクローズアップの写真のほうが刺激的。僕にとっては絵を描くのと同じ。キャンバスよりも、絵具で覆われたパレットのほうが目を惹く」

どうして髪染めフォトが快感を与えるのか、その具体的な理由を指摘するのは、専門家でも難しい。「これらの写真でASMR状態に陥るひともいますが、これらの写真には、通常ASMRを引き起こすとさせるささやき声や、近距離でなされる他者からのケアなどは関わっていません」と説明するのは、心理学者でASMRの専門家、ジュリア・ポエリオ博士。「おそらく均整美、かたち、色など、その他の美的要素から満足感が生まれているのだろうと思います」。#processpornの写真は、快と不快が完璧に融合している。カラフルな色味は視覚を悦ばせるが、被写体の顔が見えない状態で濡れた髪をみるのは気持ち悪い。しかし、だからこそここまでの満足感を引き起こすのだ。

パスカレッリは、人間の〈教えを得る歓び〉が髪染めフォトの人気につながっていると考えている。「僕たちは学びの世代。YouTubeにはさまざまなハウツー動画があがっていて、すべてのものの仕組みを知りたい、という意識は高まっている。プロセスを収めた写真や動画が、知識欲を満たしてくれるんじゃないかな」

ウォーラーにとって髪染めフォトとは、完璧にキュレートされたSNSのフィードにおける、リアルな経験の記録だ。「みんな、リアルなものをみて、感じたがってるんです。私はこれらの写真を撮るたびに15歳の自分を思い出します。バスルームでSavonのカラー剤を使って髪を染めていたあのころ。あちこち汚しながら、でも自分らしさを出したくて。そんな時期もあったんです。あのころの私にとって、大事なのは結果じゃなくて、その体験でした」

そう、写真が何を表していようと関係ない。私は髪染めフォトが好きだ。

This article originally appeared on i-D UK.