Photography Vicki King. Styling Victoria Young. Coat Vintage Kool Kats Ltd. Dress Coach 1941. 

『セックス・エデュケーション』メイヴ役に大抜擢:エマ・マッキー interview

Netflixで配信中のドラマ『セックス・エデュケーション』のメイヴ役に大抜擢された、フランス生まれの俳優エマ・マッキー。彼女が、バッドガールのお手本のような自身の役について、ベッドシーンの振り付けについて、配信直後に製作が決定したシーズン2について語る。

by Matthew Whitehouse; translated by Nozomi Otaki
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30 May 2019, 5:21am

Photography Vicki King. Styling Victoria Young. Coat Vintage Kool Kats Ltd. Dress Coach 1941. 

ほぼ無名の俳優だったエマ・マッキーは、世界1億3000万人が視聴するプラットフォームの作品に出演し、わずか1週間でスターの仲間入りを果たした。その作品とは『セックス・エデュケーション』。今年1月、ストリーミング配信大手のNetflixで配信を開始したコメディドラマだ。

主人公は、名優ジリアン・アンダーソン演じるセックスセラピスト、ジーンを母にもつ十代の少年、オーティス(エイサ・バターフィールド)。同じく英国の高校生活を描いた大ヒットドラマ『Skins - スキンズ』(2007)と同様に、『セックス・エデュケーション』も、青春時代をドラマティックかつ真摯に描いている。

また本作は、『Skins - スキンズ』のように各キャラクターの背景を掘り下げることで、彼らの個性をよりいっそう際立たせている。エマが本作で演じた主要女性キャラクター、メイヴ・ワイリーも、彼女のブレイクのきっかけとなった魅力溢れる人物だ。

メイヴは、ジョン・ヒューズ映画に登場するバッドガールのお手本のような少女だ。家賃を滞納しながらトレーラーハウスでひとり暮らしをする彼女は、そのハードなルックスの下に抜群の知性を秘めており、学校の廃墟となったトイレで課題の代筆サービスをしている。ある日、オーティスの豊富な性の知識(ときには呪いにもなる)に気づいたメイヴは、それを活かして性の悩みを抱える学生に向けたセックスセラピーを始めよう、と彼に持ちかける。

「私が好きなのは、メイヴのしっかり自分をもっていて、誰にも頼らないところ。彼女は最後までひとりで耐え抜こうとします」とエマは、本作の撮影が行われたウェールズのワイバリーから遠く離れたハックニーの写真スタジオで明言する。「みんなからはタフだと思われているけど、メイヴはどんなに辛いときも思いやりを忘れず、他人を優先することができる。実は心優しい子で、バッドガールのイメージは見かけだけなんです」

Emma Mackay Photography Vicki King Styling Victoria Young
Jumper Coach 1941. Trousers vintage from Kool Kats Ltd. Boots Sergio Rossi.

意外にも、メイヴは彼女が初めて演じた大役だ。彼女はこの大抜擢を「信じられなくて、ワクワクすると同時に戸惑いも感じた」という。フランス人の父と英国人の母のもと、フランスのル・マンに生まれたエマは、17歳までサブレ・シュル・サルトで過ごしたあと、英国に引っ越しリーズ大学で英語と英文学を学ぶ。そこで演劇に目覚めた彼女は、数本の作品への出演、演出を経て、卒業前日にロンドンの演劇学校に入学することを決める。翌年にはエージェントと契約し、その半年後に『セックス・エデュケーション』出演を果たす。

「オーディション期間中はまったく実感が湧かなかった」とエマは打ち明ける。「台本の読み合わせをした日も、メイヴ役は私しかいなかったけれど、自分にチャンスがあるとは思えなかった。あのNetflixの番組だからきっと実績のあるひとが選ばれるはず、私はまだ宣材写真すら撮ってない、って」(「あとで写真について相談しましょ!」と彼女のエージェントが部屋の反対側から叫んだ。)

エマがこの役に惹かれたのは、メイヴが「二次的でない主要女性キャラクター」だったからだ。彼女はメイヴのストーリーについて、男性の登場人物に負けず劣らず「スリリングで胸が痛むけど面白い」と証言する。

「メイヴは毅然としていて、他のキャラクターと同じように自らの物語を切り拓いていく力がある」とエマ。「彼女はとても重要なキャラクターだと思ったし、すぐに夢中になった。メイヴ役は譲れない、絶対に選ばれてこの役に命を吹きこんでみせる、って思ったんです」

最初は苦戦したというエマだが、他のキャストやスタッフは、常に彼女が心地よく演じられる雰囲気づくりを心がけてくれたという。若いキャストが過激なベッドシーンを演じる作品においては、とても重要なことだ。

「現場では、みんなコミュニケーションと合意を大切にしていた」とエマは回想する。「ベッドシーンでは最初の段階からプロデューサー、監督、脚本家から指導が入り、何度も話し合いを重ねました。私たちが不快な思いをしないよう常に配慮してくれました。(ジャクソン役の)ケダーと私のシーンには〈振り付け〉がありました。3秒キスしてからこれをする、という感じで流れが決まっていたんです。本番まで何度もリハーサルしたから、あのシーンはかなりリアルになってるんじゃないかな」

Emma Mackay Photography Vicki King  Styling Victoria Young
Jacket Coach 1941.

この描写への配慮がもっともよく表れているのは、本シリーズがよく練られた面白おかしいティーンコメディから、視聴者の心を揺さぶる感動作へと変化する第3話だ。この回で描かれるのは、メイヴが中絶クリニックを訪れるシーン。彼女は水泳部のエースで学校の人気者のジャクソン・モンロー(ケダー・ウィリアムス=スターリング)と密かに関係をもっており、あるとき妊娠に気づく。このエピソードは、これまでに中絶を描いた映像作品のなかで、もっとも配慮の行き届いた描写を実現しただけでなく、中絶のすべてのプロセスを誇張することなく描いたという意味でも、非常に有意義な回だ。

「セットには医療専門家が常駐していて、作品の描写が事実に即しているか、いつも確認していました」とエマ。「監督のベン(・テイラー)は、過度な演出を嫌がりました。誰かが妊娠するというストーリーは、それ自体がドラマになりやすい。でも、私自身、メイヴが生むという選択をするのは現実的じゃなかったと思う。彼女はトレーラーハウスに住んでいて、お金もなく、家族の支えもない。しかもまだ学生です。彼女が中絶を選ぶのは必然だった。この選択は彼女の人生の一幕であり、そのあとも彼女の人生は続いていく」

そんなメイヴの未来は、まだ謎に包まれている。先日製作が決まったシーズン2の詳細は不明だが、シーズン1のエンディングのような衝撃的な展開が続くことはないはずだ。エマは、シーズン2にどんな展開を望んでいるのだろう。

「シーズン2では、女の子同士の友情を前面に出してほしい。きっと面白くなると思う」と彼女は答えた。「それから、メイヴには自分のことに集中して、自分の能力を活かし、大学進学の準備を始めてほしい。それが彼女のやりたいことだと思うから」

では、エマ自身は、作品のプロモーションや写真撮影に追われ、ネットで持て囃される世界に飛びこんだ今、自らの将来をどのように思い描いているのだろうか。

「私の取り柄は現実的なところ。これは私の仕事、演技以外は俳優という仕事の副産物なんだ、って自分に言い聞かせています。まだ慣れないこともあるけれど、それでいい。『セックス・エデュケーション』のヒットについては、私たち自身、ようやく実感が湧いてきたところなんです。それもいちばん良いかたちで」とエマ。「すごくありがたいし、すばらしいことだけど、これはまだ始まりに過ぎません。私にできるのは、ただ一歩ずつ前に進むことだけ」

ついこのあいだまで宣材写真すらなかったエマは今、世界へ羽ばたこうとしている。

Credits


Photography Vicki King
Styling Victoria Young

Hair Shiori Takahashi at Streeters using Oribe. Make-up Laura Dominique at Streeters using CHANEL Vision d’Asie: L’Art du Detail and CHANEL Sublimage L’Essence Fondamentale. Photography assistance Richard Kovacs.

Emma wears jumper Coach 1941. Trousers VINTAGE FROM Kool Kats Ltd. Boots Sergio Rossi.

This article originally appeared on i-D UK.

This story originally appeared in i-D's The Homegrown Issue, no. 355, Spring 2019.