20年ぶりに『スラッシャー』誌の表紙を飾った女性スケーター、リジー・アーマント interview

トニー・ホークの大技である「360ループ」をメイクした史上初の女性スケーター、リジー・アーマントが、プロを志したきっかけやキャリア、スケートのスタイルについて語る。

by Nathan Copelin; translated by Nozomi Otaki
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09 April 2020, 8:13am

「あそこのプール見える?」とリジー・アーマントは問いかける。「私が初めてドロップインをメイクしたプールなの。いちばん上から真っ逆さまに落っこちたこともある。最悪だった」

リジーの目の前に広がるのは、サンタモニカのコーブ・スケートパーク(The Cove Skatepark)。彼女が生まれて初めて滑った特別な場所だ。「弟といつもあそこにいた」と彼女は木製のランプがある場所を指さす。「向こうのセクションは新しくしたみたい。見える? このコースとボウル2つとプールは前からあった。ここで滑るのはすごく楽しいよ」

リジーがこのパークに初めて足を踏み入れたときから、さまざまな変化が訪れた。数々の大会で優勝を果たし、トニー・ホークに実力を認められて彼のボードカンパニーへと誘われ、世界中の若い女性スケーターたちのアイコンとなったリジー。弱冠26歳の彼女の勢いは衰えることを知らない。しかし、パークで放課後を過ごすようになった当初は、プロスケーターになることは全く考えていなかったという。

「最初は図書館に行くならパークにいるほうがマシ、っていうくらいだった」と彼女は回想する。「でも、ここには学校よりもずっと強いコミュニティの意識があった。この場所が大好きで、互いに励まし合いながら思い切り楽しんでるクールなひとたちに出会ったの」

彼女がプロスケーターを目指そうと決心したのも、このパークだった。

「ここに座って誰かがボウルで滑るのを眺めていたとき、そのひとがすいすい滑るのを見て、これだ、って思った。頑張って続ければそんなに難しいことじゃないんじゃないか、って。そのひとが簡単そうに滑るのを見ていたらひらめいたの」

地元のスケートボードブランドをスポンサーとして、リジーは他のスケートパークで開催された大会に出場した。

「年間最大のボウルコンテストだったから、できるだけたくさんのトリックをマスターした」と彼女はいう。「大会のスケートの空気を味わって、私はこういうひとたちに会いたかったんだ、って気づいた。スケートボード業界が大好きになった」

lizzie armanto by devyn galindo

リジーのような先駆的なスケーターのおかげで状況は少しずつ変わりつつあるが、スケートボード界にはいまだに家父長制が根強く残る。

「当時は大きなカンパニーに所属してる女性スケーターなんて誰もいなくて、男性スケーターほどレベルが高くないっていう偏見があった。友達にはこう話してた。もしカンパニーと契約するとしたらトニー・ホークのBirdhouseがいい、あそこのチームのスケートは私のスケートと似てるから、って」

リジーが自身のチームに興味を示していることを知ったトニーは、彼女にボードを送り、彼やチームとともにデモに参加してほしいと誘った。もちろん、この誘いはリジーにとってこの上ないチャンスであり、その後すぐにトニーは彼女にシグネチャーボードを贈呈する。それがリジーのキャリアの始まりだった。最近では、『THRASHER』の表紙を飾り(女性が同誌の表紙を飾るのは20年ぶり)、Vansと契約を交わしてオリジナルカラーのスニーカーを制作した。

「自分のアイデアがプロダクトとして形になったのは最高だった」と彼女は明言する。「スニーカーがショップに並んでるのもうれしかったけど、実際に履いてるひとをみたときはもっとうれしかった。『気に入って買ったんだけど、後であなたのスニーカーだって気づいたの!』って教えてくれたひともいた」

しかし、リジーにとって今までで最大の功績は、純粋なスケートのスキルだ。彼女は昨年、女性スケーターとして史上初めて、トニー・ホークの360ループを成功させた。360ループは、ランプでフルスピードで一回転する命懸けのトリックだ。ひと握りのスケーターにしかできない大技で、挑戦するだけでも大惨事になりかねない。

「リスクの高さは承知の上だった。ひとつでもミスすれば大変なことになる。思い切り身体を打ち付けるか、成功させるか、そのどちらか。着地したときは、とても現実とは思えなかった」

インタビューを終えて帰る準備をしていたとき、リジーは、私たちの目の前で見事なスタイルで滑るスケーターに気づいた。スケートにおけるスタイルの重要性について尋ねると、彼女はこう答えた。

「時間の余裕と練習を続ける忍耐力があれば、誰でもそれなりに滑ることはできる。でも、スタイルのあるスケーターは、動きに詩情が宿るようなものなの」

Credits


Photography Devyn Galindo

This article originally appeared on i-D UK.

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