岡本大陸×林陸也×Kotsu:「お笑い第七世代ってあるじゃないですか?」

DAIRIKUの岡本大陸とsugarhillの林陸也が共同主催したオールナイトイベント〈HUE〉が開かれた。踊ってばかりの国、Age Factory、KILLER TUNES BROADCAST——。多彩なバンドとDJたちが集った立役者であるCYKのKotsuを交えて、94〜95年生まれの3人に話しをきいた。先に言っておくと、最高な夜だった。

by Tatsuya Yamaguchi; photos by Koichiro Iwamoto
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17 September 2019, 4:17am

彼らの言葉を借りれば、「ノスタルジーを感じる夏の終わり」の真夜中。〈DAIRIKU〉を手がける岡本大陸と〈sugarhill〉のデザイナー林陸也に招かれて渋谷CONTACTに向かった。8月30日(金)、ふたりが共同主催し、ロックバンドからDJまでが結集するオールナイトイベント〈HUE〉の第2回目が行われた。

汗だくになった陸也は「すごいでしょ?」といって、イベントの成功を確信して興奮した様子で迎えてくれた。大勢のユースが群像をなしていて、再会を喜んで談笑している人たちもいれば、恍惚の表情を浮かべて音に熱狂する人々もいる。DJエリアとバンドのライブエリアは分断されていて、その合間を動く人の流れはずっと耐えることがなかった。この状況こそが、彼らが描いていた〈HUE〉のかたちのひとつだったという。

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Age Factory

そもそも、昨年に続く開催となる〈HUE〉には上辺だけのコンセプトやキャッチフレーズは存在しない。ブランドの最新コレクションを発表する場でも、何かをローンチするわけでもなければビジネスストラテジーに組み込まれた広報イベントでさえない。

一貫しているのは、彼らそれぞれが心から愛するアーティストを純粋な熱量をもって呼びたいということだけ。もっと言えば、94、95年生まれのふたりのファッションデザイナーが創出した「遊び場」なのだという。

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Kotsu

DJのブッキングで手腕をふるったKotsu(CYK)を筆頭にした、今回の彼らの遊び相手は以下の通りだ。サイケデリックロックバンドの〈踊ってばかりの国〉、奈良発の〈Age Factory〉、〈American Dream Express×MES〉、シンガーソングライターでプロデューサーの〈NTsKi feat. Yosuke Shimonaka〉、WACKO MARIAのデザイナー森敦彦がプロデュースするサウンドクルー〈KILLER TUNES BROADCAST〉、〈bungo〉、〈Mayu Kakihata〉、〈LITTLE DEAD GIRL〉、〈Kohei Nishihara〉、〈Soichiro〉。

閉幕から数日後、林陸也と岡本大陸、Kotsuの3人に話をきいた。彼らの言葉の折々には、まだまだあの夜の熱が帯びたままだった。

——昨日は何してた?

林陸也:自分のブランドの展示会にずっと立って、その後インドカレーを食べて帰宅。

岡本大陸:朝起きて家で納豆ご飯を食べて、作業場で個人オーダーの発送準備とプリント案の打ち合わせ。そのあと、知り合いのバンドマンの衣装ミーティングでした。

Kotsu:僕は次のギグに向けて音楽をひたすら探す日でしたね。

——開催から数日が経ちました。〈HUE〉はどんな場でしたか?

陸也:こんなに潔く夏を終えられるとは思ってなかったし、ここ数年で一番感動的な夜でした。今回はコミュニケーションツールでもあったし、そもそもは自分たちが遊ぶ理想の場所が無いから作っちゃおうと。

大陸:出演者のおかげなんですけど、〈HUE〉がきっかけで僕たちのブランドやCYKのことを知ってもらえればまた違う遊び方ができる。音楽がきっかけで知られるブランドがあっていい。逆に、僕らのブランドの名前がもっと広がればアーティストたちとまた新しい遊びができるかもしれない。僕らの世代の中でもそういうことをできたらいいなと改めて思いました。

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踊ってばかりの国

陸也:生意気かもしれませんが、アドバタイズメントなイベントよりも“リアル”だった。純粋に「面白そう」ってだけで駆け込んできてくれた人たちがいたんです。僕と大陸が奥の方に歩いて行ったとき、知らない人に「今日、踊ってばかりの国観に来たんですか?」って言われて(笑)。

大陸:僕らが主催者であることやブランドのことはまったく知らずにね(笑)。とにかく“知らない人”がたくさんいた。それこそ僕らが最初に作りたいかたちでもあったんです。

Kotsu:あの日は僕が誕生日だったからと来てくれた知人もいたけど、それを除くと知らない人しかいなくて。陸也と大陸くんは知り合いがいっぱいいるんだなあって(笑)

陸也:全員そうだったよ(笑)

Kotsu:僕は週5以上でクラブの現場にいる中で、見ない人がいるっていう状況ってすごくでかい。DJカルチャーが矮小化して、同じ人が出入りすることで濃密なコミュニティになっていく一方で、狭まってきたという側面はある。〈HUE〉のように知らない人ばかりの状況を自分たちではつくり出せないし、僕ら、演者からするとすごい有り難いことなんです。それができるのがやっぱり、他のカルチャーの力を借りること、今回はそれがこのふたりだった。

大陸:Age Factoryのボーカルはそれがめちゃくちゃ刺激的だったと言ってくれました。アーティスト側も今まで経験したことのないフレッシュで刺激的な感覚があったみたいで、来年も出たいって言ってくれた人たちもいた。僕たちはバンドマンの知り合いも多いから、ちょっとしたフェスをやっていけたらと思ってるし、その噂が広まったらいいなと思います。

陸也:うん。〈HUE〉に出たいというアーティストが出てきてくれたら嬉しいですね。

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American Dream Express×MES

——今回は半年以上の時間をかけたとのこと。主催者が一番楽しんでいたんじゃないですか?

大陸:もしかしたら今までのイベントで一番楽しかったです(笑)。4月くらいに話を始めて、CONTACTに決めたのは2〜3ヶ月前でわりと早かったですね。最近ヒップホップのイベントが多い中で、僕たちはバンドを打ち出せたら新鮮なんじゃないかと。それは、純粋に呼びたい人たちがいる陸也と僕にとって、パーソナルな部分だから。例えば、高校の同級生でもあるAge Factory。同じ学校にいたやつが、目の前でめちゃくちゃかっこいい音楽やっているのが嬉しすぎて号泣しちゃって。そのあとは渋谷メルトダウンしてました(笑)。

陸也:「一緒に遊びませんか?」と声をかけて、Kotsuも含めミュージシャンが「出るよ」って言ってくれた。おこがましいけど、俺らのために来てくれたんだって思うと純粋に嬉しかった。本番は夜中なのに、リハのために午後6時に入ってくれたんですよ。

大陸:普段は昼の時間や夕方にライブをする人たちが、深夜に、あの箱で。

陸也:〈sugarhill〉のルック撮影で縁があった〈踊ってばかりの国〉のライブ中のMCで、「大志を持つ若者たちの呼びかけで今日は来ました。俺らも何かやらなくちゃいけないから新曲やります」とおっしゃって。僕らの強い気持ちって、言葉にしなくても人に伝わっていたり、それを汲んでくれるような人たちが集まってくれているって事を強く感じて、少しだけ泣きました。

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踊ってばかりの国

——〈踊ってばかりの国〉の下津さんがそのMCをしたとき、会場が瞬時にあつくなったのを覚えてます。

陸也:Kotsuがいて本当に良かったと思えたのは、バンドミュージックとクラブミュージックにあるざっくりとした壁を取っ払うことができたこと。バンドを聴いてる人でも踊れる音楽がクラブにある。その逆も楽しめるんだと示せたのかもしれない。

大陸:人が行き来している感じはあったよね。年に一回開催されるっていう楽しさも作りたい。

陸也:日本人って8月の終わりにノスタルジーを感じる民族じゃないですか。教育のスケジュールとしても強制的に。そのタイミングで遊びたいって気持ちは、僕らが計算して当てられるものなんじゃないかな。

Kotsu:毎回誕生日の恐怖にさらされないといけないじゃん(笑)

——3人は同世代。開催に関わった人たちもほとんど20代前半だったそうですが、だからこそ生み出された〈HUE〉の側面ってなんでしたか?

陸也:お笑い第7世代って知ってますか? 霜降り明星とか金属バットとか。第1世代をドリフターズだとすると、今は第7世代があつい。僕たちがファッションでいう何世代目かわかんないけど(笑)。

Kotsu:きっとお笑いも他のジャンルも一緒で、上の世代ができなかったことを見て、下の世代がそれをやる。その瞬間に世代が変わっていく。その代わりに、めちゃくちゃ尖ってる存在が均一化していく感覚も同時にある。でも、今が“第7世代”だとすると均一化されたベースのクオリティはかなり上がっていると思う。突き進むことに憧れを感じつつも、均一化された状態をみんなわかっているからこそ他人に理解がある。「お前パンク一筋なんだろ」みたいに、リスペクトこそあれど、絶対にディスったりはしない。ジャンルがバラバラな今回のHUEのかたちは、色々と取っつきやすいけど奥は深いものになった。それは必然的なのかなと。

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陸也:僕たちは手元に携帯とSNSがあって、それらと平等に年月を過ごしているから、いろいろなものを吸収しやすかった世代。だからこそ、ミュージシャンが服を作ってもいいし、服作る人がDJやってもいいし。何やってもいいと普通に思ってる。良いと思ったものをすぐにフォローできるし、探せば好きなものにすぐに出会える。何かをやれば評価してもらえる人と出会うのもすごく早い。何事もとっつきやすくて、調べればいいという感覚。だから「クラブイベントだけど私も行けるかも」って素直に思えるし、風通しがよくて明るい感じが僕たちの世代にはあると思う。

——世代を更新していくうえでは歴史や文脈を理解することも大切になってくる?

Kotsu:そうですね。ドリフターズは、笑いのツボ、つまり大前提とするマナーを抑えてる。他のジャンルも大前提になるツボがあるとしたら、結果的にやらなくても、ツボを知ることは大切かなと思います。マナーを貫いてきたカルチャーがあるということは、僕らからするとひとつのアーカイブとしてすごく大事なもの。DJの世界で、この曲をこの時間帯にかけるのはダメでしょ、みたいなのがあって、上の世代だとマジで説教されるらしいんですよ。でも、本当にそれが崩れてきていて、今は新鮮だったよって言われたりもする。

陸也:スケーターファッションの人が、「俺はかっこいいと思うんだよね」って意思を持ってハイテクスニーカー買ってる人も多い。とらわれなくてもいいんだという理解が広がってるのかもしれない。理解したうえで、あえて根元を切っていく。ファッションデザインでも、人の身体が変わらないうちは制限がある中で、前にあったものをアップデートしたり、他の要素を加えたり、混ざったものを削ぎ落としたりと、ファッションの文脈を理解したうえでデザインしていく。そういうことが、僕らの遊びやスタイルにも入っているんじゃないかと思いますね。

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NTsKi feat. Yosuke Shimonaka

——フレッシュに伝えることができたら、それは新しい価値なんじゃないか。

Kotsu:筋を通した崩し方だと、ずっと筋を通してきた人が気づいてくれるんです。ジャンルレスなりのシナリオやストーリーの作り方は意識するし、横道にそれつつも、奥行きがあるものにしたい。僕らが信じてるコアには触れて欲しいから。

陸也:お笑いで三段落ちってあるじゃないですか。それが定着して、Kotsuが言うところのマナーとしてあるなら、次に3個目で落とさない、全部落とす、3というリズムを作らないで落とさないっていうのが出てくる。それがシュールで新しく見える。そういう意外性を理解した上で裏をかいたり、逆に正統派でいこうっていう考えも生まれる。

Kotsu:その一方で、音楽のシーンでやりすぎて盲目的になってる部分に対して、リクとか大陸の存在は“批評”なんです。バンドを見に来た人がDJ見て、その人の人生の中で、DJカルチャーがあってもいいじゃんという批評が行われていたらいい。ひとつひとつを批評していくというのは、僕がDJのカルチャーで教えてもらったことだから絶対にあり続けてほしい。今、社会とか色々ありますけど、今の時代を生き抜くベースとなるそういう価値観を作ってくれた。僕がDJカルチャーを遊びとは言い切れないのは、エデュケーションの部分もあるから。この記事が出ることも“批評”ですよね。

陸也:そうだね。行った人も来てない人も何かを感じるかもしれない。「あの夜に何が起こったの?」ってね。

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Text Tatsuya Yamaguchi
Photography Koichiro Iwamoto

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