若者のクィアフォビアとインターネットの関係

LGBTQ+に対してもっともネガティブな態度をとる世代は、Z世代だと判明した。

by Douglas Greenwood; translated by Ai Nakayama
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08 June 2020, 8:58am

クィアのひとびとはいたるところにいる。すべての国のトップがクィアだというわけではないが(同性愛者であることを公表しているのはルクセンブルク首相グザヴィエ・ベッテル、セルビア首相のアナ・ブルナビッチのみだ)、たとえばみんな大好きLil Nas Xなど、クィアアーティストがBillboard Hot 100を何ヶ月も独占したりしている。

またi-Dにも登場したインディア・ムーアなどをはじめとする多数のクィアが、第71回エミー賞で6部門にノミネートされたアイコニックなドラマシリーズ『POSE』に起用され、重要な登場人物を演じている。彼らが雑誌の表紙を飾ることも多い。

今私たちが生きている時代はクィアのユートピアであり、若者たちの未来は、進歩的な政策、そしてメインストリームカルチャーからのこれまでにないほどの受容により、しっかり育まれているといえよう。

10年前、物事の様相はまったく違っていた。映像作品に登場するクィアのキャラは〈クリーン〉にされていたし、その表象は一面的で大抵が白人だった(例:『フレンズ』の「レズビアン・ウェディング」(S1; Ep11) では、同性愛者のキスシーンさえなかった)。そしてトランスジェンダーのひとびとは、犯罪の被害に遭ったり、ジョークの的となっていた(例:映画『エース・ベンチュラ』のロイス・アインホーン警部補)。

それらの創作物に登場する〈理想のクィア〉を解体するには、若い世代のリベラルな考えかたが必要だった。そして今は、ほとんどの場所にそういう考えが根付いている。

LGBTQ+支援団体のGLAADが実施した調査によると、72歳以上の米国人におけるLGBTQ+の受容度は2018年の調査と比べて高くなっているなど、一見ポジティブな変化が現れている。しかし逆に、将来の変革のカギとなると思われていた世代のLGBTQ+の受容度がいちばん低いことも明らかになった。

LGBTQ+への暴力反対を訴える慈善団体〈Galop〉が収集したデータによると、24歳以下の英国人の4人にひとりが、クィアコミュニティは「道徳に反している」とし、また彼らは社会の脅威であり、同性愛は自らの信条に反していると考えているらしい。上の世代で同じように答えていた割合は、5人にひとりだった。

またクィア・コミュニティに対する不寛容を示す、ショッキングな統計も多々ある。イングランド、スコットランド、ウェールズにおけるトランスフォビアを原因とした暴行は2018年に81%増加、そして被害者の性的指向を原因とした暴行は15%程度増加している。

クィア・コミュニティへの敵意がどこから芽生えているのかはまだ公式に研究されてはいないが、これがZ世代のみにみられる傾向であることを考えると、おそらく上の世代があまり使用してこなかったツールが影響しているはずだ。そう、インターネットである。

インターネットは、思春期のZ世代/ミレニアル世代のクィアたちに安全な場所を与えてくれ、若い世代の意見が集まる場として機能してきた。そこでは小さくて息苦しい地元の町では不可能な友情を育め、さらに、トランスジェンダーのひとびとが自分自身のことを記録するプラットフォームを与えてくれた。

その蓄積が、他のクエスチョニングの十代たちが参照できるモデルとなっている。「彼らはインターネットを、自分自身を理解するため、尊敬できるロールモデルや重要な情報/支援を見つけるための一助として利用しています」と説明するのは、英国のLGBTQ+支援団体〈Stonewall〉のメディア責任者、ジェフ・インゴールドだ。「我々の調査では、ほぼすべて(96%)のLGBTの若者が、インターネットのおかげで自分の性的指向、および/もしくはジェンダーアイデンティティを、より深く理解することができた、と答えています」

しかしインターネット上での集いが、悪い方向へ傾くこともある。極右のるつぼとして悪名高い8chan(現在サービス停止中)のような裏サイトに近いプラットフォームだけでなく、Redditのような比較的簡単にアクセスできる掲示板サイトでも、かなり保守的な思想をもつ若者たちがいる。

彼らは社会を「あまりにポリコレすぎる」と糾弾し、そこから離れたところに自分の居場所をつくってきた。ジェフがみせてくれた統計では、クィアの若者の40%が、ネット上のヘイトスピーチの直接的なターゲットになったことがあるとされているが、見えない場所にはこれ以上の被害者がいるはずだ。

〈/unpopularopinion(直訳:一般的ではない意見)〉のようなサブレディットは、インセルや極右の若者の勧誘の場となっている。トランスジェンダーの権利は正当なものなのか、クィアはクィアであることを選んだのであって生来のものではない、公共の場でイチャイチャしている同性愛カップルが「キモい」──。「一般的ではない意見」というスレッド名で、疑問の余地、議論の余地がある意見として(名目上は)発されているが、逆にそのために、クィアフォビア、トランスフォビアの主張が確かな事実として拡散されてしまっている。

これらのサブレディットの参加者はみんな似たような思想の持ち主で、LGBTQ+コミュニティを愚弄し楽しむためのグループを形成している。参加者のプロフィールを見てみると、LGBTQ+のひとびとが自分たちと同じ権利を有することに反対するストレートの若者(その多くが男性)だ。

24歳のミス・ブランクスは、有色人種のトランス女性。彼女のSNSには、毎日のように大量のヘイトメッセージが送られてくる。内容は「言葉の暴力、殺害予告、レイプ予告」など枚挙にいとまがない。メッセージの送り主の大半が、彼女と同年代の白人だという。

「Z世代のための場所において、私は自分で自分の安全を守らなければならない状況に追い込まれている。かなり厄介です」

同じく24歳のレオンのInstagramの投稿にも、同じように悪意のあるコメントが残されるという。コメントを残していくのは知らないひとで、なかには18歳のユーザーもいるという。彼らはレオンの中性的な容姿を臆面もなくジャッジする。

「たとえば、『このクソ野郎は男? それとも女?』っていうコメントが来たこともあります」とレオン。「その下には、別のひとが『女に見える』って答えてるんです」。まるで彼が実在する人間ではなく、本人に自分の発言が届かないとでも思っているかのようなコメントだ。

前述の〈/unpopularopinion〉で、アンチLGBTQ+的な投稿によくコメントを返しているひとりの若者に、クィアについてどう思うか尋ねると、彼は「変なひとたちだと思う」と答えた。彼のその感覚は、異性愛規範にのっとって生きている、他の多数のシスジェンダーたちが共通して抱く〈恐れ〉を反映している。

また、クィアのひとびとが平等の名の下に多くを求めすぎていて、そのプロセスにおいて、最近までクィアの生活や悩みなどまったく知らずに生きてきた人間が享受していた〈表現の自由〉が侵害されている、という考えからも、彼らの不安は生まれている。

クィアがメインストリームのニュースで多く取り上げられるようになっている現状とインターネットカルチャーが結びつき、周縁へ追いやられていた問題が前面へ押し出された。そしてクィアは声をあげ、自分のために闘えるようになった。それは局所的なクィア解放により生まれた副産物だ。しかしクィアのあげた声が、受け取る側に「ただ注目を浴びたいだけ」ととられ、LGBTQ+の要求が押し付けられている、と思われがちだ。

LGBTQ+は受容以上を求めている、とする意見は、なかなか変えることが難しい。なぜならクィアのコミュニティが発した声は、彼ら自身の手を離れ、歪められているからだ。それに加担しているのが、インターネットに広まる噂やタブロイドが流布する言説だ。

その事実を踏まえた上で、それを検知することは、今は不可能に近い。なぜならインターネットのポジティブな側面は、偏屈なユーザーたちにも自由に移動したり、姿形を変えたりする選択肢を与えているからだ。偏見にまみれた意見が禁止されて、その場所からいなくなったと思ったら、また別の新しい場所に現れる。

「SNSやオンラインプラットフォームが、ホモフォビア、バイフォビア、トランスフォビア的なコンテンツの除去について、明確な対応を取ること、そしてサービス内の報告ツールを一般に認知していくことがとても大切です」とジェフは語る。彼が言及するような規制が着実に働く方法を見つけることができたら、世間からは見えていないところで流布されている言説を止める一助にもなるだろう。

クィアにとって、インターネットは〈解放〉と〈抑圧〉を与える諸刃の剣だった。ゼロ年代は終わった。抑圧という刃はもういらない。

This article originally appeared on i-D UK.

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