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マーチング・チャーチが語る世界へのアイロニー

アイスエイジのフロントマンの別プロジェクト、マーチング・チャーチが12月6日に初来日公演を行なった。i-Dは最新アルバムを引っさげ東京にやってきたエリアス・ベンダー・ロネンフェルトにインタビューを行なった。

by Ayana Takeuchi
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19 December 2016, 6:22am

2008年、デンマークのコペンハーゲンで結成されたアイスエイジは、革新的な楽曲のみならず確立されたアティチュードや美麗なルックスで、世界中にファンを持つバンドだ。そのボーカルを担当するエリアス・ベンダー・ロネンフェルト(Elias Bender Rønnenfelt)が、2014年に地元の盟友とともにソウルミュージックを奏でるマーチング・チャーチを結成。2ndアルバム『Telling It Like It Is』がリリースされたタイミングで悲願の初来日公演が実現した。ライブ当日はアイスエイジのヨハン(Johan)、先日解散を発表したロウワーのクリスチャン(Kristian)とアントン(Anton)、ハンド・オブ・ダストのボウ(Bo)、ラストリザードのアレックス(Alex)が脇を固め、12月の寒さを吹き飛ばす熱い夜となった。i-Dはリハーサル前のエリアスに話を訊いた。

アイスエイジとしては何度か来日していますが、あなたにとって東京はどんな街ですか?
いまだに暴かれていない部分が多いミステリアスなところだね。でも隠れ家は見つけたよ。ゴールデン街のバー<ナイチンゲール>は日本に来たら必ず訪れるし、今回僕らを呼んでくれたレーベル兼ショップのBIG LOVEも大切な場所。彼らはファミリーだよ!

前作は、そのナイチンゲールで聴いたポルトガルのアーティスト、デヴィッド・マランハ(David Maranha)の作品が着想源だったそうですね。
1stアルバムのアイデアを練っていた頃にバーに行ったんだ。ウィスキーを飲み過ぎてかなり酔っぱらっていたんだけど、そこでかかっていたBGMを今でも覚えているよ。ストリングスとヘビーなビートの組み合わせに心惹かれたんだよね。そのときは、ぼんやりとこういうのもありかなと思って終わったんだけど、翌年ヨーロッパツアーでリスボンを訪れたら、偶然にもオープニングアクトがデヴィッドでさ。ライブでサックス奏者がセクシーな音を出していて、ぐっとその世界に引き込まれていった。そんなときに、トランペット担当のメンバーが体調を崩してデンマークに帰ることになってさ。パートが足りなくなったから、急遽彼を引っ張ってきて、その先も一緒に回ることにしたんだよね。運命的な出会いだったな。

今作でも、そのように具体的なインスピレーションはありましたか?
難しい質問だね。クリエイターとして、何がどこから自分に影響しているかって全然分からなくて。今まで読んだ本や見た映画、聴いた音楽から得たものが大きなボールみたいになって自分にドンっとぶつかってくるんだ。強いて言えば、バンドのメンバーかな。

ソングライティングの仕方で変化はありましたか?
かなり変わったね。1stのときはバンドがひとつにまとまっていく過程が曲作りだと思っていたんだ。だから皆で部屋に集まって、一斉に音を出して何が生まれるかに賭けていた。それはそれで良かったんだけど、アイデアとか構成のまとめ方がルーズだったんだよね。同じことはしたくなかったから、今回は曲を書いて構成までしっかり決めてから集まるようにしたよ。

タイトルの『Telling It Like It Is』について教えてください。
今作では、欧米で起こった出来事に対して自分が感じたことを曲にしている。政治的なことを歌っているけど、タイトルでそれをまとめたわけではないんだ。「いまの真実を語る」って意味だけど、真実とは何か考えたときに、誰も本当のことなんて分からないんじゃないかって思ってさ。世の中そんな簡単に語れないってことを茶化しているんだよ。

それは1stで歌っていた"不完全さ"というテーマにも繋がりますか?前作のタイトルは「This World Is Not Enough(この世界は未完だ)」でしたよね。
不完全さというより、ただ"現状こうだ"って断言するのは馬鹿らしいということへの皮肉だね。矛盾した情報がひしめきあった世の中で、真実を理解することの難しさをタイトルにしているんだ。そういう状況だけど、僕らなりに道を模索しているわけだから、分かったような口を聞かないでくれってことだね。でも、不完全っていう指摘も間違いではないよ。物事が完全でないのは、当たり前だからね。不完全だから世の中面白いのであって、世界は美しいと思うんだ。ごちゃごちゃしているから良いってこともあるよね。音楽制作をするのも、そうかもしれない。頭の中に浮かんだ何かを音に置き換えていくわけだけど、最初に思い描いたものと完全に同じものは作れないんだ。全然違うものに着地しても、それはそれで良いものができることがある。音楽は不完全さの副産物とも言えるね。

アイスエイジとマーチング・チャーチの制作は同時進行ですか?
そうだね。いつも同時にアイデアが浮かぶから、ひとつのバンドだと実現しきれないんだよね。アイスエイジでできるけど、マーチング・チャーチではできないとか、その逆もあって。アイデアの奴隷になって身動きが取れなくなるのは嫌だから、ふたつを放出する車があってほしいと思ってる。

「Lion's Den」のMVが公開になりましたね。この曲に込められたメッセージは?
うーん、メッセージはあったかな......。僕自身、答えを提供することよりも疑問を投げかけるのが得意なタイプなんだ。

なるほど。では、監督は誰が担当しているのでしょう?
全部自分たちでやっているよ。人の手に預けるのはあまり好きじゃないんだ。撮影は東京、ニューヨーク、コペンハーゲンでイメージが思いついたらカメラを回して、それをまとめていった。誰が監督で出演者なのかという認識もないまま進んでいったね(笑)。誰かにお願いするとしても、自分たちの人脈で信頼のおけるひとであることが大切さ。アルバムのジャケット写真もそうで、前作はアイスエイジのMVも撮ってくれたカリ・ソーンヒル・デウィット(Cali Thornhill Dewitt)で、今回は地元のラッセ・ディアマン(Lasse Dearman)にお願いしたよ。

アルバムの裏ジャケットには、画家のエリザベス・ペイトン(Elizabeth Peyton)の名前がクレジットにありましたね。彼女はどのように関わっているのでしょうか?
Elizabethはコペンハーゲンでアイスエイジのヨハンを通して知り合ったんだけど、親しい友人だよ。ニューヨークで泊まるところに困って、彼女のオフィスに泊まらせてもらったんだよね。その御礼を込めて、クレジットにいれたんだ。ニューヨークで2回ほどコラボレーションもしたよ。1つ目はキュレーターが現代美術家のマシュー・バーニーとエリザベスだったんだけど、マシューの演目で、ピアノとヴィオラのひとがニコ・マーリー(Nico Muhly)の曲を演奏して、脇にはオペラシンガーもいて、そこに僕らが絡むかたちだった。あとは『Tantris』というメトロポリタンオペラの作品で、ベースのクリスチャンとエリザベスが出演している。タイムズスクェアでやったものなんだよ!

今後の予定についておしえてください。
1月にUSツアーが決まっていて、その後もライブの予定が入りそうかな。地元に戻って落ち着いたら新作に取り掛かるつもりだよ。休んでもいいんだけど、何かしていないとダメなタイプなんだよね。制作はアイスエイジとマーチング・チャーチの両方。そう言えば、クリスマスソングを作りたいんだよね。2017年になるかと思うんだけど、ストーリーはもう決まってる。親権を失った父親が母親の元から子どもを誘拐してくるって内容の、ちょっと悲しいクリスマスソングだよ。

楽しみにしています! 今年のクリスマスの予定は?
アイスエイジのヤコブと地元のバーで飲み明かすよ!(笑)

Credits


Text Ayana Takeuchi
Photography Tammy Volpe