パタンナー中村里美が思考するXBYOの線と面

日本の上質なニット生地と高感度なパターン技術を組み合わせたadidas Originalsの新しいアパレルコレクション「XBYO」。その美しくもシンプルなパターンメイキングを託された中村里美に創作の背景を訊いた。

by Nobukazu Kishi
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27 December 2016, 8:04am

adidas Originalsが2017年春夏シーズンより展開する「XBYO(エックスバイオー)」は、adidas社のアーカイブより得たインスピレーションに基づき、日本のパターンメイキングや素材の粋を結集したカットソー主体のアパレルコレクションである。1950年代のシューズのヒールカウンターに由来する"X"モチーフをアイコンに、美しさやシンプルさを追求しつつ身体の動きを妨げない自由で快適なストリートウェアを提案する。
生地には、adidasと半世紀にわたるハートナーシップで結ばれた丸編生地メーカー、ヤマヨテクスタイルが手がけるXBYO専用のコットンテリーを採用。これを日本のパターンメイキングの第一人者である中村里美がデザイナーの意を汲んで、これまでにないadidas Originalsの全く新しいカタチを創造する……。

adidasというブランドのイメージは?
物質的に豊かな現代とは程遠い青春時代に初めて触れた海外のスポーツブランドがadidasで、憧れの存在でした。adidasの製品にはいつも伝統的で厳粛な印象があり、それは今も変わりません。モノづくりに真面目と言うか、そういう部分で共感できます。加えて、現在はとてもハイテクで、自分にないすべてを備えているイメージ。またクリエイティブの現場では、私のことを理解してくれようとする姿勢に、逆にadidasの誇りのようなものを感じました。

実際にどういったプロセスでクリエイションを進めましたか?
ドイツのadidas本社を訪ねる機会もありましたが、最初は電話会議のようなミーティングを開きました。デザイナーが何を表現したいかを探る作業は最も重要で、難しい。だから『好きなブランド』『丸い物か四角い物のどっちが好きか』という2つの質問をぶつけました。そうして絶えず思考を繰り返し、自分自身の考えを明確にしておかなければ、デザイナーの哲学には辿り着けません。その上で、デザイナーのイメージを良い意味で裏切って、"深層心理ではこういう表現を求めていたのでは"といったアイデアを導き出せるかが肝要です。あとは頭の中で構成された形をパターン技術を駆使して具現化するだけです。ただ、与えられた課題に対する最終的な着地点は、仕上げた服をお客様に着用していただいて初めてファッションデザインは完成するものだと考えています。

シンプルなシルエットにさり気ないカッティングやダーツを施したXBYOのカットソーは総じて寡黙だが、いざアクティブな動きにも淀みない。人間工学を踏まえた立体裁断やパターン技術の為せる業だろうが、それだけに留まらない何かを感じさせる。

XBYOのパターンを製作する際に心掛けたポイントは?
私は、動的平衡を好む傾向があります。パターンの形状と実際に縫い上げた形のギャップを意識しました。言い換えれば、仕上がりはシンプルに、過程は複雑に、といったところでしょうか。同じ形を仕上げる場合も、今回は少し遠回りしてみました。それが特徴的な形になっているんだと思います。素材を活かした着用感も重要なポイントです。シルエットについてはスタイリッシュになり過ぎないよう努めました。ダーツや切り替えはデザインだけのものにならない様に、必要要素として存在させ、それらをフォルムが表す部分や機能性を要する部分に一つずつ置き換えていきました。

XBYOを通して表現したかったテーマはありますか?
アスリートのように精神や肉体が研ぎ澄まされた者でさえ、人間は完璧ではありません。未完成だからこそ文化や芸術が生まれ、理想を目指して努力するのではないでしょうか。その過程で生まれる独自の美に魅力を感じる私は、良い意味での未完成な違和感をXBYOに持ち込みたいと思いました。

プレミアムコットンテリーの中でも伸縮性を抑えた生地をあえて使い、ストレッチを要する部位をパターンのゆとりでアレンジする等、パタンナー自身も初めてのチャレンジに取り組んだというXBYOのクリエイション。

機能性と美しさを兼ね備えたパターンのポイントは?
審美性については、何をもって美しいとするか、色々な考えがあると思います。私が重視するのは"空気感"です。デザイナーの要求に応えるには、空気感を丁寧に仕上げる必要があります。機能性については、どんな服を作る場合にも考慮し、妥協することはあり得ません。審美性と機能性は遠いようで、じつは最も近い要素だと考えています。逆もまた真なり——これが私の物作りの哲学であり信条です。究極のトラディショナルの背中合わせにアバンギャルドが存在しているように……。


adidas Originals XBYOは、12月22日より日本国内のadidas Originals Flagship Store Tokyo、BEAMS、26日より伊勢丹の一部店舗で先行発売、2017年1月5日よりグローバル及び日本全国でグランドローンチされる。

Credits


Text Nobukazu Kishi Exclusive
Portrait photography Shunsuke Shiga

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