ガス・ヴァン・サント回顧展

アイコニックなアメリカ人監督の30年にわたるキャリアを網羅した回顧展が、フランスで開催されている。

by Emily Manning
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15 April 2016, 8:55am

ガス・ヴァン・サントはポートランド市の守護聖人だ。その彼が今、彼はパリで大きな話題を呼んでいる。世界有数の映画アーカイブを誇るフランスの文化施設、シネマテーク・フランセーズ(La Cinémathèque Française)が彼のエキシビションおよび回顧展を開催しているからだ。このショーは、『マイ・プライベート・アイダホ(My Own Private Idaho)』や『ミルク(Milk)』など、ガス・ヴァン・サント監督の幅広い感動的な作品群だけでなく、写真やペインティング、オリジナルの作曲音楽作品、そして芸術各界のアーティストとのコラボレーション作品まで、映画以外のアートフォームによる監督の作品までを広く展示している。コラボレーションを果たしているアーティストには、作家ウィリアム・バロウズ(William Burrows)、フォトグラファーのブルース・ウェバー(Bruce Weber)、そしてロックの神様デビッド・ボウイ(David Bowie)までが名を連ねる。高らかな宣言も大仰な売り文句もなく、ガス・ヴァン・サントはただ静かに、ひっそりと芸術的自由の表現を先導し、そして守っているのです」と、この回顧展のキュレーター、マテュー・オルレアン(Matthieu Orlean)は紹介している。

River Phoenix in My Own Private Idaho by Gus Van Sant (1991) © Warner Bros Inc.

このエキシビションは、監督の芸術を包括的に網羅する内容となっている。まず、『マラノーチェ(Mala Noche)』や『ドラッグストア・カウボーイ(Drugstore Cowboy)』など監督の初期映画作品のセットで撮られた1980年代半ばのドリュー・バリモア(Drew Barrymore)やニコール・キッドマン(Nicole Kidman)、キアヌ・リーブス(Keanu Reeves)などのポラロイドが並ぶ。そして、1970年代中期に監督がロードアイランド・スクール・オブ・デザイン(Rhode Island School of Design)美術学校の生徒として制作したペインティングやコラージュ作品、また最近ガゴシアン・ギャラリー(Gagocian Gallery)でも展示された大スケール水彩画作品なども展示されている。
「ガス・ヴァン・サントは、彼が子供の頃に住んでいた家を描き、彼という人間を形成した風景を描き、彼が意に反して惹かれた対象を描き、彼のアイコンも邪念も描いている」とオルレアンは解説する。監督がこれまでに制作した16本の長編映画以外のアート作品に目を向けることで、それら映画作品を作り出したガス・ヴァン・サントという宇宙を理解することができる内容だ。

Gus Van Sant, Polaroids, 1983-1999 © Gus Van Sant. 

もちろん、エキシビションの中心的役割を担うのはそれら映画作品だ。4月13日から5月28日までの期間、シネマテーク・フランセーズでは、彼がその30年にわたるキャリアで監督したすべての映画作品が上映される。パリでは4月末公開予定の最新作『追憶の森(The Sea of Trees)』こそ含まれないが、『エレファント(Elephant)』から『カウガール・ブルース(Even Cowgirls Get the Blues)』、『グッド・ウィル・ハンティング(Good Will Hunting)』に至るまで、ガス・ヴァン・サントが作り出す映画世界の幅広さがうかがえる内容となっている。エキシビションの一部は、『カウガールズ』で使われたK.D.ラング(K. D. Lang)のカントリーや、『ラスト・デイズ(Last Days)』でマイケル・ピット(Michael Pitt)が書き下ろした曲など、監督の映画において音楽が果たす役割に焦点が当てられている。またこのエキシビションではヴァン・サント監督の反体制の色濃い作品群に加え、他の監督による映画も上映される。上映作品のセレクションはヴァン・サント監督に全権委任されているという。上映作品には、ロバート・レッドフォード(Robert Redford)監督作品『普通の人々(Ordinary People)』、ベルナルド・ベルトルッチ(Bernardo Bertolucci)監督作品『ルナ(La Luna)』、トッド・ヘインズ(Todd Haynes)監督作品『カレン・カーペンター・ストーリー(Superstar: The Karen Carpenter Story)』、ハーモニー・コリン(Harmony Korine)監督作品『ジュリアン(Julian Donkey Boy)』などが、ヴァン・サントにより選ばれている。

  Michael Pitt in Last Days by Gus Van Sant (2005) © HBO

回顧展開催期間中、シネマテーク・フランセーズでは数々のレクチャーも開催される。まず開催されるのが、ガス・ヴァン・サント監督本人によるマスタークラスで、カタログのサイン会も併せて開催される。他のレクチャーには、ヴァン・サント映画のサウンドについて探る内容のものや、ビート・ジェネレーション(Beat Generation:1950年代から60年代にかけて、第二次世界大戦後のアメリカ文化に大きな影響を及ぼしたアメリカ文学界の作家群とその活動)の作家や政治思想がどのように監督の映画作品を輪郭付けたかを探る内容のもの、そして、「ガス・ヴァン・サント映画の真髄を体現する俳優」として故リバー・フェニックス(River Phoenix)を偲ぶ内容の"リバー・フェニックス:エンジェル(River Phoenix: An Angel)"と題されたレクチャーも準備されている。また、シネマテーク・フランセーズは、フランスのデザイナー、アニエスb.(agnes b)とコラボレーションし、ガス・ヴァン・サント監督の偉業を讃えた限定生産Tシャツを制作している。

Gus Van Sant Untitled, 2010. © Gus Van Sant. Courtesy of the artist and Gagosian Gallery 

このエキシビションは、その決定的な作品群とその研究をもって、奥深いヴァン・サント世界に浸りたいひとびとにとっては素晴らしい空間となるだろう。ガス・ヴァン・サントは、若き日の自由の幻影を追うアメリカを、その風景や歴史文化、男らしさの概念、時にセクシュアリティと暴力の間にあるつながりを暴き、なぞることで探る、真のアーティストだ。ガス・ヴァン・サントの作品は、我々の国、そして我々自身を理解するのに極めて重要な意味を持っている。

エキシビション『ガス・ヴァン・サント(Gus Van Sant)』は、2016年4月13日から7月31日まで、シネマテーク・フランセーズにて開催される。詳しくはこちら

Alicia Miles and John Robinson in Elephant by Gus Van Sant (2003) © HBO

Jake Miller and Gabe Nevins in Paranoid Park by Gus Van Sant (2007) © Patrick Scott Green 

Gus Van Sant, Polaroids, 1983-1999 © Gus Van Sant. 

Mala Noche by Gus Van Sant (1986) © Sawtooth Film Company 

Credits


Text Emily Manning 
Keanu Reeves and River Phoenix in My Own Private Idaho by Gus Van Sant (1991) © Warner Bros Inc. 
Translation Shinsuke Kuriyama at WORDSBERG Inc.

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