Fotos: Screenshots via @melanirikoudi und @wherearemyboness

フィルターは新しいアート媒体? インスタ大人気フィルターの生みの親が語る

世界中のひとびとをサイボーグに変身させたヨハンナ・ヤスコウスカ。彼女が実はアーティストだったことは知ってた? 独創的なフィルターで人類の顔を覆った26歳はこう語る。「自分の作品には、常にユーモアと社会批判をたっぷり取り入れるようにしています」

by Marieke Fischer ; translated by Nozomi Otaki
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09 January 2020, 9:20am

Fotos: Screenshots via @melanirikoudi und @wherearemyboness

つい昨日まで無名だったのに、一瞬にして有名人になる。2019年1月、26歳のヨハンナ・ヤスコウスカは、そんなデジタル時代ならではの超現実的な体験をした。親しい友人や家族、それ以外は彼女の作品に興味をもった数人の他人だけだったフォロワーは、1週間で13万5000人以上に膨れ上がり、その数字は今も増え続けている(2020年1月6日時点で80万3000人)。

ライティングエフェクトを使って、ヴァーチャルのワセリンで顔をツヤツヤにしたり、プラスチックのような質感の美しいサイボーグになりたがるユーザーは後を絶たない。それがヨハンナが手がけたフェイスフィルター、Beauty3000、Zoufriya、Blastだ。彼女は(ネコ、ウサギ、イヌ耳フィルターばかりを使いがちな)自己愛に満ちた世代に、まったく新しい〈レイヤー〉を被せることに成功したのだ。

ベルリンで活躍するインスタの申し子に、ナルシシズム、サイボーグ、美しさ、フェイスフィルター制作に携わる方法について話を聞いた。

──あの有名インスタグラマー@uglyworldwideにも使われた3つのフィルターは、どのように思いついたんでしょう。

ARフィルターにおいて、美しさはとても重要です。でも、その美しさはメイクだけに留まりません。私は写真、映画、未来的なものからすごく影響を受けています。たとえば写真では、モデルを美しくみせるのは完璧なライティングです。ARを使えば、偽のライティングをつくることができる。フィルターを使って、ライティングで遊んでみようと思ったんです。そのプロセスを試すところからすべてが始まりました。まずはFacebook、その次にInstagramで。最初のフィルターは、写真の目を黒く塗りつぶすのが好きな友人Zoufriyaのためにつくりました。

──フォロワーが急増して、もっと何か発信しなければ、というプレッシャーは感じますか?

自分の作品に関しては、そこまで感じていません。今までと同じことを続けるだけですから。でも、コミュニケーションに関してはプレッシャーを感じます。みんなの声を聞いて応えたいとは思いますが、時間的にそれは無理なので。いっしょに仕事がしたいと連絡をくれるひとも多いです。それは嬉しいんですが、まずは自分が本当にやりたいことを見つけないと。

──このようなフィルターが人気を集めているのはどうしてだと思いますか?

最近よく目にするフィルターといえば、顔をネコに変えるようなものばかりです。もしくはまつ毛が伸びたり、唇が真っ赤に光るビューティーフィルターとか。私のフィルターは違います。このきれいなエフェクトを生み出すのは、顔の上の薄いレイヤー1枚だけ。そもそもフィルターというのは、ユーザーのためのものですよね。フィルターさえあれば、フォトグラファーしか使えないようなライティングを試すことができる。あなた自身がモデルになれるんです。

──大切なのはユーザー中心ということですね。Instagramのプロフィールにも「あなたがいなければフィルターはない」と書かれています。一目瞭然のメッセージですが、その裏の意味は?

最初は「私はロボットじゃない」と書いていたんですが、フィルターをリポストしてもらえることが増えたので、もっと自分のプロフィールを通してコミュニケーションをとろうと思って。みんな私のフィルターが大好きだといってくれたので、お礼がいいたかったんです。フィルターはそれ自体では意味がない、誰かに使ってもらうためのものです。私はただ、みんなが自分なりに使えるツールをつくっただけです。

──フィルター人気から、今の社会についてわかることはありますか?

今のひとびとは自己アピールに夢中だ、ということです。美しくあること、自分を良く見せること。ナルシシズムですね。これはさまざまな側面があります。自分の身体や作品、ユーモアを表現することもできる。あらゆる個性の表現に使うことができます。このような自己アピールは、必ずしも悪いこととは限りません。ただ、あまり自発的とはいえない場合もありますが。〈本当の〉自分とネット上の自分はまったく違う、というのが通説ですが、ヴァーチャル世界でパーソナリティをゼロから創造できるというのは魅力的ですよね。

──それがあなたにとってのフィルター制作の魅力ですか?

私が興味を惹かれるのは、社会的な実験や、ある状況においてひとびとがどんな行動を取るかを観察すること。作品をつくって公開し、みんながそれを使って何をするかをみて、分析するのが好きなんです。たとえば、みんながどんなふうに私のフィルターを使うのか。ひとは千差万別ですし、好みも行動もコミュニケーション方法もまったく違います。自分の作品がもつ、こういう社会的文脈に関心があるんです。自分の作品には、常にユーモアと社会批判をたっぷり取り入れるようにしています。

──フェイスフィルターの可能性はすばらしいですね。アート作品のプラットフォームにもなりうるのでは?

その通りです。可能性は無限大ですね。たとえば、私たちの顔。目、口、笑顔、表情などは、みんな何らかの機能を果たす〈トリガー〉です。私が思いついたのはアニメーションのポスターで、もっとグラフィックデザインの実験をしてみたいと思っています。たとえば、笑うとタイポグラフィが歪んだり、まばたきすると色が変わる、というもの。人間と既存のモノとの関わりかたを変えてみたいんです。

──フィルターには、あらゆる場所にカメラが潜んでいるこの世界で、匿名性を保つという役割もありますね。

そうですね、仮面みたいな感じです。仮面はずっと昔から私たちの文化に存在していました。たとえばアフリカでは、仮面は一種のコミュニケーションツールとして使われています。インターネットによって、現代では新たな仮面の使い道が生まれました。

──いつか現実世界でもフェイスフィルターが使われるようになると思いますか?

能性はあると思います。でも、それなら人間にデジタルのレイヤーが表示されるメガネみたいなデバイスを身につけないと。『ブラック・ミラー』で現実世界で誰かを〈ブロック〉するというエピソードがありましたが、いつか本当に実現するかもしれません。周りのひとが顔にデジタルアニメーションや仮面を装着するようになったら、普通に会話を楽しめない気もします。実験やパフォーマンスとしては面白いと思いますが。でも、いつか街なかでもARが使われるかもしれませんね。たとえば、ARアプリを使って道案内をしたり。みんなが変なメガネをかけて暮らすのに慣れるかはわかりませんが。

──でも、スマホによって私たちは半分サイボーグになったようなものでは?

『ブレードランナー』や『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』のような映画が好きなので、私はいつか半分ロボットになってみたいです。腕にチップを埋め込んで、ドアを開けられるようにしてみたい。そうすればもう鍵を失くす心配はないので。

──フェイスフィルターの可能性は尽きることがありませんね。何か特別なトレーニングを受けなくても、制作に携わることができるんでしょうか?

〈Spark AR Studio〉というFacebookが開発したすばらしいツールがあります。試してみたいなら、ぜひこのソフトウェアをダウンロードして、FacebookのSpark AR Creatorsのページをフォローしてください。参加者が増えて、アイデアを交換すればするほど、ソフトウェアの性能も上がります。みんなで意見を交換したり、フィードバック、情報共有、サポートもしてくれます。Instagramに関しては、正式に提携しているデベロッパーはまだ少ないですね。でも、いつか誰もが自分だけのフィルターをアップロードできるようになるはずです。

@johwska

This article originally appeared on i-D DE.

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