Photography Ben Weller

追悼:誰もが愛したロンドンのデザイナー、ジョー・ケイスリー・ヘイフォード

1956 - 2019。享年62歳。

by i-D Staff; translated by Ai Nakayama
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jan 10 2019, 7:33am

Photography Ben Weller

サヴィル・ロウで下積みを重ね、その後、ロンドンのテーラー&カッター・アカデミー(Tailor and Cutter Academy)、そしてセントラル・セント・マーチンズで学んだジョーは、ロンドンでストリートスタイル革命が起きていた最中の1984年、自らの名を冠したブランド、Casely-Hayfordを設立した。精緻なテーラリングとストリート感あふれるエッジさを融合させた彼のスタイルは、80年代を代表するデザイナー、スタイリスト、ファッション誌から喝采を浴びた。英国版『Vogue』の表紙を飾った初めての男性(ちなみにU2のボノ。1992年の話)が着用していたのもCasely-Hayfordだった。2007年にはファッション界における功績がたたえられ、大英帝国勲章(OBE)を授与された。

彼の息子チャーリーの助力で、2009年にブランドは再始動。世界的に人気で、メンズウェアコレクションでも注目されるロンドンのブランド、という地位を確立した。2018年にはチルターン・ストリートに初の路面店ができた。

「頻繁に会うわけではありませんでしたが、私たちのあいだには、結びつきは強いけれどちょっと変わったファッションというファミリーのなかで、お互いティーンエイジャーの子どもふたりを育てた、という仲間意識があったように思います」とi-D創設者のトリシア・ジョーンズは回想する。「広い意味での〈家族〉を称えるi-Dの特別号〈Family Future Positive〉プロジェクトに、彼が寄せてくれた作品を覚えています。大物たちの名前のなかに、私とテリー(・ジョーンズ)の名前を見つけたときには、最高の栄誉だと感じました。彼の家族には特別なエネルギーがありました」

惜しまれながら亡くなったジョーを悼み、以下に『Fashion Now 2』から抜粋したジョーのインタビューと、ジェームス・アンダーソンによるイントロダクションを掲載する。『Fashion Now 2』は2005年に発行された、i-Dによる上下巻シリーズの2巻目で、i-Dのフェイバリットデザイナーを称えた本だ。

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Joe Casely-Hayford's contribution to the Family Future Positive project.

ジョー・ケイスリー・ヘイフォードは、30年前にキャリアをスタートしたときに掲げたコンセプト、すなわち、〈伝統を打ち崩しつつも確かな職人技を取り入れた服づくり〉を、忠実に守り続けてきた。ケイスリー・ヘイフォードといえば、伝統的な英国の素材、巧妙なダーツ、プリーツ、レイヤーなどを取り入れた、脱構築されたテーラリングだ。1956年にケントで生まれた彼がデザインの道に進んだのは1974年。ロンドンのサヴィル・ロウ、そしてテーラー&カッター・アカデミーで研鑽を積み、1975年にはセントラル・セント・マーチンズへ進学、1979年に卒業する。その後1年はロンドンの現代芸術協会(Institute of Contemporary Arts: ICA)でアートを学んだ。彼は、そこで培ったファッション、テーラリング、アート、社会史の知識、さらに彼の愛するユースカルチャーの知識を融合して、メンズ/ウィメンズのデザインを手がけている。ロンドン・ファッションウィークデビューを果たしたのは1991年になってからだが、彼はその前からアイランド・レコードのスタイリング・コンサルタントとして働き、1984年にはTHE CLASHの衣装を手がけ、1989年にはデザイナー・オブ・ザ・イヤーにノミネートされるなど、既に成功を収めていた。そして、ルー・リード、ボビー・ギレスピー、SUEDE、U2など大物ミュージシャンの衣装を担当した90年代、彼の評判はいっそう高まった。ケイスリー・ヘイフォードは、ファストファッション・ブランドとのコラボレーションに、早くから積極的だったデザイナーでもある。1993年に彼が手がけたTopshopのウィメンズウェアラインは、かなりの人気を博した。彼の作品の舞台はランウェイだけにとどまらず、1999年にはニューヨークのメトロポリタン美術館の〈Rock Style〉展、2004年にはヴィクトリア・アンド・アルバート博物館の〈Black British Style〉展で取り上げられた。また、i-D、『True』、『Arena Homme Plus』をはじめとする雑誌のファッション特集、社会性のある特集への寄稿も数多い。

あなたを代表するデザインといえば? 頻出するテーマは脱構築的なテーラリングです。

これまでのコレクションのなかで、いちばん気に入っているのは? いつだって、最新コレクションのアイテムがいちばんです。これまで黒人のロック、アフロパンクをテーマにしてきましたが、鮮やかなカラーボタンがついたスリムジーンズに、ワックスプリントがあしらわれたCasely-Hayfordのフーディを合わせたルックが好きです。

自分のデザインを説明するとしたら? 比喩的に述べるとしたら、〈マルチレイヤ―〉。

あなたの究極的なゴールは? 自分らしいデザイン哲学をベースに、限界を知らない服づくりをする。そうやって自分の仕事を楽しむことで、まさに究極的なゴールを達成しながら生きているのです。

あなたのインスピレーション源は? ロンドンの狂気と正気。そして未来。様々な文化の破片がぶつかって生まれる爆発に興味があるんです。

ファッションは政治であることが可能か? ファッションの未来について確実に預言できるのは、これから変わっていくだろうということだけです。今は、政治とは関係のない、ただただ売上重視のものであふれているけれど、政治性をもった新しい流れが生まれる可能性は十分高いと考えます。

デザインのさい念頭にあるのは? グローバル化の影響で現在のファッションは均質化し、個人のアイデンティティの表現が欠けています。同じものばかりが参照され、結果として、ひとの手による作業や職人の技術が失われている。今こそ、自分のアイデンティティを主張するときだと思います。

コラボレーションは重要ですか? そうですね、名実ともにコラボレーションであれば。

あなたのキャリアにおいて、最も影響を受けたのは? 妻のマリアです。彼女は、私の仕事のあらゆる面に影響を及ぼしています。

デザインをするうえで、自分自身の経験の重要性は? かなり大きいですよ。私は黒人で、ロンドンで暮らし、仕事をしている。この事実は、私のデザインに大きくかかわっています。

あなたの仕事においては、結果と過程、どちらが大事ですか? デザイン的にも、倫理的にも、きちんとしたクリエイティブプロセスを通して、ちゃんと機能を果たすようにアイデアをかたちにしていれば、最終的なプロダクトもそれを反映するはずです。だから、結果も過程も、私のなかでは等価ですね。

デザインに苦しむことはありますか? それでも続ける原動力は? デザインで苦しんだことはないですね。でも、とんとん拍子で進むシーズンもあれば、そうじゃないシーズンもあります。ファッションは、きっかり半年ごとに生み出せるものじゃないですし。

周りの反応にデザインの影響を受けることは? 他人のコレクションに、自分のデザインと似たものを見つけてしまったことは何度かありますね。

あなたにとって〈美〉とは? 真実。無垢。

あなたの哲学とは? 正しく、誠実であること。

あなたがこれまで学んできたなかで、もっとも重要なことは? ファッション業界における必然性や理由は、結局全て偶然だ、ということ。

This article originally appeared on i-D UK.