映画『Childhood of a Leader』にみる歴史の教え

『メランコリア』や『ファニーゲーム』に出演した俳優のブラディ・コーベットが初監督作品を発表した。

by Colin Crummy
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31 August 2016, 8:30am

Tom Sweet in The Childhood of a Leader

ブラディ・コーベット(Brady Corbet)は、多感な時期に、グレッグ・アラキの『謎めいた肌』やミヒャエル・ハネケの『ファニーゲーム』、ラース・フォン・トリアーの『メランコリア』など、主題や手法でメインストリームを脅かすほどの存在感を放つ名匠の映画に出演しながら大人になった。現在27歳になるコーベットは、映画を監督しようと思い立ったとき、これまで関わってきた名匠たちのビジョンをすべて含み、かつオリジナリティに溢れたデビュー作を作ろうと決意した。

コーベットのデビュー作『Childhood of a Leader』は、多くの点において、強度を持った作品だ。ストーリーは、第一次世界大戦後の1919年に開かれたパリ講和会議にインスピレーションを受けて書かれ、タイトルはサルトルの短編小説からとられた。後にファシストのリーダーとなる金髪の少年と、その内面に巣食う闇を描いた作品で、スコット・ウォーカーの音楽によって、その後の不吉な未来は助長されている。映画のスタイルは、ハネケの『白いリボン』のように厳格で禁欲的だ。ロバート・パティンソンをはじめとするキャストが演じるキャラクターたちは、その後世界に起こる恐怖を知る由もない。自分にしか作れないものを作る上で直面する困難について、コーベットが語ってくれた。

歴史上の出来事を映画にすることについて
アメリカがイラク戦争に突入したときに気付いたんだ。1919年以来、アメリカの外交政策は今日までほとんど変わっていないということにね。アメリカ人として、この映画のもとになった物語には強い興味を駆り立てられた。そこで自分で映画を作ってみようと思ったんだ。でも、その題材に関するドキュメンタリーはどれもひどくドライでね。ベルサイユ条約締結までの6ヶ月間を主題にした映画なんて、スピルバーグですら製作資金を集められないだろうと思ったね。だから、大々的にスケールダウンせざるをえなかった。そこで思いついたのが、ベルサイユ条約凍結が生んだ人物、その後の世界に大きな闇を招く人物を描くというアイデアだった。ベルサイユ条約は、1800万人もの死者を出した第一次大戦という暗黒の時代の産物だったわけだけど、この条約によって世界はより深刻な暗黒時代へと向かうことになった。

ムッソリーニの子ども時代をストーリーのポイントとして用いたことについて
ムッソリーニの物語が興味深いのは、それが矛盾が矛盾を生んた半生だったということ。ムッソリーニは、すごく女性的な少年だった。それが、これ以上ないというほど男らしさを強調する、女ったらしになった。その事実が、映画にも色濃い影響を与えていると思う。教師に暴力を振るい、ミサを終えた教区民たちに石を投げ、母親に手をあげた——彼は、子ども時代から着々と後のムッソリーニへの道を歩んでいたんだ。幼少の頃から性格がしっかり付いているキャラクターは、物語の主軸としてはうってつけなんだ。

この映画と現代の共通点ついて
この映画ができたのは時代の必然なんだ。当時の女性への抑圧が生まれる構造や、精神性の大切さがことさら叫ばれる状況、世界に蔓延する停滞と権威主義の風潮こそが問題の根源だったと思う。誰か特定の人じゃなくてね。この映画を観たひとは、ムッソリーニという現象が発生するのを許した当時の風潮を追体験して、現代に重ねて見ることになる。今でも、女性軽視や宗教信条といった問題は根強く存在しているからね。そうした社会の弱みが、自己顕示欲にまみれた人間を権力の頂点へと押し上げるんだ。

スコット・ウォーカーと組んだことについて
最近、友達に言われたんだ。「デビュー作でスコット・ウォーカーと組んでしまって、映画監督としてこれからのキャリアで音楽はどうしていくつもりなの?」ってね。

1999年にポップスターへと上り詰めた人物を主題とした次作『Vox Lux』について
スコット・ウォーカーとの共作の後は、休みなしで激甘バブルガムポップミュージックの世界へと移行するよ。前作からの反動だと思うね。時代物のコスチュームを着て、ガスランプを手に撮影していた期間が数年も続いたからね。『Childhood of a Leader』の製作に取り掛かってすぐの段階で、「次はもっと現代的なものを作ろう」と決めていたんだ。1枚のアルバムが作れるぐらいの曲が出来上がってるから、映画のキャラクターとしてアルバムを出そうと動き出してるところだよ。ミュージカル作品なんだ。観てると心がざわついてくるミュージカルだけどね。

Credits


Text Colin Crummy
Translation Shinsuke Kuriyama at WORDSBERG Inc.

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