ジェンダレス系:インターネットに復活する原宿ファッション

2016年、日本のソーシャルメディアを席巻しているファッショントレンドは「ジェンダレス系」だ。性別を超えたスタイルへと進む日本のファッショントレンドは、「男らしさ」という概念に揺すぶりをかけている。

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sep 13 2016, 1:44am

Kondo Yohji

世界的に有名な東京のファッション・サブカルチャーは、現在、休止状態にあるようだ。トレンドというものは、過剰なメディア露出を経て、往々にして同じ道をたどる運命にある。そして、最後に行き着く先はそう「消滅」だ。過去10年間にわたり原宿の裏通りに多く見られた奇抜なファッションもまた同じ道を辿ったのだろうか。もしくは表舞台からは姿を消しただけなのだろうか。いずれにしても、東京の竹下通りを歩いてみてほしい。欧米のメディアが「行けば必ず出会える」と約束している大胆なロリータファッションやギャル系ファッションは、探して歩かなければ見つけることができない。ニッチでユニークな原宿のショップもまた、地域の再開発と観光産業の活性化の効果も間に合わず、次々と閉店に追い込まれている。今や日本のストリートは、あのワイルドな美意識と感覚を、ノームコアに取って代わられてしまっている。

しかし、ここでは「現実世界のジャパニーズ・ファッショントレンド」から「インターネットでのジャパニーズ・ファッショントレンド」に目を移してみよう。そこには、これまでと大きく異なるトレンドが生まれている。

Toman

この1年ほどでInstagramやTumblrに登場した新しいジャパニーズ・スタイルにはいくつかの種類がある。その中でも特に注目を集めているのが、"ジェンダレス系"と呼ばれるスタイルだ。

ジャパニーズ・スタイルに関する情報を発信するブログ「Tokyo Fashion」は、「スリムな体に、メイクをした可愛い顔、染めた髪、カラコン、ネイル、派手な服、そして可愛いアクセサリーをまとった男の子たち。ジェンダレス系男子たちは"女性になりたい男の子たち"ではない。彼らはむしろ、ジェンダーで分けられることを拒絶し、ジェンダレスな美の基準を作り出そうとしているのだ」とジェンダレス系を説明している。

Genking

「ネオイケメン」と呼ばれ、ジェンダレス系の第一人者として活躍しているのは、レッドカーペットに現れても見劣りしないほど美しいブロンドが印象的で、自らの性を「ジェンダレス」と公言しているTVパーソナリティ、GENKING(ゲンキング)と、男性版きゃりーぱみゅぱみゅとでもいうべきJ-Popシンガー、こんどうようぢだ。

Alexander WangやAcne Studio、FENDIに身を包んでたびたび東京ストリートスタイルのブログに登場するユースケデビル(顔のパーツがシャープなことからそう名付けられたらしい)や、真っ赤なマッシュルームカットで新たなジェンダレス・ファッションのアイコンとの呼び声高いカリスマショップ店員、ぺえ(Pey)なども、その両性具有的スタイルと可愛いメイクで、ソーシャルメディアにおいてスター的存在となっている。

Usuke Devil

このような流れは一体どこから来ているのだろうか? 日本はジェンダーに対してお世辞にも先進的とは言えない国だ。政府議会や閣僚だけを見てみても、女性が占めるその数は恥ずかしいまでに低い。東京(の一部)では同性パートナーシップが認められているものの、それでもいまだ一般的にセクシュアリティやジェンダーに関しては黙殺する風潮が強く、公人がホモフォビックおよびトランスフォビック(同性愛嫌悪およびトランスジェンダー嫌悪)を公言しても問題として取り上げられることもほとんどない。

ではなぜ今、少なくとも着る服のチョイスにおいて、ジェンダーの垣根を否定し、「男が男らしい格好をする」という従来の概念を否定する若い男性が増えているのだろうか。完璧を極めたK-POPスター人気の影響はもちろんある。しかしそれだけではないように見える。「Tokyo Fashion Diary」の創設者であり、ジャパニーズ・ファッションの専門家でもあるミーシャ・ジャネットは、「韓国スタイルはもちろん影響を与えているけれど、ネオイケメンは、漫画に登場するハンサムで綺麗な男の子への熱狂から生まれている」と説明する。トイレットペーパー生産よりも漫画誌制作により多くの紙を使う日本だ。漫画が現代のビジュアル文化に影響を与えてもおかしくない。

Pey

もちろん、どれだけ恵まれた遺伝子をもってしても、漫画のキャラクターの完璧な容姿を現実世界で得ることなどできない(Louis Vuittonは広告キャンペーンで完璧なアニメキャラクターを追求した結果、人間モデルの起用をやめ、ファイナルファンタジーのキャラクター、ライトニングをモデルとして起用している)。ジェンダレス系種族(ほとんどがモデル、歌手、もしくはショップ店員)はInstagramを主なプラットフォームして使っている。両性具有的美貌を自由に追求するのがジェンダレス系だが、大きな目に細いシルエット、そして毛穴がまったく見られない肌など、アニメの影響は絶大にして明白だ。

アジアには、プリクラのような画像加工ができるアプリが多数ダウンロード可能になっており、ユーザーは自分をアニメ風イケメンに仕上げて世界に発信することができる。ミーシャ・ジャネットは、ジェンダレス系の人気の陰にあるひとつの要素が、画像編集ソフトの存在だという。「スマートフォンで撮った自分の顔画像をすぐに加工して、それをソーシャルメディアやInstagramにアップする――加工した存在として人気を得る、それが彼らの生きる世界なのよ」

Kazuee

ジェンダレス・ファッションがまだその草創期にあるのはたしかだ。しかしそこは、クールを生み出すことにおいて高い信頼度を誇る日本のことだ。インターネット上ではその人気を着実に拡大している。J-POPバンド、XOXのメンバーであり、ジェンダレス系の声を代弁する存在である"とまん"は、エンターテインメント・ニュース・サイト『モデルプレス』に、「特に原宿は僕みたいな男の子がすごく増えたと思います。ここまで広がったからあと少ししたらこれが当たり前になるんじゃないかな。というか、そうさせていきたいです」と語っている。

日本のサブカルチャーは表参道や原宿エリア周辺に集中しているが、シェア機能が情報を拡散していくソーシャルメディアの特長を考えれば、とまんが言う"当たり前"が実現するのは間違いないと言えそうだ。ジェンダーを超えたバーチャルなファッションワールドを象徴するジェンダレス系、いまも息づく原宿のストリート精神――いまだ女性差別が根強い日本にあって、ネイルをキラキラと輝かせて生きる男の子たちの存在は絶対善だ。そう思えてならない。

@ashleyjclarke

Credits


Text Ashley Clarke
Translation Shinsuke Kuriyama at WORDSBERG Inc.