ジェフ・クーンズとヴァージル・アブローの共通点
大衆文化とファインアートの越境に挑むジェフ・クーンズとヴァージル・アブローには、多くの共通点がある。二人がGARAGEの<アート・トーク>で明かしたその類似とは?
Off-Whiteのデザイナー、ヴァージル・アブローと現代アーティストのジェフ・クーンズが、キュレーターのパイパー・マーシャルの進行のもとアート・トークス>で対談を行った。開始からおよそ20分が経った頃、アブローが半分水の入ったグラスを手に取り、逆さにしようとした。
「ここではやりませんよ、とても素晴らしい会場ですから」と彼は冗談を飛ばした(この対談はAPPARATUSスタジオで行われた。記者も認める非常に素晴らしい会場である)。だがグラスを逆さにするというのは、馴染みのあるシンボルをひっくり返すことで知られる彼の作品のメタファーになっていたかもしれない。
コンセプチュアルなデザインでストリートウェアをハイファッションに昇華させる彼のブランドOff-Whiteにおいても、このような掟破りな行動はそのシグニチャーとなっている。そして数十年前、クーンズは市販のものを使って制作した最初のレディメイドを発表し、ファインアートと大衆文化の関係性を変革したのだった。活動する分野や世代は違えど、クーンズとアブローには多くの共通点がある。現代社会のムードや物質性を鋭く観察し、その結果、日常を難解なものではなくインスピレーションとしてとらえているのだ。
こうした作品の例は枚挙にいとまがない。クーンズはティツィアーノ・ヴェチェッリオと『タラデガ・ナイト オーバルの狼』の両方について詩を書いている。彼は「あのコメディ映画はなんでしたっけ?レーシングカーが出てくる……」と尋ね——観客がそのタイトルを叫んだ——、Wonder Breadのロゴがくっきり印刷されたそのレーシングカーを、商品露出とコンテンツの完璧なる融合と褒め称えたのだった。
アブローは自身のブランドにおけるクロスオーバーを振り返る。「弁護士に聞いたんです。IKEAとコラボしたらどうだろうって。数ヶ月待ったのち、彼はくだんの家具販売店からメールを受け取りました。コラボレーションは現在進行中です。そのプロダクトのひとつである赤いカーペットにはサンセリフの書体でBLUEと書いてあるんですよ。ジャスパー・ジョーンズが1962年に手がけた絵画『False Start』をもとにしています」
美術史と現代カルチャーが斬新にコラージュするヴァージル・アブロー。次にどんなものを出してくるかは予想不可能だ。「今後デザインできるものといったら、言葉くらいしか残っていないでしょうね」とアブローは物思いにふけっていた。どうかOff-Whiteによる具体詩(コンクリート・ポエトリー)の本ができますように。




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