田中真琴インタビュー:すべてを必然と自信に

「泥臭くやっていきます」――。写真から感じるクールな印象とは裏腹に、なんとも昭和な言葉が口をついて出る。地元・京都の大学在学中のミスコンをきっかけにこの世界に足を踏み入れ、1年と少し前に上京し、女優としての活動を開始した田中真琴。 23歳の瞳は、めまぐるしく移り変わる“いま”をどう捉えているのか?

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18 April 2018, 6:02am

上京してわずか1年ほどでドラマ『きみが心に棲みついた』への出演が決まったとき、真っ先に知らせた相手は京都の母親だった。「母に電話したら『大丈夫なん? あんた』って(笑)。私が一番そう思っとるわ!」。彼女の口からは、家族にまつわるエピソードがたくさん出てくる。「上京を決めたときも、母にはすぐに言ったんですけど、父は私がいなくなったら寂しがるんじゃないかって思うと言えなくて、母から伝えてもらったんです。でもそうしたら『真琴は自由なことをやるんじゃないかって思ってた』って背中を押してくれて」もちろん、ドラマの放送は毎回、家族全員で見守っている。

「家族どころか親戚中大騒ぎです(笑)。静岡の親戚からも島根の親戚からも埼玉の親戚からも『見てるよー』と連絡が来るし、おじいちゃんも普段は早く寝るのに、ドラマの日だけは夜10時まで起きて、リアルタイムで見てくれて。それを聞いて改めて“頑張ろう!”って思いました」とはいえ、このドラマ以前の女優としての仕事は、セリフのないミュージックビデオの出演のほかは、舞台が2本だけ。そう簡単にカメラの前で演技ができるほどやさしい世界ではない。それでも数カ月にわたる撮影の中で、少しずつ変化や手応えを感じている。

「演技が良くなったかというと、全然変わっていないと思います(苦笑)。ただメンタルは強くなりましたね。最初の頃は『こいつ下手だな』って思われたらどうしよう……? とかあれこれ考えてましたが、いまはそんなのどうでもいい!と。クランクインのとき、桐谷さんが『お前はやりたいようにやれ。俺たちが全部受け止めてやる』とおっしゃってくださったんです。とはいえ最初は“やりたいようにと言われても、やりたいことすらわかんないです……”という状態だったんですけど、いまは桐谷さんの言葉を信じて、先輩方に甘えられるうちに何でも挑戦してみよう!ダメならやり直せばいいやという気持ちで臨んでいます」

「家から自転車で通えるから」という理由で進学を決めた大学のミスコンでグランプリを受賞。それがきっかけでロックバンド・感覚ピエロのMVに出演し、モデルとしての活動を開始。大学の卒業単位にめどがつき、上京を考えていたところで、舞台出演の話が舞い込んだ。いま、女優として活動していることについて「まさか自分が……」という信じられない思いを抱く一方で、「ああ、やっぱり」とどこか納得する思いもあるという。

「安易な気持ちでやっていい仕事じゃないという気持ちは強かったです。ただ、子どもの頃から将来の絵が描けなくて、OLとして会社で働くのは自分には務まらないだろうって思っていたんですよね。映画が好きで大学時代、配給会社で働きたいと思って、インターンをしていたこともあったんですけど、それも結局、自分の好きなものを無理やり仕事に結びつけていただけだったんですよね。思い返したら、小学生の頃に“いつか私はTVに出ることになる”って思ってたんですよ(笑)」

「将来」という言葉が出たが、本人曰く「もし人生が3回あるなら、女優のほかに考古学者と動物園の飼育員になりたい」とのこと。「子どもの頃から石が好きで、いろんなところで拾ってきては分類したり、博物館にもよく通ったりしていました。ちなみに私の一番の親友が、考古学者を目指していまも勉強を続けているんですよ。だから、私が歩めなかった道をその子が歩んでくれているんだって思ってます」

ここまでのやりとりでも想像がつくが、とにかく好奇心旺盛! そして気になったらとことん深くまで掘り下げていくオタク気質の持ち主であり、それを“実践”に移したくて仕方がなくなるタイプ。「いろんなことに興味があり過ぎて、何でも知りたくなっちゃうんです。そのせいで生きていく中で、あれこれ支障をきたすことも多いんですけど、でもやっぱり知りたい! いまは、お芝居をする中で声帯に興味があって、どんな風に音が組み合わさって“声”になって聴こえてくるのかを調べてます」

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静岡県磐田市出身の母親の影響で「物心ついた頃からスタジアムよりも練習場の方に足しげく通っていた」と言うほどのJリーグ・ジュビロ磐田の熱烈なサポーターであり、その知識量や見識も並大抵ではない。モデルとして切り取られた写真から“クールビューティ”という言葉をイメージしてしまうが「よくそう思われるんですけど、すごくおしゃべりです。自分が知った面白いことを“みんなにも伝えたい!”と思っちゃうんで、よくしゃべります」。女優を続けていれば考古学者の役や動物園の飼育員役に巡りあう機会もあるかもしれない。常に新たな知識や出会いとの連続である女優という仕事はやはり、彼女の天職なのかもしれない。

女優・田中真琴の強みは? そんな問いに対し「経験が浅くて、擦れていないところ」という答えが返ってきた。自分の成長につながると思えば貪欲に取り組み、吸収していく。「まだまだ都会に染まっていないです。上京して半年くらいの頃かな? 道で人にぶつかったときに“ごめんなさい”と言えなかったんです。相手がイヤホンをしていたこともあって謝るタイミングがつかめず、お互いに急いでたし、仕方ないよね? と思っている自分に気づいてハッとしました。上京して一番焦ったことですね(笑)。前は『東京の人はぶつかっても謝らない』って文句言ってたのに、自分がそういう人間になりかけてたんです。それじゃダメだって。いま、まだ真っ白い気持ちで現場に立てているので、それを大事にしようって思います」もうひとつ、彼女から強く感じるのは、まだまだ現場で何もできない自らの現状を認めつつも「自分はできるはず!」という凄まじいまでの自信。それはこの世界で生きていく上で、何よりの才能と言えるかもしれない。「まずは目に見える形で、賞がほしいです」と当面の目標を口にする。

「何言ってんだ、コイツ? と思われるでしょうけど……何でだろう? できないってことが我慢できないんです。いや、本当はメンタル弱くて、すぐお腹痛くなるんですけど(笑)。でも言霊って絶対にあると信じていて、やると決めたことはどんどん口に出していこうって決めました。MVに出ていたときも、同じようにMVに出ている同世代の子たちが周りにたくさんいたんですけど『私は絶対に埋もれません』と言ってました。ドラマの撮影では、ホントにまだまだ全然、できてないんですけど、でも本番になると集中して、スタッフさんの存在を感じなくなるんです。それに気づいて。ああ私、技術が追いついてきたら、いい女優になれるような気がします(笑)」

Credit


Text Naoki Kurozu.
Photography Motohiko Hasui.
Styling Masako Ogura.
Hair and Make-up Yosuke Nakajima.