Photography Mitchell Sams

2019年春夏コレクション トレンドレポート

今シーズン大注目を浴びたルック、大胆なアクセサリー、アイコニックなファッション。

by Felix Petty; translated by Ai Nakayama
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29 October 2018, 6:05am

Photography Mitchell Sams

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Chanel / Jacquemus

1. ビーチ
2019年春夏コレクションのショーは、実際には夏が終わってから発表された。陽が短く、空気がひんやりとしてくる秋に開催されるショーを観ていると、ついこのあいだ過ぎ去った夏のあの輝かしく晴れた日を、私たちが過ごしたバカンスを、街を溶かさんばかりの猛暑を、想起せずにはいられない。ファッションデザイナーたちはきっと、そんな酷暑を知らないだろう。なぜなら彼らは、夏のバカンスを丸々、超高級ビーチリゾートで過ごしていたからだ。キンキンに冷えたのどごし爽快なラガーを飲み、海を見つめ、見事な裸体にサンオイルを塗りたくる。そして、一般人は夏のバカンスで読みたいなんて夢にも思わないようなインテリ本を読む。ふとアイデアが浮かべば、壮麗なヴィラで横になりながら、それをノートにさっと書き込み、ファクスでアトリエに送るのだ。

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Fendi / Simone Rocha

2. ハット
そんなビーチでの必需品は? そう、ハットだ。今シーズンは数多くのハットが発表された。特にビーチで実用的な麦わら帽子。特にValentinoが最高だった。いかんせん大きい(とはいえJacquemusほど大きくはないが)。それにIssey Miyake。やはり大きいし、笑っちゃうほど奇抜なので会話の糸口にもなる。Simone RochaとErdemはゴシック調のビッグヴェールを取り入れた。確かに、ゴスだってたまには海に行くだろう。マーヴィン・ゲイだって歌っている。「Wherever I Lay My Hat That's My Home(帽子をかぶれば そこが僕の家)」!

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Burberry / Fendi

3. ベージュ
今シーズン、ファッション業界を支配する顔のない悪魔たちは、彼らのブランドでミレニアルズ向けのウォーク(woke: 社会問題に意識的)でピンク色の服をつくり、ミレニアルズからカネを巻き上げるのにうんざりしたらしい。ミレニアルズは貧乏だ!高級ビーチリゾートでのバカンスに金なんて出せるはずがない!いわんやラグジュアリー・ファッションをや!そういうわけで、今シーズンのファッションは高級感、ブルジョワ感、特別感を再びまとっていた。もっとも美しく、ブルジョワ的で、高級な色であるベージュを、至るところで目にしたのも無理はない。それなりの生活をしている人たちはベージュを着る。それなりの生活をしている人たちはミレニアルピンクなんて着ない。少なくとも今シーズンは。次のシーズンではまた違うのだろうが。

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Alexander McQueen / Versace

4. オールド・モデル
ベージュがピンクに取って代わったように、〈お年寄り〉が若者を凌駕し、カムバックしたシーズンだった。とはいえ、ファッション用語としての〈お年寄り〉は25~37歳までのことを指す。37歳を超えれば、アイコニックな、伝説的な存在になれる(もしくは話題にも上らなくなる)からだ。そんななか今シーズンは、ベージュと同時に、往年のスーパーモデルたちも大勢ランウェイに戻ってきた。アンバー・ヴァレッタ、リンジー・ウィクソン、ステラ・テナント、グイナビア・バン・シーナス、ジェマ・ワードらがランウェイを歩くライブストリーミングを観ながら、私たちはi-D本社で「高級!」「特別感!」「高価!」「ブルジョワ!」、そんなバズワードを叫びまくっていた。

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Fendi

5. サイクルパンツ
突如としてランウェイを席巻したトレンドのなかでも、食中毒並みの感染力を見せたアスレジャー。私自身、サイクルパンツについて書いた記事を先日書いたばかりなので、どうしてサイクルパンツが有名インフルエンサーたちの脚にぴったり張りついているか知りたい読者のみなさまには、そちらをお読みいただければと思う(残念ながら、自転車ジョークはひとつしかないが)。記事を要約すると、〈ヴァージル・アブロー、キム・カーダシアン、ダイアナ妃、着心地の良さ〉だ。

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Givenchy / Valentino

6. 新しい地味
今シーズンは、良い意味でセクシーさが目立たないシーズンだった。今はセクシーさを求める時期じゃない。パリ・ファッションウィークの真っただ中にブレット・カバノーの公聴会が開かれた今シーズンでは、フロントロウの面々も、様々な要素を大局的な視点から見ざるを得なかった。しかしパリに先駆けたミラノも、本来のグラムでセクシーでイタリア的な雰囲気は影を潜め、いつもより抑えめ、控えめだった。スカートの丈は長め、ドレスは袖付き。全てが地味だ。ミウッチャ・プラダは自らのショーで、解放と保守という相反するテーマを一貫して表現した。力強さと流動性を追求したGivenchy、技巧を尽くした峻厳なオールブラックのValentino。そしておそらく反抗をもっとも明確に示したであろうComme des Garçonsでは〈lumps and bumps(直訳:腫れ物)〉や、切れ目が入ったスーツの下をチェーンによって抑圧されたルックが、女性を取り巻く状況を象徴していた。〈男はクソ〉という言説を、もっともスマートに表現したファッションだった。

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Comme des Garcons / Burberry

7. テーラリング
テーラリングはウィメンズウェアのビッグトレンドであり、今シーズンのベストルックのほとんどがテーラリングを意識したものだった。私たちの目をくぎづけにしたのは、しなやかな手仕事の妙味、技能、生地。つまり、ファッションの基礎だ。テーラリングは大衆化し矮小化したストリートウェアへの回答だといえるだろう。皮肉への倦怠と、誠実な手仕事への愛だ。リカルド・ティッシによる新生Burberryから、デムナ・ヴァザリアによるBalenciagaの3Dプリント、Givenchyの淡い色調、Comme des Garçonsの妊娠中のふっくらしたお腹を見せる切れ目の入ったスーツまで、フォーマルウェアとユニフォームドレスの脱構築は常に変化と進化を続けており、それにより今シーズンもっとも着やすいアイテムが生み出され、現在のラグジュアリー・ストリートウェアを超えた新たなパラダイムへとファッションを推進する、〈型〉が提示された。

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Marine Serre / Gareth Pugh

8. 赤ちゃん
赤ちゃんが嫌いな人なんていない。かわいいし、おかしいし、赤ちゃんが笑ったら、私たちも笑ってしまう。たとえ彼らが自分のクチュールに何かを吐き出そうとも、ひと晩じゅう泣き続けようとも。ファッションが奇跡を体現する赤ちゃんを礼賛し始めたのが今シーズンだった。赤ちゃんたちがランウェイを歩き、ドラムをたたきまくってサウンドトラックを鳴らす姿は、実にほほえましかった。

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Valentino / Marine Serre

9. 実用性
赤ちゃんをファッションに取り込んだあと、ファッション業界がすべきは、そのファッショナブルな新生児たちの収納場所の検討だった。ポケットはどう? 赤ちゃんでいっぱいのポケット! 悪くないね! というわけでパンツもドレスも、あらゆる衣服が大量のポケットで覆われていた。Fendiはコレクションの中心にポケットを据えたほどだ。今シーズンは、それなりの生活を送っている人たちのための、使い勝手のいい生地でつくられた、普段使いできる衣服が主役だった。Valentinoだって洗えるのだ。使い勝手がよく、普段使いでき、信頼できるファッションがテーマだったことは間違いない。

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Chanel / Jacquemus

10. サイズへの意識
ランウェイの同じようなシーンばかり撮った、ぼんやりしたストーリーがInstagramに1000件は上がっていて、その恐るべき〈鏡の間〉を通ることを強いられるこの時代、ファッションでは、絶対に記憶に残るような、ランウェイのヴィジュアル面でのギミックが重宝される。この数年はオーバーサイズで、変なシルエットのアグリー・ファッションが流行ったが、ついに今シーズン、ファッションは比較的扱いやすく、着やすいシルエットに戻ってきた(上の写真参照)。そのぶん、アクセサリーでサイズへの意識を表現するデザイナーが100名はいた。Jacquemusの極小サイズ/特大サイズのバッグ、Valentinoの特大麦わら帽子、Loeweのオーバーサイズのショルダーバッグ。ChanelやMarques'Almeidaで披露されたバッグのふたつ持ちは、このトレンドのポイントを強調している。派手なアクセサリーがランウェイを席巻したシーズンだった。

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Celine

11. フィービー狂
祝宴を台無しにするゴースト。ヨーロッパをさまよう亡霊。技巧を尽くした知的なミニマリスト的コレクションが発表されれば、怠惰なレビューは、フィービーを引き合いに出して怠惰に締めくくる。エディ・スリマンのCelineデビューショーのあとなんて、100万人ものファッションコメンテーターが賛否両論をインターネットに垂れ流した。フィービーがいさえすれば、少なくともみんな黙るはず。フィービー、どうか戻ってきて!

This article originally appeared on i-D UK.