Photography Jacob John Harmer

アレイスター・クロウリーによる最後の魔法、その影響下で暮らす若者たちの憂い

ジェイコブ・ジョン・ハーマーがその写真で切り撮るのは「成長するのが待ち遠しいが、未来についてはまったくわからない」思春期の苛立ちにまつわる物語だった。

by Ryan White; translated by Aya Takatsu
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jul 18 2018, 11:00am

Photography Jacob John Harmer

「純朴さに秘められた美しさを掘り下げたいんです。成長するのが待ち遠しいが、未来についてはまったくわからないという、人生のある時期のことを」。注目の新しいフォトシリーズLost Onesを手がける写真家ジェイコブ・ジョン・ハーマー(Jacob John Harmer)はそう説明した。ロンドンに拠点を置く彼がアナログ写真を始めたのはごく最近のことで、それ以前は動画撮影に注力していた。エイサップ・ロッキーやアジョワ・アボアなどを動画におさめる一方で、NikeやVivienne Westwoodといったブランドのための作品も制作している。しかし、出会った人たちとより近しい関係を築くべく、ジェイコブ2017年に写真プロジェクトを立ち上げ、夜にうろつく地元のキッズたちをドキュメントしようと、故郷ヘイスティングスへ戻った。陽が落ち、光が空の向こうへ消えゆくと、ジェイコブはヘイスティングスの断崖を歩き回った。そうして生まれたのが、静かで雄大なサッセクスの海岸線を背景に、美しくも痛々しいティーンの平凡さをとらえたLost Onesだった。

このアンニュイさは、多くの人にとって馴染みあるものだ。特に、都会から遠く隔たった地方出身者にとっては。そこでは人生が苦痛なほどゆっくり進むので、将来脱出できるかもしれないという見通しがより甘美に感じられる。ジェイコブは、彼の地元の人びとのなかにもまたそうした感情が渦巻いているのだと子ども時代に教えられ、その記憶を作品にしたいと以前から望んでいたという。

「1947年12月1日に、著名なオカルティストのアレイスター・クロウリーがヘイスティングスで息を引き取りました。世界中のマスコミに“偉大な獣”として知られている彼は、様々な場所へ旅をしたのち、ヘイスティングスにあるヴィクトリア朝時代のゲストハウスに居を構えたのです。健康を害していた彼がかけた最後の魔法は、この街に生まれた人をここから逃れられないようにするというもの。その人たちがどこへ旅をしようとも、皆ここへ帰ってきてしまうのです。砂利の砂浜で穴のあいた石を見つけ、それを海へと投げるまでは。そうすれば自由になれるのです。小さいころの友人の何人かはこの言い伝えを信じていましたが、信じない者もいました。こういう写真を撮ることは、私にとって大切な時代、そして私自身をかたちづくった馴染みある経験をつむいだ時代へと自分を引き戻すことにも似ています」

非常に限定した年代に着目したそれぞれの写真の被写体は、大雑把に言えば「大人であることの喜びを探求できる」が「それにともなう決断や重大さに対処できるほどの経験値がない年代」というカテゴリに分けることができるだろう。ストーリーを織り成す被写体の表情には、楽観主義と不安ーー「未知なる場所へと旅立つことへの興奮」ーーが入り混じっている。

撮影を始めてすぐ、ジェイコブはアルフィに出会った。その若い赤毛の青年は、ジェイコブがかつて遊んだのと同じ場所でときを過ごしていた。「崖のてっぺんで、彼は友人とくつろいでいました。私たちは会話をし、写真を撮り始めたのです。私は彼の飾らない性格にすっかり刺激を受け、彼はこのストーリーの中心的人物となりました。またこのストーリーに登場するほかの人物を紹介してくれてたのです」

「完成には1年かかりました。予想していたよりも長かったですね。ですが会うたびに友情が育まれていきました。すぐにウソも遠慮もない瞬間を押さえることができるようになって行きました。最初は私が望んでいると彼らが思うものを、みんな覆い隠していたんです。詮索好きの人というよりも、私は仲間のようになったのだと思います」

「最終的に、私は言い伝えの話をしないことに決め、聞いたことがあるかどうかも尋ねませんでした。ただノスタルジアに浸ることにしたのです。そしてその地を訪れるたび、理解を深めていきました。かなりのときが経っても、いくつかの事柄は普遍的で、それが過去との精神的なつながりとなって、私をそこへ引き戻し続けるのだと」

Credits


Photography Jacob John Harmer

This article originally appeared on i-D UK.