自然体な叛逆のすヽめ:Ms.Machine インタビュー

反骨心むきだしの楽曲とその根底にある純粋さが魅力の新星フィメール・パンクバンド、Ms.Machine。閉塞感の漂うパンク・シーンにおいて急速に注目を集めている彼女たちにインタビューを行なった。

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jul 5 2018, 8:47am

70年代後半にポストパンクの流れでイギリスではThe Raincoats、The Slitsが、そしてスイスではLiLiPUTが生まれた。オール・フィメール・バンドであるこの3つのバンドが源流となり、80年代のThe Flying Lizardsのメンバーとして活躍したビビエン・ゴールドマンやレディ・ガガよりも先に生肉のドレスをまとったリンダー・スターリングによるLudus、そして90年代のBikini Killなどに代表されるRiot Grrrl(ライオット・ガール)ムーブメントへと繋がり、2000年代にはMika Miko、Finally Punk、Pussy Riot、Wet Dog、Purfect PussyやSavagesへと脈々とそのDNAは引き継がれている。

彼女たちはバンドを組んで音楽を鳴らすことで、自分たちのクリエイティビティを解き放った。そして時にはステージやスタジオで声を張り上げ、自分たちの居場所を確保するために闘ってきた。

アメリカやイギリスと日本ではフェミニズムについての理解度が同レベルではないので、比較すること自体がナンセンスなことかもしれないが、日本の音楽産業の中で、メンバー全員が女性だというだけで「ガールズバンド」として消費されてしまう危険性があることは紛れもない事実である。アイドルのような愛らしいルックスの女の子たちがお飾り程度に楽器を持ってステージに立ち、観客たちはその女の子たちを消費していく。

2015年に結成されたSAI(VO)、 MAKO(G)、RISAKO(B)(現在、ドラムはサポートメンバー)によるMs.Machineはそのガールズバンドのレールには乗らず、自らの道を突き進む異色の存在だ。SNSで「Ms.Machineは東京の新しいfemale punk bandです」と標榜し、「『ガールズバンド』とかいう言葉で簡単にカテゴリ分けされて形容されて消費されるようなバンドにはなりたくない。」と主張する。2017年には「FELINE」というイベントを自主企画し、デビューEP「S.L.D.R」を今年の2月にリリースした。

鋼鉄のような低音を響かせ、ポストパンクを軸にメタルやハードコアな側面も感じさせる混沌のなかに、揺るぎない彼女たちの美意識を感じたとき、大げさかもしれないが、日本の音楽シーンの未来に一筋の光が差し込んできたようにも思えた。これからどのようにサウンドが変化していくのか、最も期待している彼女たちにインタビューを試みた。

——バンド名の由来を教えてもらえますか?

SAI:嶽本野ばらの『ミシン』って小説が好きで。あとファッションと関係のある名前がいいなと思って。Ms.Machineって略すとミシンなんですよ。それから女性性を意識して、Ms.って使いたかったんです。マシーンに関しては手塚治虫の『鉄腕アトム』とか『火の鳥』とか機械が人類を壊してしまう……みたいなSF的な世界観が今の時代にすごく合ってるなと思って。

——歌詞は誰が考えるんですか? 歌詞が一行だけって珍しいですよね?

SAI:私です。歌詞を間違えちゃいけないってプレッシャーがあるとライブ楽しめないなあって。でも、EP「S.L.D.R」に収録された曲は長めに書き出したんです。それから聞いたことあるような言いまわしとか削って、絞っていったら一行だけになってた(笑)。意識してそうなったわけじゃなかったです。

MAKO:あんまり違和感は持たなかったですね。もうちょっと歌ってもいいよって言ったこともありましたけど。

——女性の視点を表現したいっていう思いは最初からあったんですか。

SAI:ありましたね。でも、バンドを始めて3年くらい経つんですけど、E.Pに収録したそういうメッセージ性の強い曲は、活動の後半に出てきたものです。バンドと並行して自分がフリーのモデルをやってて、そのなかで感じた違和感みたいなものを歌詞にしたいなという思いが強くでてきたというか。レン・ハンのモデルをやったときにも、自分はアートとしてやっているって意識だったけど、ヌードだから性的な目とかで目で見られることもあって。あと、Ms.Machineのことで業界の先輩に相談したら「女の子なんて賞味期限あるんだし」って言われたりとか、そういうのがいろいろ重なって。

MAKO:私はもともとフェミニズム的な考え方がすごく強くあったわけではないんです。でも歌詞を考えているときに、「女って消費されてるよね」「そういう立ち位置に日本ではなっちゃってるね」って話をして、すごく納得した。自分でも考えるようになったし、どんどん考えが固まっていきました。

RISAKO:私も生活していて差別について考えたこととかあまりなくて、流されていたと思うんです。家では父親が絶対みたいな感じだったので、そういうのが普通だと思ってた。あと、Sonic Youthのキム・ゴードンとかSmashing Pumpkinsのダーシー・レッキーみたいなカッコいい女の人ばかり見ていたので、音楽業界で女の人が弱い立場にいるっていうのも考えたことがなくて。でも、バンドをやっていくうちに、性差で誰かが窮屈な思いをすることを普通にしちゃいけないんだなって思うようになりました。

SAI:印象的だったエピソードがあって、RISAKOが大学時代にバンドサークルに入ってて、「女の子が…」

RISAKO:ああ、「女がハードコア好きなわけがない」って。今の時代にそんな感じあるんだ~って衝撃でした。でも、ひとり女の子で、パティ・スミスみたいなカッコイイ子がいて、その子がリディア・ランチのTeenage Jesus & The Jerksのコピーバンドに誘ってくれて。

SAI:かっけえ(笑)。

RISAKO:それにはめちゃくちゃ影響されました。単音しかないベースとか、最後変なノイズ鳴らすとかそういうの。

SAI:そういえば最初ライブを高円寺のU.F.O CLUBでやったんですけど、そのとき「No Wave」って言われましたね。

MAKO:そうそう、「No Wave」って何やって(笑)。

——ハードコアシーンには昔から続いているバンドは結構いると思うんですけど、若い世代ってあまりいないですよね? ハードコアにこだわってやっていこうって気持ちは最初からあったんですか?

SAI:インディーで、同世代で、女の子で、例えばWWWとかでやっているバンドとかって近いようで……。

RISAKO:遠い(笑)。

SAI:そう、音楽性とか全然違うんです。いろんなバンドと共演しているうちに辿り着いたのがハードコアだったっていうのが正しくて。最初からハードコアのシーンでやりたいって感じではなかったです。

RISAKO:ポストパンクみたいなのをやろうって言っていて、ハードコアも好きだし入れてみようみたいな感じで始めたんですよね。ただ実際インディーの世界でやってみたら肌に合わなくて、うろうろして。そのうち自然に今のポジションに行き着きました。

SAI:女の人だけのハードコアバンドって本当にいないんです。去年Less than TVがオーガナイズしてる〈METEO NIGHT〉っていうイベントがあって、近いハードコアシーンってそのあたりなんですけど、見てて女の人のバンドいないってそのとき気づきました。ニーハオ!!!!くらいだったかな。

——ライブでMCをしないのはどうしてですか?

RISAKO:でも前、「座ってるヤツ立て」みたいなこと言ってたよね。

SAI:それは幡ヶ谷でライブしたときで、お客さんが様子見みたいな感じだったんですよ、なんだこの若い女のバンド、みたいな。最前で体育座りとか。で、「立ってもらっていっすか」って。でも、もともとは股下89って女の人だけのバンドがいて、MCやんないスタイルが自分はすごい好きだったからですね。

——そういう「とっつきにくさ」みたいなのも、大事な要素なんですね。

SAI:自分がバンドやフリーモデル始めたときに「何者かになりたい」っていう思いがあって、だから例えばアイドルとか“かわいいことが売り”のアーティストみたいなところに行く女の子の気持ちはめちゃめちゃわかるんです。でも消費されることを知りながら安易に飛び込んでいくのはなんかイヤでした。すでにビジネスとして成り立ってる世界で、スタッフもお客さんもほとんど男の人で、そんななかで成り上がっても自分の声が消されちゃいそうで。

——バンドで成功しても、いつまでたっても「ガールズバンド」って言葉とか見かたはついてまわりますよね。

SAI:「ガールズバンド」って言葉はもう古いのかなって思ったりもします。一方で聴き手としては、女性アーティストの曲を聴きたいって思ったときに、そうやってカテゴライズしてもらえると見つけやすくて便利なんですけど。

RISAKO:勝手にカテゴライズされちゃいますからね。イベンターに「ガールズバンドくくりで呼びました」って言われても、なんでそのバンドを選んだのかが伝わってこないラインナップだったりすると、理解されてないなって気持ちになることはあります。だけど「ガールズバンド」だからって、変に群れる必要もないと思うので。

MAKO:「ガールズバンド」の流れっていうのはもうすでにあるし、これからも増えると思うので、全然別のものとして考えるしかない。最近だと激しめの音楽 × アイドルっていうのが量産されまくってて、システム化されてます。もう自分たちで勝手になにか名乗っちゃうとか、シーンを作っていくっていうのもありかなって思いますね。

SAI:赤痢とか、戸川純とかすごく過激だったけど、80年代当時はどんな受け止められかたをしていたんだろうって思います。

——海外の音楽のシーンやバンドには注目したり、参考にしたりしていますか?

SAI:やっぱりアメリカのハードコアシーンは強いです。G.L.O.S.Sってバンドとか、KRIMEWATCHとか、TORSO、RINGERなんかは勢いがありますね。アメリカのパンクのシーンってティーンも、女の子もいて本当に多種多様で。日本に比べたら差別が露骨だから、女性差別とか、有色人種への差別とか、そういうフラストレーションに火がつきやすいのかなって思います。

——フラストレーションはMs.Machineにとっても大切な要素ですか?

SAI:ポジティブなメッセージより、ネガティブなメッセージのほうがリアルな感じがして。あまり見せたくない部分だからこそ、強い。あと怒りとか、疑問とか、訴える歌詞が好きで、それを自分なりに解釈していったらこうなりました。

MAKO:高校のときに同級生の輪に入りづらいなって思ってたことがままあって、その居づらさみたいなものがバンドをやっていくうえでのモチベーションにはなっています。バンドでは自分のやりたいこととか、思ってることを好きなように出していいって思えるので。

SAI:学校に友達いなかったっていうのもそうだし、バンドのスタンスとしても「群れなくてよくね?」っていうのが3人の共通項かもしれないです。

——音楽を一緒にやってるというだけで、仲良くする必要はない?

SAI:ハードコアとかパンクって仲間意識が強いので、シーンのそういう結束感って居場所があるように感じて居心地よかったりするんです。ただ仲間内すぎて、お客さんがライブハウスに来づらい雰囲気にしてしまう原因にはなってるのかもしれないです。

——男の子でも行きづらいですからね。女の子はもっと……

SAI:私たちのファンは男の人が多いんです。女の人にも来てほしいって気持ちがあるので、自主企画を考えてたときにそういう話はしました。ライブハウスは深夜帯だと安く借りられるけど、来づらいだろうし、共演するバンドも仲間内だから、興味あるくらいのレベルだったら行きづらい。あと、ハードコアとかって情報も少ないシーンだし、モッシュとか危険な側面もあるし。

——実際行ってみるとちょっと違うんですけどね。

SAI:レコード屋とか、ライブハウスのスタッフさんも男の人ばっかりですしね。なんでなのかなって考えてみると、日本の女性のスタンダードな理想の人生像——というか、働いて、できたらお金のある人と結婚して、子ども産むみたいなの——が目標だったりすると、趣味に時間とお金を使わない人も多くなるのかなって。

——これから共演してみたいバンドとかアーティストはいますか。

SAI:バンドをはじめたきっかけがSAVAGESなので、いつか共演してみたいです。日本だとバンドっていうよりも、HIP-HOPの人たちと一緒に共演してみたいですね。女性蔑視的なフレーズもリリックのなかにあったりするので、Ms.Machineの態度的にはどうなんだろうって思ってなかなか言えなかったんですけど、ハードコアパンクと同じくらい好きなんです。KID FRESINOさんとかCampanellaさんとか、ELLE TERESAさんとか。特に女性ラッパーって言葉も強めでハードコアっぽいなって、SIMI LABのマリアさんとか、あっこゴリラさんも。あと、ODD EYESとかMILKとか東京以外のシーンの人ともやってみたいです。 小さいころからずっと好きなので、椎名林檎さんとも共演してみたいです。

RISAKO:やっぱりSAVAGESにはとても影響を受けたので、そのファンに見てもらえたらすごい嬉しいですね。洋楽の耳というか、そういうのを聴き慣れているひとたちが私たちを見てどう思うのか気になります。

——今後の活動や目標を教えてください。

MAKO:今年はアルバムを作りたいなと思ってますね。

SAI:あと、今私たちのイベントで意気投合したCeremonyというバンドと一緒に曲を作ってます。新しくて面白いことをしようという話をしているので、楽しみにしていてほしいです。