アメリカに暮らすシングルマザー:Marques’Almeida 2018SSコレクション

母親と父親になったデザイナーふたりが、“女性でいること”にまとわりつく違和感をアメリカ的な世界観のうちに描く。

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sep 26 2017, 5:46am

昨シーズン、妊娠中だったマルタ・マルケスはi-Dに、2017年秋冬コレクションのテーマを「着飾ること」「個人主義」、そして「多様性」と明かしていた。ニーナ・シモンの歌が繰り返し流れるスタジオで、マルケスとパートナーのパウロ・アルメイダはプリントと色の衝突をもって、普段着られる"よそいきの服"を作りたいと考えていた。
その6ヶ月後、2018年春夏コレクションのショーが行なわれた朝へと、時間を早送りしてみよう——半年がもたらす変化に誰もが驚くことだろう。Marques'Almeidaのデザイナーは愛娘マリアの親となり、かける音楽もマリアを寝かしつけるためか、ドリー・パートンの「Coat of Many Colors」に変わっている。デザインもまた自然な進化を遂げていた——2018年春夏コレクションは、これまでで最高の出来だとわたしたちは考えている。LVMHプライズを受賞した経験もあるふたり。今シーズンのコレクションを制作するにあたり、成功することへの社会的プレッシャーから、家庭を守ること、綺麗でいること、強く(しかし、強すぎず)あること、そして自信を持っていなければならないということ(しかし、パートナー男性を尻に敷いてしまうほどでなく)まで、女性が社会で強いられる「あり方」について考えたという。i-Dは、そこに異議を唱えるMarques'Almeidaに賛同する! わたしたちは、やりたいことをやりたいようにやるのだ!
Marques'Almeidaのふたりが「M'Aガールズ」と呼ぶ、友人やモデル、そして一緒にものづくりをする仲間の女性たちも、少女から大人の女性へと成長を見せている。今季コレクションには、これまでの楽しさと多彩な世界観はそのままに、しかしセクシーで大人びたルックが並んだ。ストライプやフェザー、シークイン、中国風美術様式のシノワズリなどが多用され、ローライズのカーゴパンツや、炎が描かれたカウボーイブーツに溢れていた。フェザーに覆われたピンク色のシルクドレスには太ももまで包むサイハイ・ブーツが合わせられ、ゆったりとしたサマードレスにはメタリックな胸当てプレートが合わせられた。圧巻だったのは、床までの長さをもたせた赤いブレザーだった。44体あったルックのうち、35体は"M'Aガールズ"がモデルを務めた。
電車の走る音が頭上を通り過ぎるなか、モデルを務めた女性たちは史上最長のランウェイを闊歩した——今は使われていない、ブリック・レーンの鉄道線路だ。ガラスのない窓から太陽の光が差し込み、映画『リトル・ミス・サンシャイン』のオリジナルサウンドトラックからの「And the Winner Is…」に続いて、ドリー・パートンの「Coat of Many Colors」がフィナーレで流された壮大なコンクリート空間に、モデルたちのヒールが床を打つ小気味良い音が響く。仕事に急ぐ女性、友達と軽く一杯ビールを飲みに待ち合わせ場所へと急ぐ女性、託児所に子どもを迎えにいく女性、文学賞もしくは音楽賞を受賞した、あるいは素晴らしいコレクションをデザインして授賞式へと向かう女性——モデルたちはさまざまな女性に扮してランウェイを歩いた。その女性像は、あなたであり、わたしでもあり、わたしたちの誰もが友人に持つ普通の女性だった。その女性像を、金色に輝くカーリーヘアの新人モデル、ペネロペ・ハロ(Penelope Haro)が体現していた。
「ずっとアメリカーナの資料に当たってきました」と、マルケスはショーの後に語った。「子どもを持つようになって、女性につきまとう奇妙な社会通念について考えるようになりました。世界のどこでも、女性が共通して強いられる苦難について。そこで、子ども3人を抱えて暮らすアメリカのシングルマザーという設定を思いつきました。このコレクションの"アメリカーナ"はそこに由来しています」。ショーの音楽についてはどうだろうか? 「『リトル・ミス・サンシャイン』はパウロが好きな映画なの」と言って、マルケスは微笑む。「あの曲を使ってよかった。ふたりとも大好きな映画だから」。ならば、来季のコレクションでは、同じく『リトル・ミス・サンシャイン』から「Super Freak」を使ってもらうよう、ふたりに正式にお願いしよう。