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ノルウェーの次世代を担うミュージシャン6人

Frankie Dunn

あなたの北欧ポップのプレイリストをさらに厚くするアーティストたちを紹介。

2ヵ月前、わたしたちは“7つの山を持つ街”ベルゲンを訪れた。ノルウェーの西海岸に位置するこの街で行われるノルウェー版ザ・グレート・エスケープ(イギリスのブライトンで行われる音楽フェス)<Vill Vill Vest>に参加するためだ。このフェスで見つけたベルゲン・トリビアを紹介しよう。ベルゲンは戦う不思議ちゃんアウロラの故郷である。ドリーミーなポップシンガー、シグリッドが住んでいる。そして雨がめちゃくちゃ降る。想像できた? 自然に囲まれた、あたたかい小さな街は、何もすることがないけれど、だからこそあなたの内なる音楽的才能を育む。魔法のように。<Vill Vill Vest>で出会った次世代のポップスター、ラッパー、プロデューサー、DJはみんな印象深かった。彼らはゆっくりではあるけど確実に、大手レーベルに発掘され世界中で知られていくだろう。まずはi-Dのガイドを通してシーンをのぞいてみて。

ジミ・サムウェア(Jimi Somewhere) 19歳 ホネフォス出身
ジミは物心ついた頃からずっと曲を書いているのだという。だが8年生のとき、親友でありプロデューサーのMilo Orchisに出会い、音楽に真剣に取り組むようになった。16歳になると彼らは一緒に住み始め、その才能を発展させていく。そして現在発売中のジミのデビューEP『MEMORIA』を制作した。メランコリックで甘いリードシングル「Escape」──初めて完成させた曲でもある──で少年はガールフレンド(ライブではバックコーラス)とどこかに逃げ出したい、彼女とずっと一緒にいたいと歌う。

「音楽にまつわるすべてが音楽それ自体と同じくらい大切にしているノルウェーの音楽シーンを示す男になりたい」とメールでジミは話した。「ミュージックビデオ、アートワーク、ライブ。ひとつの世界をつくるチャンスを手に入れたってこと、そうだろう?」 リスナーたちは彼の言っていることをよくわかっている。そしてアンダーグラウンド音楽好きであり、人気女優でもあるクロエ・グレース・モレッツも。彼女はジミの「The Beach」をTwitterで何百万人もいるフォロワーたちにシェアし「これ、すごい」と称賛したのである。今月頭にリリースしたニューシングル「Waking Up」について、彼は自分の音楽が「夏らしさとともに新たな時代の到来を感じさせる映画『キングス・オブ・サマー』や『パロアルト・ストーリー』」の最高のサウンドトラックになると考えているようだ。あたたかくキラキラしたシンセサウンドと、乾いたボーカル。ああ、同感だ。スウェーデンのラッパー、ヤング・リーンが好きな人にもおすすめ。

ファニー・アンダーソン(Fanny Andersen)22歳 オスロ
2017年の春、ブロガーからポップアイドルへ転身したファニーは、ロンドンで初めてのライブを行い、観客を完全にノックアウトした。「仕事を辞めて、100%音楽に向き合うことができた。人生最高の10ヵ月間だったわ」。彼女のパフォーマンスをライブで見る(わたしは3回体験済み)のは、かなり特別なことだ。そこに肉体と精神のすべてを捧げる彼女は脆くもあり、同時にパワフルでもある。
「今ノルウェーにはヒップホップがたくさんある」とファニーは話す。「夢はカルぺ・ディエムとコラボすることかな。10年くらい、彼らはこの国で最高のヒップホップデュオとされてる。政治や移民問題を取り上げるし、今でもヒットを飛ばしてるから。すごく刺激を受ける」

デプレスノ(dePresno)21歳 ベルゲン
デプレスノが17歳のとき、兄は当時恥ずかしがり屋だった彼ーを説得して、携帯でそれを録音させた。「俺が死んでしまったときのために」といってね。その年の彼が手にしたクリスマスプレゼントは、ベルゲン在住のプロデューサー(現マネージャー)とのスタジオセッション。お兄さん、ありがとう! 「エド・シーランとキング・クルールの隠し子」と自らを称するわれらの新しい友は、素晴らしい声と「セックス・アンド・ザ・シティ」にインスパイアされた曲を持っている。フェス会場の屋上で彼とディープで有意義なおしゃべりをし、一緒にダンスを踊り、一緒にいくつかのバンドのライブを見たわたしたちが、彼はとてもいいやつだと自信を持って言える。地元では「Party In The USA」に合わせた酔っ払いダンスで知られているデプレスノ(彼のミドルネーム)は、現在アストリッド・Sとコラボ中。そして生まれ故郷の小ささと狂おしいほどの美しさを賛美している。気が滅入るような雰囲気と雨に関しては、それほどでもないが……。彼のEP『Last Of The Romantics』は現在発売中。

ハイ・トム(Hi Tom)25歳 オスロ
ハイ、トム! あなたのクールなバンド、Rytmeklubbenが大好き。わたしたちのために作ってくれた素晴らしいミックスと、夏に友だちがエース・ホテルで開いたパーティでのDJパフォーマンスを覚えているわ。でもあなたのソロプロジェクト「noisy love songs」はもっと好きになりそう。「大音量で、しかも公共の面前でプレイするのに最適な、環境のためのセレナーデ」と自ら評している新曲「365 ft. LuvOcean」は、2017年の最高傑作。まだヘッドフォンでしか聴いてないけど、もうちょっといい環境を探せるよう頑張るわ。「僕のPCにあるドラムサンプルの名前が“hi tom”だってことに気づいたんだ」と、かつて彼は話してくれた。「自分に話しかけてくれるような気がしたんだ。ノルウェー語で“Tom”は“からっぽ”という意味。だから僕にとって、名前というのは空間に向かってフレンドリーにあいさつすることなんだ」

自分の音楽が、退廃した世界を扱った80年代のアニメ『天使のたまご』のサウンドトラックにぴったりだと断言したこと。そして「シグリッドやフューチャー・ドーターと同じスタジオにいることができたら、たくさんの曲ができただろうな。30秒の濃いポップソングか、VR用のSFオペラのどっちかをつくると思う」と予想したこと。また「今、すごく才能のあるミュージシャン、急進的で実験的なアーティストや活動が、ノルウェーから出てきている。何かが起ころうとしているんだ」と、わたしたちがうすうす感じていたことを裏づけてくれた。

ゲラルド・オフォリ(Gerald Ofori)16歳 トロンハイム
<Vill Vill Vest>では、ゲラルド・オフォリのライブを見れなかった。だけど、見るべきだったと思う。彼の新しいMVを見れば、それが伝わるだろう。音楽一家に生まれた彼は、インターナショナルな見た目と英語でのラップで、ノルウェーのラッパーのなかでも突出した存在になろうとしている。彼によると、自分の音楽がぴったりくる映画は「高校を舞台にしたダークなスリラー……『コーチ・カーター』みたいなやつかな? 」

彼は「an$wering machineについての曲を作った16歳の男」としてもよく知られている。だってそれが鮮烈なデビューシングルだったから。「俺は、リスナーが踊れて泣ける音楽を作ってる。思わぬ幸運を手に入れたときは、その両方をやってしまうだろう? コミカル寄りの悲劇コミカルのようなね」。もしほかのノルウェーのミュージシャンとコラボするなら、「ラッパーのセジナンド(Cezinando)だね。僕が知るかぎり、最高の作曲家。彼がすることはすべて刺激的で……しかも実際の彼はものすごく背が高いんだ。おかしなくらいにね。ワンダー・ザ・ボーイとP・フローもすごいラッパーだよ──これからのプロジェクトのために一緒に仕事をしているところさ」。ゲラルド・オフォリのEP『Missed Calls』は、Attack Musicから2018年1月発売。

ヒャータン・ラウリッツェン(Kjartan Lauritzen)22歳 バレストランド
うん、このMVは形勢を一変させるものだ。そうではないだろうか? ヒャータン・ラウリッツェン(本名:Per Áki Sigurdsson Kvikne)は、ノルウェーでいう山田太郎のようなありふれた名前と教えられた。クラスの人気者だった彼が、音楽制作を学び始めたのは4年前。そして今のところ順調にいっている。「順調」というのは、大規模なライブを満員にし、彼を題材にした漫画が描かれ、単に音楽を発信するだけでなくフェスやコンサートを通して近年ベルゲンのシーンを震撼させている集団<Vibbefanger>の一員となったということを意味している。

<Vill Vill Vest>の開催期間中、ファニーとデプレスノは、レッドブルがスポンサーしている素晴らしい<Vibbefanger>スタジオで開かれているパーティにi-Dチームを誘ってくれた。ヒャータンとはそこで出会った。「誰からも遠い音楽を作っているような気がするんだ」と、彼はわたしたちに言った。「ほかのやつらはひとつのジャンルにとどまっているけど、俺はポップ、トラップ、テクノ、そしてそのほか何でも自分が好きな音楽をつくってる。それに俺はバカで、おもしろくて、変な男なんだ」