Photography Lee Guno

K-POPアイドルを手がけるヘアスタイリスト5選

BTSやRed Velvetなどのヘアスタイリングを担当している5人のアーティストに話を聞いた。

by Park Gahyun; translated by Nozomi Otaki
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30 May 2022, 3:00am

Photography Lee Guno

ひとりの子育てに村全体の協力が必要なら、K-POPスターの人生を成功させるには宇宙全体の協力が必要だ。もちろん、このような職業に必要なのは本人の才能や確固たる決意だが、それだけでなくマネージャー、振付師、パーソナルトレーナー、アシスタント、ソーシャルエディター、ファッションスタイリストなどのチームの力にも頼っている。もうひとつの欠かせない役割といえば、高い技術を持つ想像力豊かなヘアスタイリストだ。

結局、韓国のアイドル業界は美学がすべてだ。カムバックや新たなライフステージの始まりを知らせるのに、ニュースの見出しを独占するヘアカット、カラー、前髪以上にふさわしいものがあるだろうか。セレブのヘアスタイリストの影響力は計り知れない。最高のルックは美容ブランドとのスポンサー契約につながるだけでなく、新たなトレンドを生み出し、ファンダムを超えて世界中に広がっていく。

斬新で絶大な影響力を誇るスタイルについて探るため、K-POPアイドルとのコラボレーションで知られる5人のヘアスタイリストに話を聞いた。

hair stylist jihee park stands in her salon wearing a denim dress

パク・ジヒ

ピアニストになるという子ども時代の夢を捨て去り、パク・ジヒは新たな目標を持って美容学校に入学した。「ピアニストとヘアスタイリストは似ていると気づきました。両方とも自分を表現することで、他の人びとに感動を与える仕事です」と彼女はいう。現在はソウル一等地の狎鴎亭(アックジョン)で自身のヘアサロン〈Holy〉を経営しながら、DEAN、イ・ハイ、Crush、BE’O、Lil Cherry、PROWDMON、LACHICA、Colde、Reddyなど多数のアーティストを手がけている。

──この仕事に最も大切なことは何だと思いますか?

ヘアスタイリングがただの手先の技術だとすれば、上手いひとはたくさんいます。でも、最高の仕事をするために最も大切なのは事前準備、つまりモデルの顔や頭を分析し、その想いを表現するためのアイデアを探ることです。

──あなたの仕事について、もう少し詳しく教えてください。

スタイリングからカットやカラー、ウィッグの制作まで何でもします。ヘアスタイリングのプロセスは、作品の制作と似ています。表現したいアイデアを発展させ、アーティストの想いを最もよく表す作品がつくれるよう、彼らと一緒に前もって準備します。

──ユニークなヘアスタイルのアイデアはどこから湧いてくるのですか?

前はネットで他のひとの作品を見ていましたが、最近は自然からインスピレーションを受けます。例えば、夕焼けを見れば誰だって癒されるでしょう? そういう気持ちを表現するために、オレンジ、ピンク、紫、エメラルドを混ぜ合わせてみました。

──キャリアの次の目標は?

毎回新鮮な気持ちでプロジェクトに全力で向き合いながら、とにかく今の仕事を長く続けるのが一番の目標です。機会があれば、私の作品を本にしたり、美術館で展示してみたいです。

hair stylist jihee park stands in her salon wearing a denim dress

パク・ネジュ

パク・ネジュは、〈求めれば与えられる〉を体現する存在だ。学生時代に独学でヘアスタイリングを学んだあと、著名なヘアスタイリスト、イ・ヘヨンにアシスタントになりたいと申し出たことをきっかけに、彼のキャリアはどんどん加速していく。彼女はその申し出を受け入れた。「イ・ヒョリのBiothermのCM撮影は、今でもはっきりと覚えています」と彼はいう。「セットに行ったのはあれが初めてで、すぐにその雰囲気に夢中になりました」。それから20年、彼は自身のサロン〈Bit and Boot〉を立ち上げ、BTS、EXO、TWICE、NCT、The Boyzなどさまざまなアーティストとコラボしてきた。

──芸能人のクライアントと仕事をするようになったきっかけは?

SMエンターテインメントのヴィジュアル/アートディレクターのミン・ヒジンから、東方神起のアルバム制作について連絡が来たのがきっかけです。それから、たくさんのK-POPアーティストと仕事をしてきました。EXOはデビュー前からずっと担当していますし、BTSとも2ndアルバムのときから一緒に仕事をしています。当時TWICEのヘアスタイリングを担当していたメイクアップアーティストのウォン・ジョンヨと、サロンをオープンしました。最初は2、3席しかなかった店が徐々に大きくなり、今のBit and Bootになりました。

──プロジェクトにはどのようにアプローチしますか?

ヘアスタイルのプランを立てるだけというより、全体を見るようにしています。髪質や頭の形は人それぞれなので、リファレンスと全く同じ仕上がりにするのは難しい。フォトグラファーは誰か、もっと広いコンセプトは何か、など、全体像を把握することが、僕にとっては何よりも大切です。

──特に印象に残っているプロジェクトについて教えてください。

数年前のMAMA(※​​Mnet Asian Music Awards)で、僕がヘアスタイリングを担当したBTS、EXO、TWICEが〈今年のアルバム賞〉〈今年の歌賞〉〈今年の歌手賞〉を総なめにしたことがありました。一緒に仕事をしたアーティストが受賞して、誇らしい気持ちでいっぱいでした。BTSと一緒にグラミー賞授賞式に出席して、テイラー・スウィフトやアリアナ・グランデなどのスーパースターに囲まれたときも感動しました。

──あなたのインスピレーション源は?

1970〜1980年代の映画、フォトシュート、ミュージックビデオです。ネオンカラーのパンクヘアやデヴィッド・ボウイのマレットヘアなど、ユニークで懐かしいヘアスタイルからも、たくさんアイデアをもらっています。

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ユン・ソハ

2019年、ユン・ソハはRed Velvetのウェンディのロングヘアを無造作なボブにカットし、新たなビューティートレンドを生み出して韓国全体に影響を与えた。突然、ソハは国じゅうの注目を浴びるヘアスタイリストとなった。しかし、IVEなど他のK-POP女性グループも担当する彼女は、コラボレーションの大切さを強調する。「どんなにかわいい髪型でも、服やメイクと合わなければ、〈トゥーマッチ〉になってしまいます」と彼女はいう。「ヘア、メイク、スタイリストのチームが力を合わせないと。それが仕事を成功させるうえで最も大切なことです」

──いつからK-POPグループを担当するようになったのですか?

Red Velvetとはアルバム『Russian Roulette』から一緒に仕事をしていて、主にアイリーン、スルギ、ウェンディを担当しています。IVEはデビュー前から担当しています。カットやカラー、長さの提案など、アルバムのコンセプトに合うヘアスタイルの全体的なディレクションが私の仕事です。グループのメンバーを担当するときは、それぞれの魅力のバランスをとりつつ、どうすればグループとしてのコンセプトを維持できるかをよく考えなければいけません。

──ウェンディのあの有名なショートヘアは、あなたがカットしたんですよね?

実はあのデザインは、閉店後ウェンディと話していたときに生まれたものなんです。彼女は久しぶりの休日で、スタイリングを繰り返して傷んだ髪を切りたがっていました。彼女が見せてくれた写真はほとんどがレイヤーカットで、日本のストリートスタイル風のものばかりでした。当時は米国ツアーを控えていて、Red Velvet全体のイメージに合うヘアカットをする必要があったので、ウェンディのアイデアに少しひねりを加えることにしました。アーティストと話したり冗談を言ったりするなかで、いい意見をもらえるんです。スルギの前髪も、「ウィッグを使うより切っちゃったら?」と提案したのがきっかけで生まれたものです。

──印象に残っているプロジェクトについて教えてください。

Red Velvetの『Red Flavor』のアルバムジャケットとMVです。当時は韓国にカラフルなヘアアクセサリーを売っている店がほとんどなかったので、キッチュなコンセプトを守るために日本まで行ったのを覚えています。

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キム・ウジュン

キム・ウジュンは、愛犬ドクスンと、彼の拡大し続ける〈ヘア帝国〉とともにソウルで暮らしている。ラッパーBeenzino(ビンジノ)や俳優ユ・アイン、キム・ヨングァンなどを担当するだけでなく、有名誌の撮影にも携わり、髪に関するコンテンツを公開しているYouTubeのチャンネル登録者は10万人を超える。

──スタイリングに興味を持ったきっかけは?

学生時代にテレビドラマ『花より男子~Boys Over Flowers』で、ク・ジュンピョの奇抜なウェーブヘアを見たことです。この髪型は〈ソラパン(※日本のコロネパンに似たパン)ヘア〉として有名になりました。こっそり母のヘアアイロンを学校に持っていき、クラスメイトの髪で再現しようとして、手を火傷したこともあります。でも、それが成功するたびに達成感があったので、ヘアスタイリストになりたいと思うようになりました。

──プロジェクトにはどうアプローチしますか?

トレンドのことを考えるより、アーティストの個性をもとにスタイリングするようにしています。流行ばかり追いかけていたら、みんなと同じ髪型になってしまう。それはつまらないでしょう。

──どこにインスピレーションを求めますか?

おかしいと思われるかもしれませんが、僕がインスピレーションをもらうのは子どもの髪型です。実は、幼稚園の先生になりたいと思っていた時期もあったんです。ぐしゃぐしゃの髪で自由に走り回る子どもたちがすごくかわいく思えて。それをファッション記事の参考にしたこともあります。

──YouTubeチャンネルについて教えてください。

いつもセットのムードメーカーと呼ばれて、面白いと言われるので、いろんなひとからその様子をビデオに撮ってみたらどうかと勧められたんです。最初はYouTubeが仕事に良くない影響を与えるんじゃないかと心配でしたが、今はヘアスタイリストとしての仕事にもプラスになっています。

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エノック・リー

高校時代、両親から地元の美容室で働くことを勧められたというエノック・リー。そこで同僚から世界的なファッション誌に紹介されたことをきっかけに、彼の独創的な世界観が花ひらく。「自分がやりたいのはこういう仕事だ、とすぐに気づきました」と彼は当時を振り返る。今では一流の俳優やモデル、アイドルのヘアスタイリングを手がけるエノックは、長いキャリアを通して数多のビューティートレンドを生み出してきた。

──あなたの仕事について詳しく教えてください。

ほとんどは雑誌のエディトリアルや広告です。モデルのシン・ヒョンジやぺ・ユンヨン、俳優のイ・ヨンエ、イ・ジヌク、コ・ス、ハン・ソヒ、それからアイドルも担当しています。エディトリアルの撮影は、セレブの全く新しい一面を引き出すことがすべてです。それぞれのブランドを損なうことなく、いろんなルックを探す手助けができるのは楽しいです。

──特に印象に残っているのは?

iKONのBOBBYのスタイリング。

 ──プロジェクトにはどうアプローチしますか?

撮影やプロジェクトの全体的なコンセプトの範囲内で、自分のテイストを活かせるようにベストを尽くします。もちろんコンセプトは必ず守りますが、大切なのはアーティストとして自分の感情を込めることだと思います。

──どこにインスピレーションを求めますか?

リチャード・アヴェドンやスティーヴン・マイゼルなど、アイコニックなフォトグラファーの昔の写真です。自分らしいスタイルを維持し、今のトレンドに流されないように、SNSは見ないようにしています。他のスタイリストの作品を見ると、無意識のうちに似たようなスタイルをつくってしまうので。

──キャリアの次の目標は?

最近、あるフォトグラファーから、作品をまとめた本を作ったらどうかと提案されました。今は誰でもネット上で作品をシェアできる時代ですが、紙はやはり魅力的な媒体だと思います。

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