Photography Elisa Sue Young Park

LA発のガールズバンド THE LINDA LINDAS インタビュー

「Racist, Sexist Boy」で一躍ブレイクしたLA生まれのパンクキッズは、ただの一発屋ではないことを証明した。

by Hannah Ewens; translated by Nozomi Otaki
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17 February 2022, 10:49am

Photography Elisa Sue Young Park

マスクをつけた4人の少女が、Zoomの画面に現れた。THE LINDA LINDASはメンバーふたりの故郷に集まり、大切な1週間に向けて一緒に髪を切ったばかりだった。それはデビューアルバム『Growing Up』の発表、『レイトx2ショー』への出演、一連のインタビューだ。チラチラと見やる視線やカメラの外の聞き取りづらい回答から、保護者たちが周りで私たちの会話を見守り、必要ならばアドバイスをしようと待ち構えていることが、すぐにわかった。

しかし、最年少メンバーでドラマーのミラ・デ・ラ・ガルザがまだたったの11歳であることを考えれば、それも仕方のないことだ。他のメンバーもずっと歳上というわけではない。ミラの姉ルシアは14歳で、姉妹のいとこにあたるエロイーズ・ウォンは13歳、家族ぐるみの友人で一番積極的な最年長メンバー、ベラ・サラザールは17歳だ。ベラは現在高校3年生で、クリスマス前の期末試験の最中だった。

「学校ではあまり授業に集中してないから、試験もダメかと思ったけど、その割にはそこそこできた」とベラ。「バンドに集中したいと思うこともある。そのほうが毎日楽しいことや新しいことが起きるから」彼女たちの成功に慣れないクラスメイトも多いが、ベラはそこまで気にしていない。「私を有名人と呼びたがる子が多いから不思議。そんなことないって言ってるのに」

The Linda Lindas stand together wearing colourful clothes against a bright blue sky in LA

それとは対照的に、2番目におしゃべりなメンバーで、物怖じしない性格のルシアは、昨年8月に転校したばかりで、まだ誰も彼女がバンドの一員だと気づいていないという。「いつかは話すつもりだし、別に隠してるわけじゃないけど、時々はちょっと離れることも大切」とルシア。「それに学校の出来事について何か書きたいなら、こういうはけ口があったほうがいい。学校でみんなに『次は何をするの?』『これからの予定は?』『家に行ってもいい?』なんて質問攻めにされるプレッシャーも感じなくて済むし」

彼女のクラスメートにとって、ルシアと2021年にネットで大流行した「Racist, Sexist Boy」MVの少女が結びつかないのは何とも不思議だ。これは彼女たちの最新アルバムの最後の曲で、図書館で撮影されたライブパフォーマンスを仲間以外のひとが観るとは想像もしていなかったという。

このビデオがネットで拡散したとき、ベラは学校の授業中だった。「とにかく携帯がずっと鳴り止まらなくて大変だった。インスタを開いたら、フィードが私たちの図書館のビデオで埋め尽くされていた」と彼女は振り返る。いっぽう、ルシアとミラは家でZoomで授業を受けていた。PARAMOREやBEST COASTなどと仕事をしてきた、グラミー賞受賞暦のあるプロデューサー/ミキサーの父親が、庭のスタジオから駆け込んできて、彼女たちにこう叫んだ。「お前たちバズってるぞ!」「訳がわからなかった。〈バズる〉の意味もよく知らなかったし」とルシアはいう。

The Linda Lindas hang out on a stairwell wearing colourful 90s clothes
The Linda Lindas pull faces and do silly poses against a brick wall

世界中の新たなファンから、賞賛と応援のメッセージが殺到した。2020年3月、10歳のミラがクラスメートから「父さんに中国人に近づくなと注意された」と言われたという人種差別的な出来事をもとに、ライオット・ガールのパンク精神を感じさせる曲を作った、有色人種の少女たちのグループが登場したのだ。「〈Racist, Sexist Boy〉についてのメールをもらって、怒りから生まれた曲が、みんなをエンパワメントする曲になったことがわかった」とルシアは誇らしげに語る。

数年間ギターを習っていたベラ以外のメンバーは、バンド結成前はドラム、ギター、ベースの経験はなかった。しかし、それは大した問題ではなく、彼女たちはすぐに楽器を学んだ。「どんな曲だって、簡単なバージョンでもエネルギーを込めて楽しく演奏することができる」とエロイーズはいう。「それが大切なの」

さらに、ミラとルシアの父親がアルバムのプロデュースを手がけるなど、音楽業界に携わる両親の影響もあり、彼女たちは他の家庭よりも音楽が身近な環境で育ってきた。

「裏庭に、楽器が置いてあるコントロールルームみたいな部屋があった」とルシアはいう。「よく中に入っていたけど、何の部屋かはよく知らなかった。みんな『パパと一緒に仕事なんかしたくない!』みたいなのを想像するかもしれないけど、父は私たち4人に、長年自分が業界で学んできたことや私たちが知るべきことをすべて教えてくれた」

ベラも、友人の父親についてこう語る。「よく知らないひとに囲まれていたら、普段どおりにやるのは難しかったと思う。彼は私たちをプロとして扱ってくれて、子どもだからってバカにしたりしない」

The Linda Lindas pull faces and do silly poses against a brick wall

今回のアルバムにライオット・ガール的なサウンドを期待するひとも多いだろうが、本作には各メンバーの好みを反映した多様なロックのサブジャンルやヴォーカルスタイルの曲が収録されている。ベラは収録曲「Cuantas Veces」をスペイン語で作詞した。「私にとって、ラテン文化はとても大切なもの」と彼女はいう。「ロックやスペインの音楽、ボサノバなど、いろんなラテン音楽を聴いて育ったから、それをアルバムに取り入れたかった」

ルシアはBLONDIE、スネイル・メイル、WOLF ALICEが好きで、彼女の妹はSLEATER-KINNEY、BIKINI KILL、LE TIGRE、THE JULIE RUIN、THE GO-GO'Sのファン。エロイーズはLAパンクの大ファンで、アリス・バッグ、THE CLASH、PUBLIC ENEMYをお気に入りのアーティストとして挙げた。「あとはJAWBREAKER!」と彼女は彼らの名前がプリントされたTシャツをカメラに向かって引っ張りながら叫んだ。彼女たちは、今年のJAWBREAKERのツアーのロサンゼルスとニューヨーク公演に参加する予定だ。

ネコにまつわる楽しい歌のほか、このアルバムは、パンデミックとその中で成長するとはどういうことか、というテーマについても歌っている。「将来について考えなきゃいけない年頃だけど、パンデミック中にそれを考えるのはなかなか難しい」と青春映画のサウンドトラックのようなポップロックのタイトル曲を作ったルシアはいう。「大切なひとたちの側にいることもできなくて、どうやって成長しろというの、って思ったりもする。でも、避けることはできないんだと考えるようになった。結局、みんな成長しなければいけないんだから」

The Linda Lindas hang out in an outside stairwell in LA

2年間の断続的なロックダウンを通して、彼女たちはみんな大切な教訓を学んだ。ベラは人間関係を大切にすることを学び、エロイーズは駆け出しのバンドと自分が今の活動に参加できていることを当たり前に思っていたことに気づいた。ルシアは、パンデミックの終わりに自分や友人が何をしているかが気になって仕方なくなった。それらがすべて、直接アルバムに反映されている。

「でも結局はそもそも〈終わり〉があるかもわからない。『よし、これでパンデミック後の自分になろう!』なんていうのは無理でしょ。今自分に正直になって、自分にとって大切なことをするべき。私にとっては、それは仲間と私たちの音楽。みんなで一緒に乗り越える。仲間がいて本当に幸せ」

いっぽうミラは、自身の変化を説明しようとして言葉に詰まり、バンドメンバーや大人たちに助けを求めた。「パンデミックが始まった頃の私は、今とは全然違った」という彼女の声は、次第に小さくなっていった。そこでベラが「確かにすごく背が伸びたよね」と冗談交じりに相槌を打つと、全員が最年少メンバーと一緒になって笑った。まさにTHE LINDA LINDASらしい、互いに支え合いながら何事も思い切り楽しむ精神が感じられた瞬間だった。

THE LINDA LINDASのデビューアルバム『Growing Up』は4月8日、Epitaph Recordsから発売。予約はこちら

The Linda Lindas are captured mid-dance move in an LA park

Credits


Photography and styling Elisa Sue Young Park

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