ヴァージル・アブローが私たちに遺した8つの教訓

2021年11月末、41歳でこの世を去ったヴァージル・アブロー。彼がi-Dとの対話の中で語った教えを、厳選して紹介する。

by Douglas Greenwood; translated by Nozomi Otaki
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09 December 2021, 10:33am

この世代を代表する多作なアーティストであり、独創的な活動で知られるヴァージル・アブローがこの世を去った。41歳だった。しかし彼は晩年、2019年に珍しいがんと診断されて以降、今まで以上に忙しい日々を送っていたように思える。

Louis Vuittonメンズウェアのアーティスティックディレクター、OFF-WHITEのファウンダー兼クリエイティブディレクター、LVMH史上最も影響力のある黒人幹部、DJ、引く手数多のコラボレーターと、さまざまな顔を持っていたヴァージル。あまりにも短い生涯を通してあらゆることに挑み、比類なき情熱と粘り強さをもって、カルチャーに消えることのない痕跡を刻み込んだ。i-Dが長年にわたり、ショーやデジタルプラットフォーム、誌面などで、ヴァージルと何度か時間をともにできたのは、この上のない幸運だった。彼はいつも明確な意図と知恵をもって話したが、同時にその言葉は温かみに満ちていた。熱心さと勤勉さで名声を築いたものの、うぬぼれとは無縁のひとだった。

トップへと上り詰めるなかで、黒人クリエイターがほとんど在籍しないさまざまな分野で歴史をつくり、後に続く人びとへ手を差し伸べ、若いアーティスト、デザイナー、モデルたちを鼓舞し続けた。自らのキャリアによって開いた扉を、彼は決して閉ざすことはなかった。その過程で学んだことを積極的に共有し、同じ道を志す人びとの模範となる青写真を描いたのだ。

そんな彼のアート、仕事、ファッション、定義にまつわる貴重な言葉を、厳選して紹介する。

1. 避けるべきは停滞──2015年 インタビュー

「もし自分が言ったことを本当に実行したいなら、このインタビューは読まずに行動に移すんだ。今日そのTシャツをプリントしよう。今日っていうのは、つまり今から30分後ってことだ。行動できないとしたら、それが君の問題なんだ」

2. アイデアの大切さ──同上

「僕はアイデアを練るのが大好きなんだ。結局、これが思いがけず僕の人生になった。アイデアを出しながら昼間の仕事をやり過ごす。1日30個は出すんだ」

3. 破壊的になっても偉大になれるわけではない。大切なのはインクルーシブな態度と鋭い洞察力──2018年 インタビュー

「僕が本気でファッションというものを根底から覆そうとしているとしたら? 僕にとっては簡単なことだ。でも、破壊するだけでは何にもならない。僕がやろうとしているのは、自分の身の回りの環境や自分が育ったコミュニティを表すものをつくること。もっと多くのひとに同じことができるように」

4. “現代性”を大切に──2019年 Louis Vuittonデビュー後のインタビュー

「現代性という概念は、インクルーシビティやあらゆる立場の人びとを受け入れ尊重するという僕の信念をよく表している。この概念は、僕が仕事で追求するものの根底にある。このブランドのこの地位には、社会はこんなふうにもなり得るという可能性を表現する責任が伴う」

5. 意味を与えることにこだり過ぎない──同上

「僕がつくるものが他の誰かにとってどんな意味をもつのかは、そのひとに委ねることにしている」

6. 描くヴィジョンは成功だけでなく、もっと大きな何か──2015年 インタビュー

「ある意味、僕の人生はひとつの大きなアートプロジェクトのようなもの。ステージの中央にいるのは僕ではなく、アイデアを提案し、それに取り組み、アーティストがそれを世界に提示する後押しをし、その反応を見守ること──それからそういう雰囲気を利用して人びとを感化し、新たなアイデアを生み出すことだ」

7. ドミノ効果=〈創造して受け継ぐ〉精神について──同上

「僕がIllustratorの前に座ってスクリーンプリントで出力しなければ、何も実現することはない。すべてはドミノ効果だ。わかりきったことだけど、これを読んでいるひとは、とにかく作品を完成させて形にして、友達に配ってほしい。そうすれば、君はもうドミノ効果のフェーズに入ったことになる」

8. 現実を映し出すファッションを──Louis Vuittonデビュー後のインタビュー

「ファッションの世界には、次に備えてやるべきことが数え切れないほど存在する。でも、それほど謎めいた世界ではない。ファッションの世界の外で起きていることと同じだ。時にファッションは現実を無視して、自らを偶像化したりもする。でも、時代は常に変化しているし、正しい方向さえ見据えていれば、未来はそれほど遠いものではないんだ」

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