Ian Swanson, Kneeling Troll

孤立したアーティストたちを繋ぎ合わせるオンラインコミュニティ『Solo Show』interview

パンデミックにより苦境に立たされた文化シーンは多数あり、現代アートシーンも例外ではない。Solo Showはパンデミックにより離ればなれになってしまったアーティストたちをオンライン空間で繋ぎ合わせ、新たなコミュニティを創造する。

by Kazuki Chito
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11 November 2021, 3:13am

Ian Swanson, Kneeling Troll

パンデミックにより苦境に立たされた文化シーンは多数あり、それぞれの特性を生かしながら、順応し、独自の進化を遂げた。クラブシーンはオンラインでのパーティーという新たな可能性を模索したり、ファッションシーンはファッションショーの映像をソーシャルメディアで公開することで、独自の世界観を表現することが出来ることを見つけたように思う。現代アートシーンも例外ではない。アーティストのためのオンラインコミュニティ『Solo Show』はパンデミックの影響で離ればなれになってしまったアーティストたちをオンライン空間で繋ぎ合わせ、活動の継続をサポートするためのプロジェクトとして、TorreIanによって2020年初頭にローンチされた。

Solo Showは数ヶ月毎にウェブサイト上で展示会を開催し、その展示会のテーマに沿ったアーティストと作品をキューレートする。彼らがキュレートするアート作品の数々はダイナミックかつアグレッシブで、Solo Showのインスタグラムには既に1万人以上ものファンがおり、フォロワーからは絶大の支持を得ている。ワクチンが普及し、私たちの生活はニューノーマルへと移り変わろうとしている。そんな中でパンデミックがきっかけとなって活動が始まったSolo Showの活動はどのようなものとなっていくのだろうか。i-D Japanはアンダーグラウンドにおける現代アートのこれからの動向を知るべく、Solo Showの今と未来についてオーガナイザーのTorreとIanに話を聞いた。
(この記事に掲載しているアート作品は全てSolo Showによりキュレートされたものである)

―Hi! 簡単な自己紹介をそれぞれしてくれますか?

Torre(以下T):チェコ、香港、オーストラリアを行き来しながら生活しているアーティストでありキュレーターです。Solo Showのオーガナイザーでもあり、アートキュレート団体『Underground Flower』としても展覧会を開催したりしています。

Ian(以下I):妻と1匹の犬と2匹の猫と一緒にコロラド州に住んでいるデジタル画像を用いたアート作品や彫刻などを制作するコンセプチュアルアーティストです。『Rhizome Parking Garage』のディレクターでもあり、Solo Showのキュレーターでもあります。

―Solo Showの活動は具体的にどういったものなのでしょうか?

T:私たちはSolo Showとして、数ヶ月毎にテーマに基づいた展示会をウェブサイトにて開催しています。ピックアップしたアーティスト達にそれぞれの地域で展示場所を選んでもらい、そこに作品を設置・撮影してもらってウェブ上にその写真を展示します。Solo Showはウェブで展示をするので、特定のスペースや展示期間に縛られていません。なので、いつでもその展示会に沿ったテーマに関係する作品を募集していて、その展覧会がウェブ上で永遠と続くといった形をとっています。

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Rolf Nowotny, RAED SAA RAED SAARET SAA SAARET

―Solo Showの名前の由来はなんですか?

T:Solo Showは遊びの延長から始まりました。内輪ノリからスタートしたものです。名前には意味を込めました。Solo ShowのSolo(孤独)は文字通り一人で制作することや、孤立したグループで制作すること。教育機関やギャラリーから距離を取ること、独学でアートについて勉強すること、密閉された個人的な情熱を発散することや、既存の芸術的な道から外れて作品を制作することかもしれません。Solo Showが定義するSolo(孤独)は一義的ではなく、その言葉の解釈はアーティスト次第です。多様なSoloのバックグラウンドを持った作品が場所という制約を超え、孤独という名の下に集まることで、作品やアーティストの背景を深く知るきっかけを生み出すことが出来ると考えています。

―始めたきっかけは?

T:二つのきっかけがあったと思いますが、一つはパンデミックですね。沢山のギャラリーがインターネットを駆使した戦略を急いで導入しましたが、大半がなんというか、「不自然」でしたね。お金儲けが目的のものであったり、文化的な排他性を感じさせるものが多かった様に感じました。それに対する反発として私とIanはパンデミック以前から孤立して制作を進めてきたアーティスト達をオンライン上で繋げ合わせて互いがサポートし合えるようなコミュニティを作りたいと思い、Solo Showを始めました。もう一つのきっかけは、物理的なスペースへの依存を無くしたいと思うようになったことでした。作品の運搬費やギャラリーのレンタル費など、従来の美術品の展示に付き物だったコストを無くしたかったんです。アート業界に蔓延る資本主義的なあり方から抜け道を見つけていくことでSolo Showは形成されてきたと思います。

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VVXXII, untitled

―Solo ShowのウェブサイトのAboutのページをチェックすると『我々は常に空間を空の容器と考えることに抵抗があった…細菌や寄生虫がそれを宿す肉や骨なしには存在しないように、作品と空間の間には共生関係が引き起こされているのだ。 (MRZBの言葉より引用)』というフレーズが記載されていて印象的でした。これは展示場所と作品には絶対的な関係性があるという意味だと思いますが、どういったタイミングでこのような考えに至りましたか?

I:僕の場合、この関係がはっきりしたのは、駐車場という空間を通してかもしれないですね。パンデミックが起こる前、僕は大企業の巨大なオフィスビルで働いていました。駐車場に車を停めて出勤していましたが、ある日、駐車場とホワイトキューブ・ギャラリー(白い立方体の展示場)がよく似ていることに気づきました。駐車場に来れば、白線の内に車を止める必要があるし、車はそこから離れてはいけない。同じ様に、ホワイトキューブ・ギャラリーの内に作品が設置されると、独特のオーラを持った空間と作品が相互に作用し合い、その空間に繋がれた作品はそこに留まらなければならない。ホワイトキューブ・ギャラリーは作品が外部との関係性を持たない空間、つまり作品がポルノ的に存在してしまうような空間なんです。それに対して、Solo Showがピックアップするようなアーティストが展示場所として選ぶコンビニエンスストアや廃墟といったような空間は、作品の外にあるリアルなものを取り込み、その作品体験をより重厚にすると僕は考えています

T:私は作品から受け取るメッセージが、作品周辺の物理的な環境だけでなく、私自身の心情や体調といった環境からも影響されるということ自体に魅了されてきました。気分の移り変わり、天気、偶然鳴った音、それらの要素は作品体験において切っても切り離せない要素です。作品体験は決して一つではなく、無限であり、作品の中と外に隠された可能性がその体験に厚みを加えているのだと思います。これこそが限定された物理的な空間で展示を行わないことの可能性であり、力だと思っています。

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runurunu, from a group show with 18 Virgin and Hirari Ikeda at Yoyogi Park Party⁣
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Taka Kono, godsend

―Solo Showがキューレートする作品にはある種の共通点があるように思えます。

T:ジャンル的にはゴシック、ロマンティック、ポストアポカリプスとよく表現されますね。空想上の武器や儀式の道具に似たオブジェ、浸食や腐敗の兆候が見られる様な作品や神話上の生き物、異星人からインスピレーションを受けた作品などが多いと思います。そういったモチーフには古代と未来、通俗的なものと難解なものが圧縮されて作品内に共生しているように思えて、魅力的に感じます。

―「ニューノーマル」な状況下で、徐々にアートギャラリーがオープンしていくと思いますが、Solo Showの活動は将来、どのような意味を持つと考えていますか?

T:結局のところ、私たちのようなオンライン上におけるアート展示というのはパンデミック以前からアンダーグラウンドで存在していましたし、その後も続くと思っています。多分、パンデミックを通してアンダーグラウンドでなされていたオンライン上のアート展示に人々が興味を持つ様になったのだと思います。この様な面白い変化はアート業界における流動性が高まったことに起因すると考えています。そのような状況下でSolo Showは、本当の意味で孤立するのではなく、アーティストたちが一つになれるコミュニティとしてあり続けたいですね。

I:Solo Showはギャラリーに取って代わることがゴールではありません。アートを人々のもとに戻し、アートをあるべき姿へと引き戻すことです。アートが壁の中に閉じこめられる必要はあるのでしょうか?お金を払わなければアートは鑑賞してはならないのでしょうか? スーパーマーケットや道端でグループショーをしてはいけないのでしょうか?Solo Showはこれから人々とアートが正しい関係を取り戻せるように活動していきたいですね

―Solo Showというプロジェクトのゴールは?

T:Solo Showは誰にでも開かれた自由なクリエイティブな場であるということを私は言っているのですが、同時に特殊で閉鎖的であることも認識しています。なので自分ではSolo Showは公共の場で活動する秘密結社のようなものだと捉えています。私たちは孤独に制作された作品を公に公開し、アーティスト同士を互いに刺激させ合い、繋げることで互いが新たな考えや知見を得られると考えています。Solo Showの目標は常に進化していくことだと思います。私たちは、孤独な環境から始まる、無限の可能性を皆さんと共に共有したいのです。

―最後にSolo Showの次のステップを教えてください。

これまでは様々な思想やアイデアをアートに組み入れ、展示するということを行なってきました。しかし、アートだけではなく文章を書き、それを読み体験するということもSolo Showのなかでとても重要で欠くことができない要素だと考えています。これからはSolo Showをより深みのあるものとして、発信すべく、文章におけるクリエイティブの制作と発信を行っていきたいと思います。

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Laura Costas, Another Foolish Contender
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MRZB, The Hunt of Shuum in a v tight pale Dimple
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Lilumnia (Alice Aster), Praying in the Snow
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Vim GH and Baby, Whirl Silt