変わり続ける勇気:和田彩花インタビュー

人気グループ・アンジュルムの、そして今年20周年を迎えるアイドル集団〈ハロー! プロジェクト〉全体のリーダーを務める和田彩花。2019年の春に卒業を控えた彼女は、その先をどのように見据えているのか? 和田が自身のリーダー論や理想のアイドルを語る。

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dec 6 2018, 7:52am

和田彩花を初めて知ったのは2009年、モーニング娘。らで構成されるハロー! プロジェクトの研修生から4人が選ばれて結成された、スマイレージ時代のこと。つんく♂の作るウェルメイドなブリティッシュ・ポップ「あすはデートなのに、今すぐ声が聞きたい」を歌う様子は、きらきらと正統派のアイドル然としていた。次に注目したのは2013年の秋、モーニング娘。の武道館公演のときだ。前座で出てきたスマイレージのなかで和田はひとり際立ち、長い手足を躍動的に活かして歌い踊っていた。

インタビュー前の撮影時、鍛え上げられた美しい肢体でカメラに応える姿を前に、わたしはそのことを思い出していた。「ハロプロにはタレント主導のグループはなかったんですよ。大人の誰かが決めて、従うっていうのが当たり前でした」と、和田は自身がリーダーを務めるアンジュルム(スマイレージから改名)について語る。「アイドルだからやらなくていいよ、って優遇されることもあるんですよ。でも私は仕事の相手として対等な関係でいたいんです。どっちが上でも下でもなく、互いに意見を交わせていけたら、良いものが作れると思ってます」。アイドルらしい眩しい笑顔がこぼれた。

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メジャーデビューした2010年、スマイレージとして日本レコード大賞新人賞を受賞するも、翌年にはオリジナルメンバー4人のうち2人が続けて脱退。同時期に4人の2期メンバーが加入する。2012年以降ライブハウスを中心にツアーを重ねていたが、公式YouTubeの当時のドキュメント映像では、試行錯誤し、伸び悩んでいるようにも見えた。しかし、このころに意識が変わったのだと和田は振り返る。「デビュー当時は初めてのことだらけで、マネージャーさんからの指示をこなすだけで精いっぱいでした。2期メンバーが入ってきて、自主性が芽生えていったように思います。グループ自体も停滞していた時期だったし、みんなで一緒に頑張るっていう感じで。ダンスや歌のことは教わるけど、それ以外はみんなで考えてました」。アンジュルムに改名後、2015年に出したシングル所収の2曲は痛快そのものだった。くすぶっている自分たちに開き直りながらも前進する強さが歌われる「大器晩成」、自尊心と評価のあいだを揺れる心理が描かれた「乙女の逆襲」。どちらもアイドルと切っても切り離せないテーマだ。

日本において女性アイドルは、若さや可愛さが絶対条件のように求められる。主体的に動くことより、客体として消費されがちだ。その状況は不問にされているが、和田は少し違う。「アイドルの多くは受け身の存在ですよね。期待に応えていく様子が媚びているようにしか見えなかったり、キャラを演じることで内面を見せない人もいたり。でも私は、『あなた自身はどう思っているの?』って考えちゃうんです」。アンジュルムの最新シングル「泣けないぜ…共感詐欺」の、同調圧力に屈しない歌詞の主人公は、まさに和田の姿にも重なる。力強いメロディのうえで軽快に韻が踏まれるキャッチーなサビでは、こう歌われる。〈強引なシンパシー それじゃ救われないし/ひとりひとつの人生に ひとりひとつの感情/テレパシー? 誰もわかんないし/押し売りに負けないのって 素直に言えたなら 勝利〉。周りに合わせるのではなく、主体的に挑んでいこうとする新しいアイドル像がうかがえる。「スマイレージ時代は、つんく♂さんが明確なプロデューサーとしていてくれたから、私たちも少し楽していたんだと思います。コンサートを見て、リズム感の指導をしてくれたり、歌って踊れるだけじゃなくて気持ちの面、表現で伝える域に早く達してほしいと、必ずアドバイスをくれていました。アンジュルムになってからの曲は、たまたま作詞家の方の考えと一致してきているだけかもしれないんですけど、私の性質が強く反映されているような気がします」

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和田は以前ブログで、ライブを「戦うこと」と規定し、アイドルという枠組みと、対バンやフェスを通して別の音楽シーンと、自分自身と、これまでさまざまなものと戦ってきたと綴ったうえで、ハロプロさえ超えていきたいと決意を述べている。育ててもらった恩義を感じながら(ライブでも歌の吹き替えのないハロプロでは、ブレないマイクの持ち方から教わると言われている)、こうした言葉を公にする決意は並大抵のものではない。和田はアンジュルムの活動を続けながら、大学にも通った。専攻は美術史。現在は大学院にも進んでいる。「アイドル、ハロプロのことだけでやっていると、すごく狭い世界になっていきますよね。それに自分ひとりだと世界情勢とか、追えなかったりするんですけど、現代美術はいろんなことを教えてくれるんです。一般社会との接点ができるというか。あと、大学の友達ができたことで、同世代が何を考えているか、どういうことに悩んでいるのかを知れて、貴重な経験だなって思います」。大学で学ぶこととアイドルとして活動することは、和田の中でごく自然に結びついている。デビュー当時から好きだと公言してきた、19世紀のフランスの画家エドゥアール・マネを捉える視線からも、そのことがよくわかる。「ハロー! プロジェクトも20年の歴史があって、変化に戸惑うこともあるんです。そういうとき、自分で納得するまで考えようとマネのことを考えます。マネの絵は色彩もすごく抑えられていてシンプル、なのに瞬間的な動きの見せ方も上手で。でも伝統的な美術の価値観からは外れていたんです」

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そんな我が道を行くリーダーをアンジュルムのメンバーはどう見ているのだろうか? 「みんな私が頼りないって知ってると思うので」と和田は笑う。「私は自分の考えが明確にありすぎるんですけど(笑)、リーダーが何でも決めてもいいっていうやり方は好きじゃないんですね。むしろ下の子たちからアイデアをもらってるんです。流行りを知ってるのはJKだし(笑)。ただ、みんな優秀で、歌も踊りもできるんですけど、もうちょっと自分の意見を持ったほうがいいんじゃないかなとは思います。歌詞に勇ましいメッセージ性があっても、自分自身の経験を通して歌にしないと、表面的になっちゃって説得力がなくなるんじゃないかなって」

和田は2019年春のツアーでアンジュルムとハロプロを卒業する。まずは大学院に戻って修士論文を書き上げたい、でもそのあともアイドルを続けるつもりだ、と言う。「レディー・ガガが目標なんです! ガガみたいに、自分の考えを持ちながら人に勇気を与えたり楽しませられたら、それってすごいことだと思うんです。私はそういう〈アイドル〉を目指したいですね」。和田彩花が切り開こうとしているアイドルの可能性に期待がふくらむ。

Credit


Text Minori Suzuki.
Photography Kyoko Munakata.
Styling Chie Ninomiya
Hair Tano at CUTTERS.
Make-up Chifumi at SIGNO.
Photography assistance Hiroaki Noguchi.
Styling assistance Yoshie Nunoda.