彼女たちの禁じられた遊び:シュエ・ジェンファン × ロッタ・ヴァルコヴァ

Jenny Faxのデザイナーであるシュエ・ジェンファンとスタイリストのロッタ・ヴァルコヴァ。Jenny Fax2019春夏コレクションで二人が魅せたショーはどのようにして生まれたのか?

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10 december 2018, 8:17am

東京ファッションウィークのラストを飾ったJenny Faxが今回用意したのは、誰も予想していなかったゲストの登場だった。これまで家族や自身の思い出から紡ぎ出されたストーリーをコレクションに昇華させてきたデザイナーのシュエ・ジェンファン。そのプライベートなクリエイティブ空間に入り込んだのは、VETEMENTSBALENCIAGAなどを手がけるスタイリストのロッタ・ヴァルコヴァ。8年前に雑誌の撮影で知り合った二人は、しばらくの時を経て、今年春の展示会にて意気投合。それを機に今回のコラボレーションに至った。ショーを終えた彼女たちに、今回のショーや彼女たちの共通項を訊いた。

──お二人が展示会で出会った後、どのような経緯で今回のショーに至ったのでしょうか?
シュエ・ジェンファン(以下ジェンファン):最初ロッタから連絡をもらったんだけど、夢だと思い込んでた。メッセージ見たのも深夜だったし。
ロッタ・ヴァルコヴァ(以下ロッタ):そう、しばらく返事が来なくて。すごく驚いた(笑)。
ジェンファン:もちろん彼女のことは知っていたし、スタイリングも好きだった。でも誰かと仕事するのは初めてだったから。正直に言うとうまくいかない場合のプランBも考えてた。でも一緒にやってみたら、そんなこと感じさせないくらい頼れる存在で、今回は視野が広がった気がする。

──どのようにお互いのイメージを形にしていったのでしょうか?
ロッタ:まずジェンファンが、80年代から強く影響を受けてるって話してくれて。ホラー映画が好きな女の子を主人公にして、アメリカのダークサイドカルチャーをイメージしてた。そこで、私も迷いなくツインピークスや『マーダー・ライド・ショー』『デビルズ・リジェクト マーダー・ライド・ショー2』といったロブ・ゾンビの映画、B級ホラー映画を参考にスタイリングを考えていった。それらがすべてのストーリーの始まりね。
ジェンファン:たくさん話してくれて助かる(笑)。
ロッタ:ありがとう(笑)。Jenny Faxは服が面白くて個性的、そして強いアイデンティティを持っているから好き。これまでいろんなデザイナーを見てきたけど、Jenny Faxはいつ見ても新しいことに出合えから惹かれる。

──どのようにショーのストーリーを組み立てていったのでしょうか?
ジェンファン : たくさんの偶然が起きたよね。それこそ私たちがショーを行った理由でもあったと思うし。
ロッタ:偶然と間違いによって思いがけない力が生まれるのが好き。例えば今回のショーに登場した、ベッドから起きてめちゃくちゃになっているようなオフショルダージャケットは、自然と肩から崩れ落ちた感じが美しいって、着てみて気がついたの。左右非対称なビックショルダーと短いポロもそう。不自然だったり醜いと思うようなものに面白さがあると思うし、違うものの見方をして、違う見せ方をするのが好き。80年代のパワードレスって極端な肩パッドが象徴的だけど、それだけではない違った側面をみせたかった。偶然によって普通とは違った視点から価値を見つけ出すのが大好きなの。

──今回初めてスタイリストと取り組んだそうですが、ジェンファンさんから見た印象を教えてください。
ジェンファン:正直に言っていいの?
ロッタ:もちろん正直に(笑)、嫌い?
ジェンファン:ううん、いつもとまったく違って見えた。いつもデザインだけに集中しているけど、今回は、他者の存在を意識しながらデザインを考えていった。あと彼女の手が加わることで、色の組み合わせが変わった。

──遊び心が効いた肌の露出や、脱構築的なスタイリングにロッタさんらしさを感じましたが、スタイリングはどのように考えていきましたか?
ロッタ:ドレスの上の下着は、女の子がおばあちゃんのパンツで遊ぶようなイメージ。その子はちょっと変わり者で不気味で、ホラー映画とおばあちゃんの洋服で遊ぶのが好き。おばあちゃんの入れ歯もネックレスにして使っちゃうような子。だからフェティッシュというより純粋無垢で繊細なアプローチをした感じね。

──今回バックステージでもランウェイに出る寸前までスタイリングを組み直していたそうですね。ロッタさんがスタイリングでいちばん大切にしていることを教えてください。
ロッタ:いちばん大切にしているのは、自分の手で実際に服を触ってみることと、私にとって完璧な配置にすること。アシスタントに頼むんじゃなくてね。服を動かして試してみて何が起こるか見るのが好き。
ジェンファン:仕事を一緒にやってみて、彼女のことをすごく尊敬した。一緒にスタイリング考えてるときも、もちろん複雑なものもあって、一旦手をとめることもある。それでも彼女はまた戻ってきて最後まで諦めずに取り組むの。その姿にすごく感動した。

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──今回のショーでテーマとなった80年代についてお二人の思い出を教えてください。
ロッタ:私は80年代のウラジオストクで育ったの。モスクワから飛行機で10時間もかかるところ。その頃はソ連崩壊前で、鉄のカーテンもあり歴史的にとても独特な時代だった。私の父は貨物船の船長をしていて、当時年は珍しく、70年代、80年代に世界中を旅してた。だから私たち家族は、アメリカやアジアの文化にいつも触れていたの。子どもながらに覚えているのは、父がミュージックテープやビデオ、ファッション雑誌とかいろんなものをプレゼントしてくれたこと。私たちにとって当時はアメリカ文化の象徴だったコカコーラとかね。
ジェンファン:私は1979年生まれだから......。
ロッタ:じゃあ、本当に80年代まるごと過ごしてるわけね。
ジェンファン:私はお母さんから強く影響を受けてる。仕事を始めるまでは普通の格好してたんだけど、働き始めてから良い服を着ようと意識したみたい。典型的な女性らしい服装で、リバティプリントのような花柄のワンピースを着てた。自分で作るんだけど、いつも大きなデパートに行っては、安い生地屋でできるだけ近い素材を選んでた。
ロッタ:私のお母さんもそう。人と”違う”ことに対して、いつも私を勇気づけてくれた。当時のロシアの社会的空気はまったく独特だった。みんな同じ格好することを強いられていたけど、周りからどう思われようと自分自身であり続けることがいちばん大切だって教えてくれた。
ジェンファン:私のお母さんは保守的な人だったから、私が初めて化粧品を買うときも、まだ化粧なんて早すぎるって言ってた。けどお父さんはそういうことに寛容的で、お小遣いをくれて、一緒にどんな方法でやるのか楽しんでくれてた。ホラー映画が好きで、モノクロ映画にもよく連れてってもらったな。

──日本のカルチャーをどのように感じてますか?
ジェンファン:インターネットが普及していない高校時代に、テレビで「ファッション通信」を観ることが唯一の楽しみだった。90年代にCOMME des GARÇONSやJUNYA WATANABEとか。いまの東京は少しヨーロッパ的でシンプルになったよね。私個人的には、The Virgin Maryが好き。
ロッタ:本当にそう!『STREET』や『FRUiTS』、そしてもちろん日本のファッションにかなり影響を受けてる。原宿は昔とは変わったけど、いまもパンクやDIY、Kawaiiガールやデザイナーを探すのが大好き。日本の好きなところは、伝統的なのにアンダーグランドでアヴァンギャルドなものが同時に存在しているそのコントラスト。その両方が混在してる感じが好きなの。他のカルチャーとは違うし、すごく刺激的。