ZINE雑誌の立ち上げ方 by アイオン・ギャンブル

メディアやファッションの世界で生きていきたいけど、どんな道を辿れば良いのかわからない——そんなことを考えて足踏みしている読者も多いはず。i-Dファミリーに、彼女たちがどのようにしてデザイナーに、スタイリストに、ライターに、ディレクターになったのかを聞くこの「How To」シリーズ。今回は世界的な人気を誇るZINE『Polyester』編集長アイオン・ギャンブルに話を聞いた。

by i-D Staff
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21 September 2016, 4:40am

アイオン・ギャンブル(Ione Gamble)は、トラッシーでゴテゴテしていて大げさな世界観を「これでもか」と盛り込んだ雑誌『Polyester』誌の創始者であり、編集長だ。フェミニズム第4波が到来をみせる昨今、それを正当に取り扱おうとしないメディアに見切りをつけた彼女は、先進的な作品を作り出す女性やクィアの人々にインスパイアされ、2年前にロンドンの自室で自作の雑誌を作り始めた。社会問題を取り扱い、個人的なアイデンティティとファッションの関係を探ることに焦点を当てた『Polyester』誌は、号を重ねるごとに存在感を力強く増している。現在は第6号の制作を進めながら、フリーランスのライターとして活動の幅を広げている彼女に、その業界で成功するためのヒントを聞いた。

Polyester Issue Five

何をしているか、そしてなぜそれでなければならないのか。
私の仕事は、自費出版の雑誌『Polyester』を作り、編集までこなすこと。『Polyester』を作り始めたのは大学2年生のとき、フェミニズムの第4波が世界に押し寄せてきているにもかかわらずそれを正当に取り扱おうとしないメディアに落胆したことがきっかけ。メディアはみるみるうちにミニマリズムへと偏向していた。当時、私はインターネットでさまざまな人たちと出会い始めていて、特にとても先進的で美しい作品を作り出している若い女性やクィアの人々に深く共鳴していたの。作品を発表するプラットフォームに恵まれていない彼女たちと「どうしたものか」と話し合ったりもした。十代前半から、「この仕事」という明確な目標があったわけじゃなかったけど、「自分がどんな仕事をしたいか」は強く認識していたの。気に入った雑誌は片っ端から買って、チャリティショップで買ったVHSテープを片っ端から見て、Tumblrサイトをたくさん見て回って、面白いものを常に探していたわ。だけど、大学の一般教養過程で写真を勉強し始めた時、自分が進みたい道がジャーナリズムなんだと気づいたの。
誰か特定のひとや作品に影響を受けたか?って訊かれると答えるのが難しいわね。小さい頃から周りにいた同世代の女性たちは、みんながそれぞれ好きなように創造的なことをしていたから。友人たちが、私よりもはるかに若いうちに写真を撮ったり小説を書いたり、雑誌を作ったりしているのを見ていて、私もやってみようと思ったの。『Polyester』創刊号を人々が実際に買って、楽しんでくれているのを見たときは嬉しかったわ。作っている段階では、気に入ってくれるかどうかわからなかったし、読者にどう響くか、一般的にはどう捉えてもらえるのか、まったく予想できていなかったから。

日々の仕事
主にメールのやり取りよ。フリーランスとしての仕事をこなしながら、次号の『Polyester』を作って、前週に受注があった雑誌の発送作業をしたりもする。雑誌制作では、アイデア出しが終わって撮影やインタビューをしているときが好き。いつも後回しにしてしまうのは、大量に溜まった未読メールを読むこと。この仕事をしていて良かったと思えるのは、新しい号のローンチパーティにたくさんのひとが来てくれて、皆がそれぞれにその様子をInstagramにアップしてくれたりすることで『Polyester』というプロジェクトの一部になってくれているのを実感できるとき。この仕事に関して世間が抱いている最大の誤解は、"雑誌制作は儲かる"というイメージね。『Polyester』だけでは食べていけないし、広告やスポンサーなしで作っている雑誌だから、前号で出た儲けはすべて次号の制作やコントリビューターたちへの制作費に充てている。

Polyester Issue Five

「あれがあったから今の自分がある」と思う出来事
これも答えが難しいわね。私は『Polyester』を自分の"キャリア"だとは考えていないから。もちろん、そのふたつの間には確かな関係性があるけれどね。フリーランスのジャーナリストとして自分のキャリアを考えたとき、まず感謝すべきはアシュリー・ケイン(Ashley Kane)ね。彼女こそは最初に私を物書きの道に引き入れてくれた人で、『Polyester』もずっと協力してくれている。『Polyester』が雑誌として確固たる存在感を提示できたのは、ミーダム・カーチョフ(Meadham Kirchhoff)を特集させてもらえた第2号と、タヴィ・ゲヴィンソン(Tavi Gevinson)を表紙にできた第4号のおかげだったと思ってる。第2号と第4号で雑誌のトーンが定まったし、そのおかげで今、尊敬する人たちと仕事ができているから。創刊1周年のパーティも最高にクールだったわ。数百人が参加してくれて、そこでフェミニズムやジェンダー、社会問題についてのディスカッションを行なったんだけれど、同時にパイプクリーナーで王冠を作るワークショップや、写真家のメイジー・カズンズ(Maisie Cousins)と写真撮影をするセッションなど、楽しいイベントも盛りだくさんだったの。あれで、ずっと夢見ていたPolyesterのコミュニティができ上がった感があったわ。

大学には行くべきか、行かざるべきか
私は大学に行ったし、ファッション・ジャーナリズムの修士号も取得した。ジャーナリズム業界で成功するのに大学での勉強が必須かといえば、そうでもないと思う。だけど、今は労働階級出身の学生(私も含め)でも申し込める助成金や学生ローンがあるでしょう。捨て身で業界に飛び込むよりは、大学に行っていろんな仕方でやりたい仕事にアプローチできるようになるほうがいいんじゃないかな。実地での経験はもちろん重要で、勉強よりも役に立つことも多い。仕事探しをする際に職業斡旋所だけが頼りになるわけじゃない。大学生の頃、私は小規模の雑誌やなんかに記事を書く仕事をすでに始めていたんだけれど、エディターとのやり取りや、アイデアの実現化について学んだのはそうした仕事を通してだった。あの日々があったからこそ、フリーランスのライターとして仕事を始めたときにタダ同然で働かなくて済んだわけだし、大学を卒業する段階ですでにそれなりのコネもできていたの。やりたいことが分かったら、それに情熱を傾けて、ときにはしつこくなるのも大切だと思う。この世のなか、誰もが忙しくしていて、物も忘れてしまいがち。必要とあらば、相手が返信をくれるまでメールを何通も送り続けるのも手だと思う。自分が心から働きたいと思う会社やひとに、なぜそこで働きたいのか、なぜそこが最適だと思うのかを伝える。そして、たとえ不採用だったとしてもそこで自信を失ったりしないで。そこから開ける道が必ずあるから!これまで学んだなかで一番の教訓になっているのは、まず、どんなに困難な状況でもやり抜くことの大切さ。そして正当だと思う場合にはきちんとお金をもらうことの大切さ。それと、自分がこうと決めたことは、誰にも、何物にも邪魔させてはいけないということ。

Polyester Issue Five

「あの時にこれを知っていたら」と今思うこと
ファッション業界やメディア業界は入り込むのが難しいって言うけど、そこに入り込もうと注いだ努力は必ず報われる——それなりの動機と心の準備さえできていれば、なんだって可能だってこと。どんなことが起こっても動じないこと——雑誌を作って、それを続けていくのは本当に大変なことだけど、努力が報われたとき、「やってきてよかった」と思ったもの。友達やクリエイティブな同志たちに囲まれること、そして彼らと一緒にプロジェクトに取り組んでいくことは、プロだからこそ味わえる楽しさよ。それと、自分の雑誌を立ち上げる前に、必ず誰かのもとで物書きとしての経験を積むことの重要性ね。

明日が楽しみ。なぜなら……
今は『Polyester』第6号の制作が始まったばかり。オンライン版も少し改定する予定だし、次号を出した後にやるイベントをたくさん計画しているの。新しい号をつくる時に、最もエキサイティングなのが、縁がなかったけど、ずっとインスパイアされてきた人たちと、一緒に仕事をする機会をつくれること。長い間ずっと作品のファンだったアーティストにインタビューしたりね。それこそが、クリエイティブな業界で仕事をすることの最大の魅力だと思う。共同でものを作り上げることができること、そして「最新号に」と写真や言葉で作品を作ってくれるひとが世界中にいて、その人たちとともにひとつの雑誌を作れるということがね。私は、志を同じにする人や女性たちにインスパイアされてこの雑誌を作っている。信じるもののために戦い続け、作品を作り続けているビジュアルアーティストやアクティビストたちに触発されてこの仕事を進めているの。詩人であり、作品を朗読するアーティストでもあるリヴ・ウィンター(Liv Wynter)が、今号の『Polyester』でパフォーマンスアーティストのリヴ・フォンテーン(Liv Fontaine)のために書いたプロフィール文があるんだけれど、それを読んで私は自分のライティングのスタイルを根底から見直す必要を感じたの。それほど刺激的な文章だった。私の友人でReel Good Film Clubを運営しているマリア・カブレラ(Maria Cabrera)と、Art Baby Galleryを運営しているグレース・ミチェリ(Grace Miceli)は、疲れ知らずでよく働くひとたち。彼女たちにも日々、インスパイアされているわ。

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Credits


Translation Shinsuke Kuriyama at WORDSBERG Inc.

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