服のかたち/体のかたち:THERIACAデザイナー 濱田明日香interview

人のコンディションをポジティブにさせる万能解毒剤。ベルリンのファッションレーベルTHERIACAデザイナー濱田明日香が、初の大規模展覧会について、自身のクリエイションについて語る。

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aug 10 2018, 2:25am

ソファやトイレットペーパーから形をとって服にするとどうなるだろう?デザイナー濱田明日香の手がけるファッションレーベルTHERIACA(テリアカ)初の大規模展覧会が、島根県立石見美術館で開催されている。今回彼女が向き合ったのは「もの」の形。日用品や食べ物など身の回りにある「もの」の形を服に落とし込んだ作品は、わたしたちを驚かせるとともに、服作りや「もの」に対する既成概念を見事に払拭してくれる。

万能解毒剤を意味するTHERIACAは、デザイナー濱田がロンドン・カレッジ・オブ・ファッション在学中の2014年に誕生した。芸大生、アパレル会社デザイナー勤務、2度の海外留学の経験を活かし、アートとファッション、服と体との絶妙な距離感を表現している。ベルリンへ移住後は自身のコレクション制作のほか、手芸本の執筆、同じくベルリンベースブランドBLESS、ANNTIANのパタンナーもこなすという万能っぷりだ。流行からあえて距離を置き、着た人が自分らしくいられる服を追求し続ける彼女の原動力とは?オープニングを終え、ベルリンへ戻った彼女の自宅兼スタジオを訪ねた。


————今回「服のかたち/体のかたち」をテーマに選んだ理由を教えてください。
2015年に発表した1冊目の手芸本『かたちの服』は、ファッション好きだけでなく、違うジャンルのクリエイターなど幅広い層に響いた本でした。美術館も同じく、年齢、職業問わずいろんな人にアプローチできる場所。服のおもしろさを伝えるならそんな『かたちの服』からの発展が一番いいと思って選びました。

————「もの」の形を服に落とし込むという発想がおもしろいですよね。
「ひと」の体から形をとった原型からは生まれない発想が出てきます。体にフィットしないから、服と体との距離感がドレープやボリューム感になってあらわれるんです。

『Sofa (2018)』Photography by Mizuki Kin

————展示されている全51点の中で、気に入っている作品はありますか?
「ダンベル」は重り部分をイメージした袖が意外とパフスリーブっぽくなって、想像よりおもしろく仕上がりました。あと、「カーペット」はセーラーみたいにバサッと後ろに垂れた部分がお気に入りですね。服とカーペットの境界線が曖昧で、不思議な違和感があります。

LEFT & RIGHT 『Dumbbell (2018)』Photography by Katsumi OMORI

————今回の展覧会をはじめ、ユニークなパターンやカッティングが特徴的です。普段の制作はどのように進めているんですか?
デザイン画を書くというより、工作に近い方法で作っています。例えば、こねてこねていいところで手を止める粘土細工のような。自分でも思いつかなかった形のときに手を止める、そうすると自分でも予想できなかったのものができていくんです。

————「着た人が自分らしくいるために必要とされる服」というブランドコンセプトは難しいチャレンジですが、実際にどんなアプローチをしていますか?
流行のものを選ぶ人が多い中、THERIACAは流行からちょと外れた服。しかも、コレクション毎のルックブックを作ってないんです。ルックブックってこう着たらいい、という着方の提案だったり、こういうカテゴリーの人に着てほしいって感じがなんとなく出るじゃないですか?そういう情報が全くない状態で、服だけを見て買う買わないを決めるのは勇気のいること。着方も選び方もその人に委ねることで、自分で選んだという決断がその人のアイデンティティ、表現手段になるんだと思います。

————とても新鮮なアプローチですね。「人を繋ぐ媒体となる服」も重要なテーマだとか。
THERIACAの服を着ているとよく声をかけられるという話を聞きます。人を包むという服本来の機能を超えて、コミュニケーションツールとしての機能も果たしていることは嬉しいですね。最近、”盲目の人が空間を認識するための装置をどう身につけるか”について研究している大学の教授と話をする機会がありました。盲目だと色や見た目はあまり関係ないかなと最初は思っていたんです。でも、「かわいいね」や「おもしろいね」など周りからの反応でその人が自信を持てるという話を聞いて、なるほどと。そういう服であればいいなと思ってます。


————ファッションを学んできたロンドン、東京ではなく、ベルリンを活動拠点にしていますよね。
流行と距離を置きたくて。大都市だと日々の生活で流行が見えちゃうほど情報量が多いんです。

————なぜ流行から距離を置きたいと思うようになったんです?
芸大時代はアートの一人よがり感に寂しさを感じていて、人が使えるものを作りたいという思いからアパレル会社に入り、デザイナーとして働きました。1年で4シーズン、アートと真逆で売れるものを作り続ける中、ふと「そんなに服っているのかな?」と疑問を抱いたんです。流行が悪い訳じゃないけど、もし自分がやるなら流行っているから選ばれるものではなく、人の心に響くものを作りたいなって。本当に自分は何に興味があるのか、何がきれいと思うのかを突き詰めるには、情報があまりない場所がベスト。何もないからこそ、周りに影響されずに自分のクリエイションができますね。


————そんな濱田さんの考える「オリジナリティ」とは?
影響を受けたものを自分のフィルターを通して、自分にしかできない角度にアウトプットすることですね。

————服作り以外に何か楽しみはありますか?
これはTHERIACA関係ないんですけど、GIFアニメーション作り(笑)。作業の合間に生まれた切れ端などで作って、たまにInstagramにアップしてます。アナログなものが動くっていうのが好きで、静止画とムービー間に生まれるガタガタした違和感がいいんですよ。

————常におもしろいアイデアを見逃しませんね。THERIACAをはじめ、すべての活動に一貫したテーマを感じます。
カナダ留学時代に「おもしろいと思えることしかやらない」ってもう決めてしまったんです。一生続けるには楽しくないとできないですし、楽しんでいる人には勝てないじゃないですか。同じものをもう一度作るのも楽しくないので、何かしら変えてますね。もちろん生みの苦しみもありますが(笑)、基本的に作ることは楽しんでやってます。

@_theriaca_

特別展「THERIACA 服のかたち/体のかたち」
会期:2018年7月27日(金)~9月9日(日)
時間:10:00~18:30(展示室への入場は18:00まで)
会場:島根県立石見美術館 展示室C
休館日:毎週火曜日(ただし8月14日は開館)

Credit


Photography Tereza Mundilová