美しき“机上”のパンク:WEWILL 19aw

丸の内にあるパブに、ロンドンの空気が吹き込んだ。福薗英貴は、時流や自分自身と対峙して感じた葛藤の痕跡をパンキッシュなステイトメントに宿した。

by Tatsuya Yamaguchi; photos by Wakaba Noda
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25 February 2019, 8:41am

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場所は東京・丸の内にあるパブ〈P.C.M〉。「今季は内面的な部分がテーマで、言い換えれば、僕自身が抱えている“葛藤”から始まりました」と、WEWILLの福薗英貴はブランド初となるインスタレーションの直前に語った。掲げられたタイトルは「DESK PUNK」。「机上で考えたパンク」という意味の造語だという。

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「今、本当に色々なことが起こっている。情報の量も表現の仕方も多い。その中で疑問に感じること、嫌だなと思うこともたくさんある」。国内外の政治情勢に不可解な発言、末期的な環境破壊、横行するフェイクニュース。思い当たることはもはや数えきれない。「性格的に自分はそういった考えをおおっ広げにするタイプではないので(笑)、パーソナルな部分も含めたモヤモヤを、発散するのではなく洋服に閉じ込めるようにデザインしたのがこのコレクションです」。そうしてWEWILLが描いたのは、戦略的な反抗と挑発をコアにもつ“パンク”の世界観だった。「自問自答の末に、自分の進む方向を見つめていたいのです」

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大抵パンクファッションのイメージを牽引するのは、激しさの象徴であるクラッシュやスクラップ、カットオフの加工、スタッズ、扇動的なグラフィックなど。元来は一抹の攻撃性が人の心を揺さぶるものだが、パンクカルチャーを通ってきていないという福薗が仕立てる美しきメンズウェアには、そうした表情はすっと影を潜めている。定型的な手法は使わず、基本は「綺麗に仕立てる、それが好き」と言う。

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ほとんど自然体な総勢13名のモデルは(パンクロックではなく)クラシカルな音楽が鳴り響くなか、椅子やテーブルに腰掛け、グラスを傾けながら談笑を楽しんでいる(そのうちの何人かは物思いに耽っている)。ゲストはその合間を縫うようにして洋服をほぼゼロ距離でみて、生地に触ることも、彼らと話をすることだってできる。この距離感はかなり稀有だ。東京屈指のビジネス街にあるこの空間は、英国調のインテリア、コレクション、ドリンクを片手にするモデルとゲストが複層的に共存する世界に姿を変えた。「今季に関しては特に、観る人とコレクションが限りなく近い状況にしたかったんです」

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肩の力が抜けたドロップショルダーにバックボリューム。ジャケットやコートの身体と服地の間に余白が生まれる有機的なビッグサイジングは健在だ。レッドが映えるパンキッシュなブリティッシュチェック、レザー、随所にはモッズの香りが漂い、肉厚なウール地やツイードもあればチェック柄やテキストのグラフィックがさり気なくのせられたオリジナルのスーツファブリックもある。柄のセットアップやスキニーなボンテージパンツ、無作為に貼られたブランド名やシグネチャーロゴである「KROY WEN」のビニールテープはパンクのイメージを押し拡げるが、スーツスタイルにはトラッドなイギリス紳士の佇まいがあったりする。20世紀中の様々なロンドンのクラシックが、エレガンスを志向する“机上”でも自由に交差している。昨シーズンから続くベレー帽、華奢目のゴールドチェーン付きのアクセサリー、サスペンダーやフェミニンなパールネックレスが、若々しさと色気のエッセンスとして添えられた。フィナーレで流れたのは、今ではマンチェスターテロ事件のアンセムとしても知られるオアシスの「Don't Look Back In Anger」。何ともエモーショナルで、どこまでもWEWILLらしい。

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過激で、声高に叫ぶパンクではない。が、決して観念的(机上の空論)ではない。静かで滑らかな表現には、反骨のスピリットがたしかに湧き上がっている。彼は最後にこう話す。「“こうでなくてはいけない”ということはない。そんな確信について今季は考えたんです」