2019 メットガラ "CAMP"を徹底的に解釈するとこういうこと

テーマを纏う十人十色なセレブリティたちへの痛烈な想い。それは、メットガラへの愛とリスペクトがあるからこそ。

by Daisuke Fujiwara
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13 May 2019, 2:17pm

Photo via @themetgalaofficial

年に一度、地球最高峰のファッションとセレブリティで我々のファビュラス欲を完全に満たしてくれるメットガラが今年も開催された。メトロポリタン美術館・服飾部門の資金調達パーティであり、主催者アナ・ウィンターに招待された名だたるセレブたちが超一流デザイナーとタッグを組んでこれでもかというほど豪華絢爛な装いで参加する。いわば、『プラダを着た悪魔』の主人公が務める雑誌社が主催し、『オーシャンズ8』で盗みに入られたパーティといえばわかりやすいだろうか。ファッション界のアカデミー賞、と呼ばれているそうだが、実際セレブたちの力の入れようはメットガラが本家アカデミーを上回り、ドレスの総合計金額を考えると、メットガラ1回分でアカデミー賞が10回くらい開けちゃいそうなほどである。ちなみに300万円のチケットを購入すればパーティに参加できる。もちろん、パーティ内は写真撮影禁止になっているので実際に入場した人にしか何が行われてるのかは分からない(実のところ、やんちゃセレブ達のインスタストーリーでチェックし放題)。

それでは2019年のレッドカーペットを振り返ろう。

ビリー・ポーター @theebillyporter

先日のオスカー賞でのタキシードドレスが話題をさらったビリー・ポーターは上がりまくったハードルをあっさり超えてきた。メットガラでは毎年テーマが決められ、それをいかに解釈するかが重要であり、豪華絢爛オシャレなのは大前提、その上でいかに自分の個性とテーマとの折り合いをつけるかが腕の見せ所なのである。今年のテーマは”Camp: Notes on Fashion”。過剰性や不自然さを愛し演じる事であり、これはかなりドラァグカルチャーに通じる意識でもある。ド派手でユーモアのセンスが問われるのはもちろん、自身でそれをコントロールすることが必要で、ドレスに着られてしまうようなことは一番のタブーだ。ビリー・ポーターは上裸のジューシーなメンズに担がれて入場。〈ザ・ブロンズ〉の金ピカボディスーツにこれぞ! というようなパット・マグラスのメイクが華を添え、さながらエジプト神話のような出で立ち。『マホガニー物語』のダイアナ・ロスへのオマージュだそうだが、ダイアナもびっくりの神々しさである。彼はその立ち振る舞いこそが一番のアクセサリーであり服に負けない強い内面を感じさせ、今年のテーマはこれだと説明できるほどパーフェクトであった。

エズラ・ミラー @imezramiller (fan account)

レッドカーペットを歩く度に奇抜さとその美しさで楽しませてくれるエズラ・ミラーはリカルド・ティッシ手掛ける〈バーバリー〉のエレガントなスーツにビジューのコルセットとわかりやすくも洗練された中性美で圧倒的な存在感であった。第7の目まで開眼させたメイクはミミ・チョイによるもの。彼女は独特なメイクのセルフポートレートをインスタグラムにアップし有名になったアーティスト。近年こういったプロではないインスタメイキャップアーティストの作品をレッドカーペットでちらほら見かける。なんと朝4時からメイクを始めたそうで、アフターパーティにまでちゃんと行くエズラのアティチュードはまさにCAMPだ。

レディー・ガガ @ladygaga

今年はホストでもあったガガ様は〈ブランドン・マックスウェル〉のピンクの巨大ガウンをコウモリ傘を持ったメンズ達に引かせて登場。デザイナー自らガウンを脱がせると黒のドレスに、さらに脱ぐとピンクのタイトなロングドレス、最終的には黒のランジェリー姿になり1つのレッドカーペットで4ルックも魅せてくれた。それでも陳腐にならないのはシックなデザインと黒とビビットピンクだけで全てのルックを統一したからであろう。ド派手なイメージだったが近年こういった繊細なバランス感覚がガガ様を格上げさせたように感じる。〈サラ・タンノ〉による10センチほどありそうなゴールドアイラッシュが目をひくメイク、ガガ様の必需品となった〈ティファニー〉のジュエリーも上品さと奇抜さをうまくミックスしている。さらに傘、電話機、キャリーハットケースなどの小道具、ブロードウェイ女優のような表情がCAMPを具体化しゲイカルチャーとの密接な関係を築いてきたガガ様だからこそできる最早ショータイムのようなピンクカーペットであった。

ゼンデイヤ @zendaya

2017年、2018年と2年続けて評価の高かったメットガラ優等生のゼンデイヤは今年はシンデレラ姿で登場。魔女に扮するエスコートのスタイリスト、ロウ・ローチが魔法のステッキを振ると〈トミー・ヒルフィガー〉のドレスが光り、魔法が解けそうになる前にピンクカーペットにガラスの靴を一足残し会場へと入っていった。ドレスやヘアメイクは少し安っぽいが元ディズニーチャンネルのスターから大女優へとのし上がった彼女のバックボーンを表現しているようでエモーショナルだった。他にもキャラクターになりきるスターがみられたがCAMPというテーマの正解例の一つはコスプレだろう。

ジャレッド・レト @jaredleto

グッチ〉のデザイナー、アレッサンドロ・ミケーレがホストの一人であったこともあり、GUCCIクチュールが多くみられた今年のピンクカーペット。その中でも一際目立っていたのがジャレッド・レト、深紅のガウンにビジューのボディジュエリー、更に彼の顔立ちがあわさって現代に蘇ったイエスキリストのようであった。更に片手にはGUCCI 2018-19年秋冬ランウェイで話題となった複製の生首が強烈なインパクトを残した。彼はカメレオン俳優でありキャラクターそのものがCAMPなのでこういった演出もしっくりくる。自身のキャラクターやイメージを深く理解していることもメットガラでは欠かせない要素になる。

キム・カーダシアン & カニエ・ウェスト @kimkardashian & @kanyew.est

4月にはじめてVOGUEのカバーガールとなったパーティ番長キム・カーダシアンは相も変わらず、ピッタピタのヌーディなボディコンドレスは〈ミュグレー〉のもの。例年いかにテーマを無視してくれるかが楽しみとなっているが、彼女の自然界にはあり得ない人工的な美や破天荒な人生は最早CAMPであり、今年は忠実にテーマを守っているようにすら感じた。対照的に旦那はやたらとラフな格好。キムがはじめてメットガラに出席した時はカニエの同伴だったとカニエに話すと、「今年は俺がお前の同伴だって見せつけてやるぜ〜」と言い39ドルの〈ディッキーズ〉のジャケットを着たそう。こんな世界平和なバカップル事情すらもCAMPに感じさせる、メットガラ恐ろしや。

ライアン・マーフィー @mrrpmurphy

『アメリカン・ホラー・ストーリー』や『POSE』など超人気ドラマの脚本家ライアン・マーフィーは〈クリスチャン・シリアーノ〉のパールまみれなケープでおとぎ話の魔法使いのような出で立ち。派手な衣装で有名なアメリカの伝説的なピアニスト、リベラーチェへのオマージュだそう。このブランドは先述したビリー・ポーターのタキシードドレスを手掛けたブランドでもある。このように裏方で活躍するセレブリティの着飾った姿を拝めるのもメットガラの醍醐味。

アシュトン・サンダース @shtondsanders

筆者が今地球で一番おしゃれなノンケ男子として崇めるアシュトン・サンダースは気鋭ストリートブランド〈テルファー〉でドレスアップし、デザイナーとともに登場。映画『ムーンライト』でブラックカルチャーの中で生きるゲイを演じその名を広めた彼が、ジェンダーレスな〈テルファー〉を選び、貴族のようなスーツとヘアスタイルでドレスアップしたことはブラックとゲイに共通した虐げられた歴史を昇華させるような説得力があった。デザイナーのスタイリングノートには「CAMPはゲイを貶すスラングでありその歴史は1901年まで遡る」と書いてあったそう。

ケイティ・ペリー @katyperry

毎年ティーン層には大きな話題を呼ぶケイティ、今年はスーパーボールなどケイティとのタッグでおなじみ〈ジェレミー・スコット〉でシャンデリア・リアルネス。まさにCAMPと言いたいところだがお遊戯会の域を抜け出せずドレスに着られている、という状態。このテーマはどうしても内面の深みが露呈するので面白い。メットガラには公式のアフターパーティがあり衣装を変えるセレブも多いのだが、ケイティは完全なるハンバーガーとなっていた。むしろそっちをピンクカーペットで着てきたら彼女の良い意味でのチープさを皮肉るようで良かったのではないだろうか。

メットガラはドレスアップすることの意義に気付かされる。これからパーティに行くとき、ひとりハイな夜に部屋の鏡の前でキャットウォークするとき、こんな世界に想いを馳せて少し高めのヒールを履いて着飾ってみてはいかがだろうか。そしてセレブたちが身をもって教えてくれたCAMPの精神で、大袈裟に自分を表現してみたらいつもと違う景色を拝めるかもしれない。いつかアナから招待状が届くまで、ファビュラス道を爆進していこう。

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Text Daisuke Fujiwara

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