Photography Daria Kobayashi Ritch

LAガレージロックの新星ピンキー・ピンキー

カリフォルニア発のスリーピースバンド、ピンキー・ピンキー。バンドがひしめくLAで、彼女たちがオリジナルでいられるのはなぜだろう? 3人に話を訊いた。

by Alexandra Weiss; translated by Aya Takatsu
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apr 9 2018, 10:36am

Photography Daria Kobayashi Ritch

ドラムとヴォーカルを担当するアナスタシア・サンチェス、ベーシストのエヴァ・チェンバーズ、そしてギタリストのイザベル・フィールズにとって、ロックの明確な定義など存在しない。しかしLAを拠点とする3人組ピンキー・ピンキーの激しいサウンドとDIY精神は、それをほぼ集約したものだと言えるだろう。20歳のサンチェスとともに、高校生だった18歳のチェンバーズとフィールズが始めたこのバンド。彼らが12年生を修了するより前に、そのトレードマークでもあるガレージロックとガールズバンドを融合させたサウンドを磨き上げていったのである。その後自らのバンド名を冠したデビューEPをリリースし、次なるEP『Hot Tears』のリリースに向けてギアを上げた。そのタイトルトラックを下で聴くことができるが、それはサンチェスが言うところの「そばに誰かいるにもかかわらず、引きこもっているような感覚」についてのドリーミーで内気なアンセムなのだ。

重いリフのカットインや反響するヴォーカルからなるこのトラックこそ、ピンキー・ピンキーの成長を如実に示すものだ。「Spiders」や「Ram Jam」といった曲の取り散らかった純粋さも魅力的だが、「Hot Tears」はザ・チャイムズ、ジー・ヘッドコーティーズのような60年代、70年代のガレージガールズバンドのレコードを新鮮にしたような響きを持っている。だがこの新作EPは時代の逆行ではない。なぜならピンキー・ピンキーは単なるガールズバンドではなく、しかもどんなルールにも縛られない演奏をするからだ。

「女の子たちが音楽をつくり、しかもそれが“ガールズロック”なんてレッテルを貼られなかったら、もっとクールなのに」とサンチェスは言う。「私たちはただの音楽を作る人なんだから。最終的に、自分のやりたいことをやって、『私はこういうことをしてる女の子』って感じることなく自分好みの音楽をつくることができたら、もっとみんなを力づけることができると思う」

オーセンティックであることやLAという場所でミュージシャンとして活動することをバンドが語るのを読みながら、「Hot Tears」に耳を傾けてほしい。

——2月に発売になったEP『Hot Tears』について教えてください。
イザベル:これは前のEPとはかなり違うの。私たちのサウンドがすごく成熟したから。バンドとしては同じだけど、違うヴァイブスを違うやり方で演奏してるって感じがする。

——その新しいサウンドをどう形容しますか?
エヴァ:懐かしのロックンロールね。

——2017年のデビューEPとはどう違うのですか?
アナスタシア:前のEPはちょっと荒削りで60年代のガレージサウンドって感じ。あれを書いたときはみんな16歳とか17歳で、バンドとしての自分たちを懸命に模索してた。だからそれをひとつのものに仕上げるのにがんばり過ぎちゃったんだと思う。それである点でみんな似たような音になったのね。このEPではもっと楽しめたし、一緒にいい仕事ができた。

イザベル:私たちはロックバンドだけど、このジャンルには多種多彩なアプローチがある。だから決してひとつの場所に留まりたいと思わない。いつでも新しいことに挑戦できるようにしたい。このEPでは、それを本当に聴くことができる。まだ荒削りだけど、それはたった3人で楽器を演奏しているから。でも今回はすごくクリアになって、もっと成長したの。

——それぞれどのように音楽の道に入ったのですか? バンドを組みたいとずっと思っていましたか?
アナスタシア:小さいころ、パパがギターとドラムをほとんど無理やり習わせたの。文字どおりドラムスティックを私の手にガムテープで縛りつけて、どうやってビートを刻むか教えて。でもそれってなんだか退屈だって思った。そのうち私はクラシックに夢中になったんだけど、最後にはイライラするようになっちゃって。だから元の場所に立ち返って、ドラムを独学で学んだの。ドラムセットがあればどこでだって叩いてた。

エヴァ:LAに引っ越したとき、きょうだいと一緒にバンドを始めたの。キーボード担当だった。そこから、そのほかの楽器もぜんぶ独学で弾くようになった。

イザベル:学校のオーケストラでヴァイオリンを弾いていて、それから12歳でギターをするようになった。このバカみたいなInstagramの写真は8年生のときのもの。「バンドをしたい!」って感じ。で、エヴァがそれに答えてくれて。そのあと、一緒に演奏するようになったの。

Photography Daria Kobayashi Ritch

——ピンキー・ピンキーという名前はどこからきたのですか?
イザベル:ピンキー・ピンキーはtoo much rock for one hand[訳注:ロックバンドなどがする手のジェスチャー]という意味なんだっていう説明が気に入っているの。だって両方の小指(pinky)を上げて、手をくっつけるでしょう。

エヴァ:でもこの名前は、小さな女の子をトイレで襲うという南アフリカの伝説のモンスターからとったの。

アナスタシア:本当はバンドの名前を決めてからその伝説を詳しく読んだから、「えー!」って思ったんだけどね。

エヴァ:それが南アフリカで実際に恐れられているものだなんて気づかなくて。学校に通う女の子たちがお互いを怖がらせるためにでっち上げた怪談みたいなものだと思ってたから。

——作曲はどういうふうに行うのですか? 常にほかの2人と仕事をするのは大変ですか?
エヴァ:私たちって急いだりしないから。1年かけて作った曲もあるくらい。何か曲を作って、それが気に入らなかったら一度はお蔵入りにするけど、あとで掘り返すこともある。

——これまでに読んだほとんどすべてのインタビューで、書き手はあなたたちのことをフェミニストと呼んでいました。自分たちを“フェミニストロックバンド”だと思いますか? それとも、あなたたちが女性というだけで、固定観念にとらわれてしまっているのでしょうか。
イザベル:ガールズバンドに“フェミニストロック”とレッテルを貼るのは簡単なことだから。もちろん私たちは女の子で、女性の味方だけど、ピンキー・ピンキーはそのためにあるわけじゃない。ただ単に、音楽を作るのが心から好きな3人組ってだけ。

アナスタシア:それにメンバーが女性だからというだけですぐさまフェミニストだと定義するのは、まったくフェミニスト的じゃないと思う。

エヴァ:その通り。私たちが全員女の子だから、フェミニストっぽいカテゴリに入れなきゃいけないって感じるという事実。それが多くのことを物語ってる。

——そしてもうひとつ、あなたたちの音楽が“オーセンティック”と形容されるのをよく目にしました。それはなぜだと思いますか?
アナスタシア:シューゲイザーじゃないし、今世に出ているほかのLA出身バンドと同じようにしようとしているから。コピーはやらないで、自分たちのやり方を発展させようと思っているし。ほとんどの人は成功の秘訣は「ああこのバンドはすごくうまくやってるな、こいつらのやっていることをしてみよう。ちょっとだけ変化を加えて」ってやることだと思ってる。でも私たちにとって、それは「この音楽変わってる。ちょっとやってみよう」ってことなの。

イザベル:私たちはただ、自分たちが好きな音楽を書いている。みんながそれをいいと思うかどうかなんて気にしない。

エヴァ:それに、私たちはすごく若いし、いろいろなものを通ってきたから、ありとあらゆるところからインスピレーションを受ける。だから音が私たち自身にとってオーセンティックなものになるの。みんなもそれを感じることができると思う。

——ですがLAに住んでいると、オリジナルでいるのは大変ではありませんか? たくさんのバンドが活動しているのですから。
エヴァ:ほかのLAバンドと自分たちを比べたりはしない。業界にいる人の多くはお互いにすごく親しい友人で、一緒にライブをしたりするというのも知ってる。でも私たちはそういうものにあまり関わっていない。自らの意思で、というのかな。自分たちの音楽に夢中だから、そうしようという気にならない。

イザベル:これは単に私たちが好きな音楽ってだけで、シーンとかそういうものにフィットするかは問題じゃない。私たちそのものなの。自分たちがやっていることだけでじゅうぶん満足できるレベルに到達したから、ほかの場所に適応する必要がなくなったのね。

This article originally appeared on i-D US.