『13の理由』:トミー・ドーフマン インタビュー

Netflixの人気ドラマ『13の理由』でのライアン・シェイヴァー役として知られるトミー・ドーフマン。無名俳優からクィアの代弁者となった彼に話を聞いた。

by André-Naquian Wheeler
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15 August 2017, 7:01am

ある雨の日、ブルックリンのブッシュウィックにあるアパートで、トミー・ドーフマン(Tommy Dorfman)はわたしを出迎えてくれた。『13の理由』の配信が始まってからフォロワー数が8万人にまで急増した彼のInstagramには、ジェンダー概念を超えたジャンプスーツや、鮮やかなピンクのサングラスなど、実にクィアな格好をしたドーフマンの画像が並んでいる。そのイメージから、わたしはもっと派手な格好で出迎えてくれるものと勝手に想像していたが、そこに立つ彼は白いタンクトップに黒のカーペンターパンツというシンプルないでたちだった。愛犬のピットブルをかわいがりながらソファに足を組んで座る彼は、外に広がる灰色の空に鬱屈としているように見えた。

「外に出て駆け回りたいね」と、ドーフマンは愛犬の鼻先にキスをして言った。

ドーフマンは『13の理由』が社会現象ともいえるほどのヒットを飛ばしている現状に関し、実に落ち着いたスタンスを貫いている。自殺を美化していると批判する声が鳴り止まない一方で、ファンたちは自殺に関する率直な議論を巻き起こした『13の理由』を称賛している。同名のヤングアダルト小説を基にドラマ化されたこのドラマで、ドーフマンはオープンリーゲイのライアン・シェイヴァー役を演じている。自信に溢れ、そして恐ろしいほどにはっきりとした意思を持って生きているライアンは、ハンナ・ベイカーが「自殺へとわたしを駆り立てた」とするリバティ・ハイ高校同窓生10人のうちのひとりだ。レイプや、"不適切"画像の拡散など、ハンナを自殺へと追い込んだ出来事のなかで、ライアンの愚行は比較的軽度のものだったに違いない(ネタバレ注意:ライアンは、ハンナが公開の意志なく書いていた詩を盗み、自作のジンでそれを発表する)が、しかしほかの生徒たちと同様に、自らの愚行が明るみに出ないよう工作を図る。

ライアンの特徴は、なんといってもステレオタイプなゲイ像を完全に脱却しているところにある。ドラマ前半のあるシーンでライアンは、ハンナに自らを「詩を書く痩せっぽちのオカマ」と説明する。その言葉にショックを受け戸惑うハンナは、「そんな言葉使っちゃダメでしょ」と言うが、これに対しライアンは「君はダメ。僕はオカマだからいいの」と切り返す。これはなんとも力強いシーンだ。なぜなら、セクシュアリティを隠す苦悩が描かれ、とかく被害者として描かれる傾向にある10代ゲイのイメージにあって、ライアンは痛快なまでにゲイである自分を受け入れて生きているからだ。

「あのセリフは脚本になかったんだ」と、ドーフマンははげかけたブロンズ色のネイルをちらっとみて言う。「あのエピソードの監督を務めたグレッグ・アラキと話しているときに思いついて、『オカマって言ってもいいかな?』って訊いたんだ。ひとがライアンを陰でどう呼んでいるかを考えたら、ここは"オカマ"と言うべきだろうと。誰も"ゲイ友"なんて呼ばないはず」

世のゲイ・ティーンたちの気持ちを代弁するかのように、ドーフマンはその経緯を、自らの経験とともに語ってくれた。「ゲイとして、"オカマ"という言葉を使えるのはゲイの人間だけだと感じてる。その言葉をゲイが使っていくことによって、社会でそれが発せられても僕たちゲイは変に傷つかなくても良くなる。それでも傷つくことは多々あるけど」

ドーフマンは、実に雄弁に議論を繰り広げることができる若者だ(彼はインタビュー中、リベラル派の抑圧や、トランプが打ち崩そうとしているゲイの人権についても熱弁した)。彼は、現代社会におけるクィア世界で自らがどんな立場で発言をしていきたいかを明確に意識している。

ジョージア州アトランタに育ったドーフマン。重要な問題に関して明確な意見を持ち、それを臆することなく明言することで、社会にポジティブなクィア像を築くことのできるクィア俳優になりたいと、常に夢見てきたという。「クィアだと配役の幅が狭まるからと、セクシュアリティを隠す——そんな俳優になることにはまったく興味がなかった」と、ドーフマンは気持ち悪いものでも見たかのように顔をくしゃくしゃにして言った。「そんな俳優になっていたら生きていけなかったと思う」

しかし、ここまで急速に"クィアの代弁者"になるとは、ドーフマン本人も想像していなかったという。彼がライアン役に起用されたのは、彼がフォーダム大学の演劇クラスを卒業してからわずか1年後のことだった。ルームメイトからライアン役のオーディションの情報を教えてもらった(ルームメイトもオーディションを受けたそうだ)のがきっかけだったという。「1時間もののドラマ、特に人物の内面が描かれるドラマがずっと好きだった」と、ドーフマンは笑顔で話す。「この番組は完璧。絶対に関わりたいと思った」。そしてそれは実現した。

性的な内容のメッセージのやりとりやジェンダーの流動性など、ジェネレーションZ世代の若者たちが生き抜く現実を多方面から克明に描いたドラマに出演するとあって、ドーフマンは"10代であるということはどういうことか"を改めて追求した。10代のいとこに話を聞くと、いまと数年前の高校では、大きな違いがあることに気づかされた。プロムでは"ホームカミング・キング"や"ホームカミング・クイーン"といって学年中もっとも人気の男女がひとりずつ選ばれるのが通例だが、その称号はかつてのようにアメフト選手やチアリーダーばかりに与えられてはいないそうなのだ。InstagramやTwitterでの活躍が特に顕著だった生徒たちが選ばれる——それが現代だとドーフマンは知ることとなった。「"フィンスタ(Finsta)"っていうのがあるらしいんだ」と、ドーフマンは、現代の思春期が持つ新しいニュアンスに、笑いながら言った。「今の10代はみんなこのフィンスタ(親しい友達にだけ、アンフィルターの自分を公開するサブアカウント)を持っているらしいよ」

残念なことに、高校という空間には今も昔も変わらず過酷な現実がある。いじめ、無視、ハラスメント、鬱など。自身が体験した、もしくは体験した友人が身近にいるなど、ドーフマンにとってはいずれも馴染みのあるものだ。「高校の不快な部分を思い出したよ」と、彼は言った。「すべてが生死に関わるかのような大きな問題としか考えられなかった。あの頃の僕に起こったさまざまなことについて思い返してみたけど、25歳の今なら、たぶんなんとも思わない」

ドーフマンが高校時代に不安と格闘し、それを克服したという事実は、社会にとって大きな意味を持つこととなった。彼はいま、世界中の10代たちに格好の前例を作り、それが彼らの助けになっているからだ。2017年3月にNetflixで『13の理由』配信が始まったとき、出演している若手の無名俳優たちは一挙に脚光を浴びることとなった。「僕たちは世代の代弁者になった」とドーフマンはいう。「若いクィアの子たちが僕に便りをくれたりするんだ。ブラジルやロシアといった、クィアがそれほど受け入れられていないような国からもね。それはとても感慨深いこと」。そこまで話すと、ドーフマンはしばし口をつぐんだ。そして、突如として自意識にかられたようで、「こんなことをしゃべるなんて変なかんじ!」と恥ずかしがった。

しかし、そういったことを話すのもじきに慣れるだろう。慣れなければならないのだ。ドーフマンの生活はむこう1年間、多忙を極める。写真撮影で現場から現場へと飛び回る合間に、メンズ・ファッション・ウィークに参加するためヨーロッパへと飛び、数週間後には『13の理由:シーズン2』の撮影のため、北カリフォルニア入りしなければならない。『13の理由:シーズン2』といえば、誰もが、「あのドラマはどう物語が続いていくのか?」と考えているだろう。ハンナを自殺に追い込んだ13の理由はシーズン1ですべて明かされた。ドーフマンは、シーズン2の詳細について何も語ってはくれなかった。わたしたちはシーズン2の公開を待つしかなさそうだ。

ドーフマンは新たなプロジェクトとの出会いも求めている。彼のカレンダーにはオーディションの予定がたくさん書き込まれている。わたしは、「"あのゲイ俳優"というイメージが定着してしまうことに心配はないか」と彼に訊いてみた。すると、ドーフマンは、あのシーンでのライアンのように素早くこう切り返してみせた。「次のオーディションはストレート役のものだよ」

それこそが魅力なのだ。ドーフマンは自身を「ライアンとはまったく異なる人間だ」と言うが、ふたりには共通点がある。それは、ドーフマンもライアンも自分自身を力強く生きているという点だ。「心配なんかしない」と、ドーフマンはゲイとストレートの役を均等に演じていくことについて話す。「心配なのはそこじゃない。ゲイだろうがストレートだろうが、よく書けているかどうかがもっとも重要なんだから。これから僕が演じていく役がすべてゲイでも結構! それがステレオタイプじゃなく、血の通った生身の人間であればね!」そう言ったドーフマンは肩をすくめ、また愛犬とじゃれ始めた。

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Credits


Text André-Naquian Wheeler
Photography Leeta Harding
Translation Shinsuke Kuriyama at WORDSBERG Inc.

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