PHOENIX世界最速インタビュー <後編>

3年間の沈黙を破り、ついに動き出した世界最高峰のパリジャン・バンド、PHOENIX(フェニックス)。『Ti Amo』は愛の言葉。

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09 May 2017, 10:35am

「ピカソじゃなくてミケランジェロ」と歌うリードトラックが示すようにイタリアの太陽を散りばめたようなPHOENIX待望のニューアルバム『Ti Amo』が解禁寸前。そしてツアー出発目前、ボーカルのトマ・マースとギターのクリスチャン・マッツァライが新作を語る。パリでのリハーサルの様子を独占で捉えた写真とともに。(前半からの続き)

ある壁を越えようという跳躍を感じたのは、曲や音の小さな単位に限って感じたのではありません。これまでのアルバム、例えば、『It's never been like that』(2006)『Wolfgang Amadeus Phoenix』(2009)『Bankrupt』(2013)、ここ3枚のアルバムには、あるフォーマットが出来上がってきていたように思うのです。それが、今作ではその様式を壊そうとしている意図を感じました。
Thomas(以下T) : フォーマットというなら、確かに僕らのアルバムは常に10曲という様式だけは守ってきた。不変のルールを持つことが好きで、それは僕らのアルバムを規定してきた。その内側で自由になるために、フレームが必要なこともある。例えば、交響曲などは一定のフレームの中で作られている。言うとおり、今作ではいくつかの異色の曲もある。「Lovelife」とか「Telefono」のことだよね。それらは本当にシャープなポップソングで、アルバムの中で特異な存在感を放っている。そういう意味では、このアルバムは、僕らのデビュー作の『United』(2000) に似ていると言っていいのかもしれない。『United』には、様々なタイプの曲が含まれていたからね。僕らの多様さを発見してほしいし、僕らが生み出す新しい何か、ヴェルサイユの別の側面を発見してくれたらうれしいよ。

Christian(以下C) : フォーマットを壊しているように感じている部分があるということについては、確かにそうかもしれないね。でも、難しいな。というのは僕にとっては、今作も同じタイプのアルバムのように感じるし、いつも同じ方向に向かっているつもりでいる。もちろん新しいアルバムであることに変わりはない。だけど、同じ方向に進んだ通過点なのかな。もちろん、新しい場所を求めてのことだよ。君も見てきた通り、これまでもずっとそうやって取り組んできた。今作には、3年もの年月を費やしたけど、僕らは未来に向けて、なんの制限もなく探求してきた。このアルバムは、そんな音楽漬けの日々の記憶を1時間に凝縮したようなもの。それがもともと僕らが用意していたアイデアだったんだ。

4人がいつも音楽漬けなのは昔から変わらずですね。ただ、この数年はメンバー個々の生活が変わって来たことも感じています。昔は、いつスタジオに行っても、朝から4人揃って作業をしていたし、みんなが一緒に住んでいた時期もありましたよね? 今はもちろんそれぞれ家庭があって、トマはNYとパリを往復して、時にはSkypeをつなぎっぱなしで中継しながら作業をしていたり。スタジオの扉を開けてみても、ある日はデックだけだったり、ある日はブランコとクリスチャンの兄弟だけだったりと、スタジオの雰囲気も変わったように思います。
T : その通りなんだけど、クリエーションのプロセスは昔から変わっていないはずだよ。まずは4人でテーブルを囲む、それから全てがスタートするんだ。それぞれが課題を持ち帰り、それからそれぞれが作ったものを持ち寄る、それから休んで、再び始める。こんな風に僕らはこのアルバムを作った。クリエーションと休むことを繰り返した。実は以前は――例えば『Alphabetical』(2004) のときは、全く休まないで作ったんだけど、それはとてもハードだったんだ。自分たちの作ってきたものを振り返る時間さえなかったんだから。あの時期は常に内側に閉じこもっていたような気がする。僕らがしていることと、世界がどう関連しているのかを感じることがなかったんだ。それと違って今作には、明らかに外部から、社会からの影響があると思う。だからと言って、政治的なメッセージを持っているという意味ではないよ。それは無意識のプロセスの中での話だ。

C : この制作のスタイルは『Bankrupt』(2013) のときからすでに同じだった。当時もトマは2週間ごとにパリとNYを移動していたよね。トマが去ったあとは、他の3人で残ってね。確かに昔は僕らはいつも4人一緒に曲を作っていたわけだから、喧嘩だってよくした。いや、今でもたまに言い争うけどね。それはクリエーションのためにとても大切なことなんだ。

制作の時にみんなで揃ってひとつのテーブルを囲んで楽器をならしたり、ときには言い争いをしている姿を見ていると、Phoenixは、まるで今も若いのバンドのような印象を受けることがあるんです。
T : (笑)、技術的には違うと願いたいけど。

もちろん、音楽への好奇心、情熱が全然変わっていないという意味です。
T:僕らはいつも初めてスタートラインに立った気持で始めている。それから、僕らは常に若くて新しい音楽を聴いているよ。今はサイクルも早いし、本当に良い新しい音楽が溢れていて、とてもエキサイティングだよね。かつて、本が印刷され始めた時代、人は出版された全ての本を読むことができた。その後、たくさんの本が印刷されることになった結果、読む本を選択する必要が生まれた。同じケースが音楽についても言えると思う。今は何を聴くのか選択する必要があって、それは素晴らしいことだと思う。選択はパーソナリティを形成する行為だからね。すでに多くの良い曲がたくさんひしめきあっているのに、そんな中でもまだまだ新しいオリジナリティやエキセントリックさを出す空間が残されていることも教えられる。たとえばアメリカではThe Lemon Twigsが僕らのツアーをサポートしてくれることになっているよ。

たとえば今も若いアーティストからも影響を受けることがありますか?
T : もちろん。過去にばかりしがみついているのは悲しいね。名前を挙げて誰にどのように影響されたかを説明するのは難しいけど、例えば作曲については、16世紀のイタリアの作曲家モンテヴェルディに遡って、今の新しいバンドまで全てからの影響がある。あらゆるミックスなんだ。作詞については、僕には何人かのアイドルがいて、ザ・スミス、ザ・クラッシュ、プリンス、それからセルジュ・ゲンスブールの歌詞が好きなんだけど、彼らのスタイルをコピーしようとは考えなかった。例えばプリンスの『When 2 R in Love』という曲に「Come Bath with Me(おいで、一緒に入浴しよう)」と歌詞があって、これはプリンスにしか書けないし歌えない詞で、その一行がずっと僕の中に引っかかっていた。自分にしか表せない、自分の中の過剰な側面を発見するべきだと気付かされたんだ。「Fior Di Latte」という曲があって、僕は歌詞を歌う代わりにマイクロフォンにキスをしているんだ。このあとリハーサルで歌うから注意してみてみて。

いよいよツアーが始まりますが、リハーサルを見ていると、今回もステージの仕掛け、デザインが凝っているという片鱗が伺えます。
T:もちろん。僕らにはレコーディングされたアルバムと、ステージでのライブは表裏一体みたいなもの。これまで以上に明確なビジョンがあって、はやくそれを披露するのを楽しみにしているよ。

C:レコーディングの最中から、ステージ・デザインの準備を始めていたからね。もう1年も前からだよ。アルバムもステージもそれぞれでオリジナルなものを用意しているよ。もちろん5月にはアメリカに見に来るよね!?

Phoenix New Album "Ti Amo" 2017.6.9 On Sale.

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Credits


Text and Photography Shoichi Kajino