KANDYTOWN WEARS ALL CLOTHING MODEL'S OWN.

KANDYTOWNが共有するクールネスの美学

2016 年にアルバム『KANDYTOWN』をリリースした話題のヒップホップ・クルー、KANDYTOWN。その魅力は、個々が放つ揺るがないクールネスに宿る。等身大の美学を持つ、それぞれのメンバーに話を訊いた。

by Shiho Watanabe
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07 July 2017, 7:10am

KANDYTOWN WEARS ALL CLOTHING MODEL'S OWN.

「ヒップホップはクールである」ということを改めて実感させてくれたのが、東京の世田谷エリアを中心にラッパー、DJ、トラックメイカーらの総勢14名で構成されたKANDYTOWNだ。幼稚園の頃から家族ぐるみで仲が良かったり、小学校時代のサッカー仲間だったり、共通の仲間とヒップホップを通して行動を共にするようになり集ったメンバーたち。彼らは膨大な時間を共に過ごしながらも、お互いをリスペクトしつつ、同じ距離感と美学を共有している。「こうやって25歳になっても、小さい頃からずっと一緒にいる仲間と音楽をやりながら遊んで、それが仕事になっているんです」(IO)。彼らは単なるラップ・クルーではなく、その個性や特性を活かしたセルフ・プロデュース集団でもある。KANDYTOWNのなかにはIOらによる映像制作チーム<TAXi FILMS>も存在しており、例えばMCのDONYJOINTやYOUNG JUJUが、チーム内のトラックメイカーであるNeetzやMIKIのビートを使ってソロで楽曲をリリースすると、TAXi FILMSの面々がその楽曲のMVを撮影するなど、彼らの表現は彼ら自身の手で映像にまで派生していく。ラッパーたちが大勢集ったグループは珍しくないが、彼らのように個々の得意な部分を活かしながらプロデュースすることが可能なクルーは、世界的にもかなり珍しい。そうした彼らの作品群からは、東京の真ん中であらゆる刺激に囲まれ育ってきた彼ら自身のリアルライフが投影された、肩の力が抜けた独特の都会感が匂い立つ。

2014年にネット上でミックステープ『KOLD TAPE』を発表し、2015年には500枚限定のストリート・アルバム『BLAKK MOTEL』をリリース。地元を中心に活動を続けていたKANDYTOWNは、徐々に早耳なヒップホップ・リスナーの間で噂になり始める。IOやRyohuらのソロ作品もリリースも相次いだ後の2016年11月、クルー・KANDYTOWNとしてメジャーデビューを果たした。同年にはクルー全員での全国ツアーも経験したKANDYTOWN。これまでにメンバーの一部がソロMCとしてステージに立つことはあれど、14人が揃っていくつものステージをこなしたのは初めての体験だった。それは「会場各地にお客さんが来てくれたことももちろんだけど、KANDYTOWNとしての内側の喜びみたいなものがありましたね」(DONNY JOINT)。「ツアー中は、それぞれの背中がいつもよりデカく見えた。俺たち、絆はもともと深いですけど、ラッパーとしてみんなでステージに立つってことにすごく喜びを感じました」(Ryohu)と語るように、デビュー間もない彼らがチームとしての一体感を享受し、それぞれの絆を感じる瞬間を受け止めるステップアップの場としても重要な機能を果たしたようだ。

雑誌の表紙を飾ったり、ファッション・ブランドとのコラボも絶えなかったりと、現ストリート・カルチャーを牽引している彼らは、着実に次世代の若者をも刺激しつつある。「これまではまったく深く考えてなかったですけど、10代の頃に自分が聴いていたラップって、すごく影響力があった。それくらい俺たちも、若いリスナーに影響を与えちゃうことがあるのかなと思うと、責任を持ってちゃんとしないと、って考えることはありますね」(Neetz)。ただ、その一方で「2017年はどうしていくべきかをKANDYTOWN全体で考えなきゃいけないんですけど、残念ながらやっぱり俺たちは、こんな感じなので(笑)」と、Ryohuはマイペースなクルーを俯瞰して話す。

今後は、これまで以上に各メンバーのソロ活動も勢いを増すようだ。クルーとしてメジャーデビューを果たしツアーを終えた今、一体どんな心境でソロ活動に挑むことになるのか。今もまさにレコーディングに励んでいるというMUDは、その心境を代弁してくれた。「これまで無自覚だったけど、デビューした今は、とにかく周りの人から見られてるって状況。だったら、自分たちのほうから周りに見られに行くしかないでしょ、っていう気持ちです。そのためには曲を作るしかない」。IOやDONY JOINT、RyuhuやNeetzらも、着々とソロ作を準備中だ。

「KANDYTOWNのなかでの俺と、個人での俺との違いが出てきていると思います」とDONY JOINTが言うように、彼らの音楽の嗜好は多岐にわたる。MUDやGottzはアメリカの新譜のヒップホップ情報にも精通しており、RyohuはOKAMOTO'SやSANABAGUN.ら同世代バンドとのセッションも盛んだ。その一方で、DJ MinnesotahやDJ MASATOらは古いソウルやディスコの知識にも長けている。2016年は音楽的なコラボに加えて俳優業にも挑んだRyohuは、ソロでの活動を「永遠のチャレンジ」と定義づけ、DONY JOINTは「よりフレッシュになれるとき」と語る。

各々が自分の色を出しながら自由にソロ活動をしていても、ビートのプロデュースや、映像表現の場などで常につながっているのがKANDYTOWNである。そんな自分たちのスタンスを、IOは以下のように説明する。「KANDYTOWNっていうのはただの名前なんです。あろうとなかろうと、俺らが積み重ねてきた時間や関係性は変わらないし、これからの音楽も変わらない。俺たちがカッコいいと思うことをそのままやるだけなんで」。それぞれが多様な嗜好を持ちつつも、共通する日常的なクールネスを失うことがないのは、何よりもこうしたルーツが明確だからだろう。「今、特に欲しいものはコレといってないんです。ただ、将来、10年後も20年後も、ブレずに仲間たちと熱く生きてたいなって感じです」(Ryohu)。飽くなき向上心、錆びないクールネス、そして媚びない美学を携えたKANDYTOWNのメンバー。これからも彼らの創り出す世界観は熱く、そしてクールに我々を揺さぶり続けるに違いない。

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Credits


PHOTOGRAPHY TAKAO IWASAWA 
TEXT SHIHO WATANABE