ローカルが生み出すラグジュアリー:フランチェスコ・ラガッツィ interview

8 Moncler Palm Angelsを手がけ、House of Geniusを東京に送り込んだMoncler Geniusに参加するクリエイターの一人である、フランチェスコ・ラガッツィ。世界中から注目を浴びているプロジェクトのお披露目直前に、彼が感じていたこととは?

by Kaeko Shabana; photos by Houmi Sakata
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19 October 2018, 7:00am

モンクレールのアートディレクター、そしてPalm Angelsのデザイナーと、ふたつの顔をもつフランチェスコ・ラガッツィ。House of Genius 東京のローンチのために来日した彼に、Moncler Geniusのこと、自身のブランドのことついて話しを訊いた。

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8 MONCLER PALM ANGELS

House of Genius 東京のレセプションパーティが開催される数時間前に、インタビューは行われた。8 Moncler Palm Angelsのスローガンのひとつ、“MAKE IT RAIN”の魔法にかかったかのように、その日は雨が降ったり止んだりしていた。ポップアップストア内でフランチェスコに話しを訊くことになっていたのだが、ずっとヴェールに包まれていたプロジェクトをひと足先に見ることができるということで、期待に胸が弾む。

クロムハーツのキャップに、映画『2001年宇宙の旅』のスチール写真がプリントされたUNDERCOVERのコートを身に纏い登場したフランチェスコは、ビッグプロジェクトのお披露目直前とは思えないほどとても穏やかだ。「お元気ですか?」と尋ねると、「時差ぼけとうまく付き合えてなくて」と言い、「東京には3日間しかいなくて、明日もう移動なんだ」と続けるフランチェスコ。東京の後に、香港、マカオ、北京、上海の“アジアツアー”に出かけるという。その話しを聞いて今回彼が非売品として作製した8 Moncler Palm AngelsのTシャツに、“TOUR”とプリントされていた意味がようやく分かった。10月5日(金)のローンチに向けて、東京のポップアップストアだけではなく、House of Genius NY、LAとロンドンのモンクレールのブティックで、各都市の10月4日(木)現地時間でレセプションパーティを開催していた。

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Francesco Ragazzi

プロジェクトが完成する直前の心境について、「8 Moncler Palm Angelsのローンチと同じタイミングで、ポップアップストアを東京にオープンできるのでとてもエキサイティング。モンクレールでの経験としても、自分のブランドにとっても、とても大きなことだからね。感謝の気持ちでいっぱいだよ」と打ち明ける。“ONE HOUSE, DIFFERENT VOICES”のMoncler Geniusのコンセプトを体現したフィジカルストアを東京に実現させた立役者の一人であるフランチェスコは、モンクレールのダウンジャケットというひとつのアイテムを、8つのコレクションで様々に解釈・表現し、マーケットと消費者に新しいエネルギーを生み出すことがこのプロジェクトの最大の面白さだと話す。

8 Moncler Palm Angelsで、彼はモンクレールのダウンジャケットを本質までそぎ落とし、Palm Angelsのストリートやエッジな要素をコレクションに落とし込んだ。そしてスケートボードやスイコックのコラボサンダルなどのアクセサリーを作り、ロゴやスローガンで“ギフトショップ”で売られているウィルスのような商品を作った。「2月に行われたミラノでのプレゼンテーションは、美術館やギャラリーのような演出だった。それが8 Moncler Palm Angelsの“ウイルス的な商品”とリンクして、美術館にある“ギフトショップ”をポップアップストアでも作ろうと思った」と自身のコンセプトについて説明する。

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8 MONCLER PALM ANGELS

フランチェスコはアメリカでアートを学んだのち写真家を志していたが、インターンとしてモンクレールで働き始めることになる。そしてファッションで頭角を現し、モンクレールでアートディレクターに就任後、2014年にストリートブランドPalm AngelsをLAで立ち上げる。モンクレールのインサイダーとして、Palm Angelsのアウトサイダーとして、両方の視点でこのプロジェクトに携わったことについて「モンクレールとパームを一緒にさせるなんてクレイジーだったけど、気づけばうまく並行しはじめ、お互いの相性もあってきてたんだ」と振り返る。

Palm Angelsはハイファッションにトラックスーツをカムバックさせ、Pharrell Williams、A$AP Rocky、Kanye Westをはじめ数多くのミュージシャン、アーティスト、セレブリティが彼のラグジュアリーなトラックスーツを愛用している。8 Moncler Palm Angelsのコレクションでも、ナイロンやジャージ素材でトラックパンツを発表した。「トラックスーツやトラックパンツは僕のブランドのコアだから、今後もMoncler Geniusで継続&進化させていくつもり」。次はモンクレールのダウン素材でトラックスーツを作製したいと語り、トラックスーツへの愛着と熱意をあらわにする。「消費者のライフスタイルが変化してきているから、人びとはみんなもっと快適な服装を求めていると思う。ハイファッションでストリートウェアが注目され続けているのはそれが背景にある。堅苦しいスーツやネクタイにトレンドが戻ることはないんじゃないかな」

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Francesco Ragazzi at House of Genius Tokyo

最後に東京のストリートスタイルについてどう思うか尋ねると、「とても刺激を受けているよ。ボリュームとかレイヤードとか、みんな新しいことを恐れることなく取り入れている。たとえシンプルなスタイルでもどこか新しさがある」。フランチェスコは続ける。「いろんな意味で世界は著しく変わって、何もかもが‘グローバル’だけど、東京でしか見つけることができないもの、ミラノでしかみつけられないこととか、ローカルであることが今のラグジュアリーなんだと思う」

Collection photographs Courtesy of Moncler