SHIZUKA WEARS DRESS, TOP AND SKIRT STELLA MCCARTNEY. EARRINGS CHARLOTTE CHESNAIS.

石橋静河interview:女性の気持ちを代弁する役割としての“女優”

デビューからまだ数年とは思えないほど話題の映画に次々出演する女優・石橋静河。落ち着いた声と堂々とした佇まいはとても20代前半とは思えない。その不思議な存在感の秘密はどこにあるのか。彼女のこれまでの歩みと、この先に目指すもの。

by RIE TSUKINAGA; photos by Monika Mogi
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23 October 2018, 8:14am

SHIZUKA WEARS DRESS, TOP AND SKIRT STELLA MCCARTNEY. EARRINGS CHARLOTTE CHESNAIS.

この記事は『i-D Japan No.6』から転載しました。

「本当に濃密な3年でした」。意志の強そうなまなざし。凛とした佇まい。昨年、最果タヒの詩集を映画化した『夜空はいつでも最高密度の青色だ』へ主演し数多くの新人賞を受賞した石橋静河は、まだ24歳とは思えない貫禄を漂わせる。今年も『きみの鳥はうたえる』をはじめ話題作への出演が続く彼女だが、俳優業を始めてから、今年の秋でようやく丸3年。

「撮影後は毎回反省してます。共演者の方たちを見てると、なんで自分はこんなこともできないんだろうとか、私はこれまでなんてなまけていたんだろうとか思えてしまって。毎回反省して、そのたびに学んでいくしかないんでしょうね」

石橋静河 i-D Japan フィメールゲイズ
SHIZUKA WEARS DRESS AND ACCESSORIES DIOR.

もともと俳優になるつもりはまったくなかったという彼女。4歳の頃からクラシックバレエを習いはじめ、15歳からアメリカとカナダにバレエ留学をした際に、コンテンポラリーダンスの魅力に目覚める。だが4年間の留学から帰った後は、ダンスを続けながらも、はっきりとした目標が見つからず悶々とする日々が続く。もっとおもしろいことに出合いたいという焦燥感。そんななか同時代の日本映画をたくさん見るようになり、やがて現在の事務所と出合い、俳優業をスタート。舞台での仕事のあといくつかの映画作品に出演するが、転機となったのはやはり映画『夜空はいつでも最高密度の青色だ』への出演だ。「そこでやっとスタートしたというか、自分が生まれた、という感覚になりました」

石橋静河 i-D Japan フィメールゲイズ
DRESS, TOP AND SKIRT STELLA MCCARTNEY. EARRINGS CHARLOTTE CHESNAIS.

ヒロイン2作目となる『きみの鳥はうたえる』では、若手俳優の柄本佑、染谷将太と共演。短編2作品と、BS時代劇チャンネルで放送された『密使と番人』に続き、これが4度目の三宅唱監督作品への出演となる。

「最初の短編映画に出演したときは、まだお芝居よりも踊りをやっている感覚が強かった時期。それを三宅監督に話したらおもしろがってくれたんです。「じゃあ踊りも取り入れて作品をつくろうよ」って。そういう経験があったからこそ、『きみの鳥はうたえる』の現場にも安心して飛び込めたのかな。函館でロケした3週間はとても豊かな時間でした。こんなに楽しい現場がキャリアの最初の方に来てしまって、これからどうしたらいいんだろうと思うくらい」

石橋静河 i-D Japan フィメールゲイズ
DRESS AND ACCESSORIES DIOR.
石橋静河 i-D Japan フィメールゲイズ

この作品で彼女が演じるのは、まるで風のようにふたりの男の間を流れていく、佐知子という女性。生々しくも爽やかな恋愛模様を演じるうえでの苦労を尋ねると、大好きだというジョニ・ミッチェルの曲について教えてくれた。

「脚本を読みながら、なぜか「A Case of You」をずっと聴いていたんです。アルバム『BLUE』に入っていて、あなたは聖なるワイン、私は1ケース分だってあなたを飲むことができる、という情熱的な歌。このアルバムをつくっているとき、ジョニ・ミッチェルはたくさんの熱い恋愛をしていたらしいんです。こんな大恋愛をしたけど、またこの人と出会ってしまった、私はどんどん苦しくなる、ということをずっと歌っている。それを聴きながら、きっと佐知子もこういう人なんだ、とふっと思えてきて。ただ目の前にいる人が好きで、その人たちと真剣に向き合っていった結果が佐知子なんだって、すごく腑に落ちたんです。驚いたのは、撮影のために函館へ行ったとき。舞台になるアパートの部屋を見に行ったら、なんとセットのCDラックの一番上に『BLUE』があったんです。まったくの偶然なんですが、運命的なものを感じました」

石橋静河 i-D Japan フィメールゲイズ

撮影前には、ギターを弾きながら歌ってもいたという「A Case of You」。『PARKS パークス』でもすてきな歌声を披露していたが、今後歌の仕事もしていくのだろうかと訊いてみると、「いまはお芝居のことしか考えられないです。もっともっと経験を重ねたいので」という答えが返ってきた。

「ただ、踊りは今後も続けていきたいです。お芝居を始めた頃は、自分の体についてる踊りの癖が邪魔に思えたんですが、今は、それも自分の体の一部なんだと思うようになりました。そういえば『フランシス・ハ』のグレタ・ガーウィグも、もともとダンスをされていたせいか、体の動きがチャーミングなんですよね。でもそれは単なる体の癖ではなくて、演じる役のキャラクターにあわせて毎回動きを考えてるんだとインタビューで語っていて、感動しました。監督としても女優としても、彼女はいつか一緒に仕事をしてみたい憧れの人です」

女性監督との仕事について話を訊くと、2019年1月に公開予定の新作『二階堂家物語』でのアイダ・パナハンデ監督との出会いが印象的だったという。「アイダ監督との仕事を通して、女性であることについて強く意識しました。イランでは映画に対する検閲がとても厳しくて、肌の出し方やキスシーンの描写など、女性の描かれ方にもナイーブにならざるをえないそうです。女性が監督をするということ自体、日本よりもずっと少ないし、そういうシビアな状況下で映画をつくっているアイダ監督はやっぱりバイタリティが違う。女性から見た男性、男性から見た女性ということに、非常に敏感な視線を持っていました。監督の、こういう映画を撮りたい、こういうメッセージを伝えたいという強い意志に衝撃を受けたし、その意志に自分もとことんついていきたいと、強く思いました」

石橋静河 i-D Japan フィメールゲイズ
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最後に「女優」という言葉についてどう思うかを尋ねてみた。ふしぎなことに、「女優」という言葉には、女性俳優という意味以上に、妙に強い意味が備わっている気がする。そう言うと「その感覚はわかります」と頷いた。

「最終的には、性別という概念を超えていかないといけないと思うんです。でも、今なぜフェミニズムが注目されているかといえば、これまでずっと男性が主体になって社会が動いてきて、そのなかで抑圧されてきた女性がいたからですよね。自分の気持ちを言えない、自分のやりたいことをやれなかった人たちが、ずっと長い歴史のなかに存在してきた。そんな彼女たちの気持ちを代弁する役割ももし女優にあるのだとしたら、女優って素敵な言葉なんだろうと思います」。でも、と笑って最後にこう加えた。「やっぱりもぞもぞしちゃうんですけどね、女優という肩書は」

Credit


Editor Yuka Sone Sato
Text Rie Tsukinaga.
Photography Monika Mogi.
Styling Shino Suganuma.
Hair and Make-Up Mika Iwata.
Styling Assistance Manami Ohno.

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